本日のメディアでいっせいに取り上げられている日本政府のIAEA閣僚会議への報告書というのは、これ↓。
原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書:首相官邸ホームページ
報告書本文だけでも200ページを超えるべらぼうな長さだし、専門用語や略号がいっぱい出てきて、とても素人には読めないけれども、原子力発電所の設計上のリスクマネジメントについて「確率論的安全評価」がどうしたこうしたと散々書いた挙句、結論として、次のように述べられているのには、残念ながら、呆れてしまった。
以上のように、リスク情報の活用について我が国の取り組みは諸外国の情勢と比較して十分とは言えない状況にあった。(IV-9)
要するに、「確率論的安全評価」によって十分危険性は考えてありますよと、あれだけ散々言ってきたのに、結局、それは不十分でした、ということだ。不破さんは、先日の講義で、電力会社と日本の原子力行政が「安全神話」に浸りきってきたと批判しているけれど、まさにその実態がここに示されていると思う。
さらに、「V. 原子力災害への対応」をみると、たとえば内閣府の「東日本大震災への対応〜直近の政府発表」では、菅首相は3月11日の16時36分に「原子力緊急事態宣言」をしたことになっているが、IAEA報告書では、内閣総理大臣が「原子力緊急事態宣言を発令し、原子力災害対策本部及び同現地対策本部を設置した」には19時03分になっている。16時36分という時刻はいったい何?
また、「VI. 放射性物質の環境への放出」では、12日明け方の出来事として、福島第一原発敷地内で放射線量率の上昇が検出されたこと、そのとき1号機の格納容器圧力が「異常上昇した上で若干の圧力低下が見られた」ことが書かれている。
地震後、放射性物質の放出が顕在化したのは、3 月12 日明け方に福島第一原子力発電所敷地内のモニタリングポストMP-6 付近でのモニタリングカーによる測定で空間線量率が上昇した時のものである。この時、1 号機では格納容器圧力が異常上昇したうえで若干の圧力低下が見られたことから、格納容器からの漏えいが発生し、大気中に放出があったものと推定できる。解析では、既に燃料の溶融が始まっているとの結果となっている。(VI-1)
しかし、12日午前9時51分の記者会見では、内閣官房長官は、1号機の格納容器圧力について「高まっているおそれがある」と述べるのみで、原発敷地内で空間線量率が上昇していることも、格納容器圧力が異常上昇したあと低下したことも触れず、避難を10km以内に拡大したけれども、それはあくまで「管理された中での放出」のため、「万全を期すため」と言っていたのだ。
原発関係について申し上げます。福島第一原子力発電所に関しましては、1号機の原子炉格納容器の圧力が高まっているおそれもあることから、本日、5時44分に総理から新たに、半径10km圏内の住民に、10km圏外に避難するよう指示がありました。これまで3km圏内の皆さんに圏外への避難を指示しておりましたが、本日、午前5時44分、10km圏内の住民に避難の指示をいたしました。容器内の圧力が上昇していることから、経済産業大臣の指示により、安全に万全を期すため、先程、1号機の原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置を行いました。このため、放射性物質を含む空気の一部外部への放出が行われますが、管理された中での放出でございます。また、こうした放出に備えて3km圏内からの退出をお願いをいたしておりまして、この管理された状況での放出をということについては、10km圏外に出ていただいているというのは、まさに万全を期すためでございますので、その点にご留意をいただき、落ち着いて退避をしていただければというふうに思っております。
そして、「環境モニタリングの実施」とか「放射性物質の大気中への放出量の評価」、「周辺住民の放射線被ばくの状況」の項目はあるけれど、周辺の土壌がどれぐらい放射性物質で汚染されたのかという肝心のデータは見つからない。そこを掌握しないで、どうして原発事故の評価が出来るのだろうか? 疑問だ。
ところで、今日は久しぶりに6時ごろに新宿駅で帰りの電車に乗ったのですが、車内が朝の通勤電車並みに混んでおりました。う〜む……。ひょっとして、節電・サマータイムの導入で、みなさん、残業せずにさっさと帰宅するようになったんでしょうか?