常人にも分かる?! 「ツァラトゥストラ」

日フィルから、3月、震災で聴きに行けなかった3月定期演奏会の代わりにとチケットをいただき、10日、サントリーホールで名曲コンサートを聴いてきました。

  • ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77
  • R・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 op.30

当初は、地震当日に果敢にも演奏会を予定通りおこなったラザレフ氏が振る予定でしたが、腰の手術で静養を余儀なくされ、残念ながら来日を断念。当日のプログラムには、「東日本大震災という深刻な大災害の後に、人間の身体の脆弱さというちっぽけな理由のために……東京へ赴くことができないとは、何と残酷で皮肉な巡り合わせなのでしょうか」という、いかにもラザレフらしいメッセージが載せられていました。

ということで指揮者は高関健さんに交代。ヴァイオリンは堀米ゆず子さん。

ブラームスは、低音をたっぷりきかせて重々しくやるか、それとも乾いた、枯れた感じでいくか、演奏のスタイルも好みも分かれるところだと思いますが、堀米さんのヴァイオリンはやや速めのテンポで、高音部も力強く響かせながらの演奏で、どちらかと言えば乾いたイメージ(僕は、こういうブラームスの演奏からは、いつも「晩夏の夕暮れ」の黄色く染まった風景をイメージする)。高関さんも、それに合わせて、重々しくせずに、かといってとげとげしくもなく、やさしい音で堀米さんの演奏を引き立てていました。日フィルの弦の音がよくなって(いまや、当たり前になりつつありますが)、それがぴったりくる演奏でした。

後半「ツァラトゥストラ」は、出だしで多少ばらけたり、トランペットの音がすべったところがあって一瞬心配しましたが、そのあとは調子も乗ってきて、大きく盛り上がりました。

この曲、冒頭の部分が映画「2001年宇宙の旅」で使われて、それがすり込まれてしまっているため、いまだに苦手としているのですが、それでもこの日の演奏は、几帳面な? 高関さんらしく、ある意味、常人にも分かる「ツァラトゥストラ」になっていたのではないでしょうか。それがR・シュトラウスの意図を正しく再現しているのかどうかは分かりませんが、ともかくこれまで聴いた中では一番分かりやすい演奏だと思いました。ただ、その分、もしラザレフならどう振っていただろうかと思ったのも事実ですが。

オケは対抗配置。江口有香さんがコンサート ・ミストレスとつとめておられました。

来週は、これもラザレフに代わって、沼尻竜典氏が久しぶりに日フィルを振ります。プログラムも変更になって、ショスタコーヴィチの交響曲第10番を演奏。楽しみです。

【演奏会情報】 日本フィルハーモニー交響楽団第346回名曲コンサート
指揮:高関健/コンサート・ミストレス:江口有香/ヴァイオリン:堀米ゆず子/会場:サントリーホール/開演:2011年6月10日 午後7時

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