元原子力安全委員会長、「原発は廃止すべきだ」と指摘―ただしスイスのね。

前に紹介した swissinfo は、「東日本大震災」として、いろいろと記事を特集しています。

たとえば、これ↓は4月5日の記事。スイス政府の原子力安全委員会長を5年つとめた研究者へのインタビューです。

福島第一原発事故、避難指示圏を半径40キロに拡張を!:swissinfo

この人は、日本政府が30km圏内に「自主避難」を呼びかけたことにたいし、「理解に苦しむ。半径40キロを避難指示圏にすべきだ」と批判しています(あくまで4月5日時点での話ですが)。「さしあたり、ただちに健康に影響はない」と言い続けた、どこぞの「村」の学者さんとは大違いです。

また、原子力発電について、「原発は廃止すべきだと思う」とズバリ。その理由を「1つのエネルギー源として極端に高額だからだ。建設費そのもの、安全性の確保、監視、特にテロの攻撃回避の監視などに、巨額の資金がかかる」「原発に『絶対の安全』は存在しない」と述べています。「原発を認めるということは、今の日本のように、自分の国の一部を失う、つまりその地域の人が荒廃した土地を後にして再び故郷に戻れないようなリスクを受け入れるということだ」という指摘は、いま福島で10万人を超える人が避難し、「いつふるさとに戻れるか」と不安に思っている現状を考えると、非常に重いものがあります。

先日、共産党が発表した「原発からのすみやかな撤退」を求める提言でも、原発事故の「異質な危険」として、被害を「空間的、時間的、社会的に」限定できないことをあげています。「社会的」というのは、まさに、ヴァルター・ヴィルディ氏の指摘したこの問題。あらためて原発事故の「異質性」に戦慄せざるを得ません。

こちらの2つは、スイス連邦保険局放射線防護課主任へのインタビュー(5月10日付)。

福島原発事故、もし「フクシマ」がスイスで起きたら – 1 -:swissinfo
福島原発事故、もし「フクシマ」がスイスで起きたら – 2 -:swissinfo

これまた、どこかの国の「ホアン院」のようにポワンとした意見ではなく、「3時間後に原子炉が爆発すると分かれば、基本的には退去だ」「事故の初めが特に重要で放射性ヨード131を避ける必要がある」「とにかく事故の第1段階では外部被曝と放射性物質の吸引を避ける」ことが大事、と判断は明確。

またその次の段階では、「食料摂取などによる体内への取り込みが問題になってくる」と指摘。その場合、「被曝線量1ミリシーベルトの基準は守る」「スイスが厳しくしている点は、この年間の被曝量を1ミリシーベルトに限定し、特に妊婦や胎児、子どもには絶対にこの1ミリシーベルトを守る点だ」と述べています。そのためには、それぞれの食品について、放射性ヨウ素、セシウム、ストロンチウムについて1kgあたり何ベクレルまでという基準とともに、それぞれの国の「食文化」というものを考えて、全体として放射性物質の摂取量をどう抑えるかが肝心だと。

作業にあたっている人たちについても、非常時だから基準は250ミリシーベルトになっているが、「実は100ミリシーベルトが重要な基準値になっている。多くの研究が100ミリシーベルトから、ガンや胎児の奇形、知能障害などの危険性が高まると証明しているからだ」と指摘しています。

インタビューの2のほうでは、チェルノブイリ原発事故で牧草地が放射性物質に汚染されたとき、「スイス連邦保険局は、これらを食べる牛や羊を殺さない方針を取った」ことが紹介されています。

とはいっても、2のほうでは、東京に放射性物質が流れてきても「都民はすぐ避難するので問題はない」とか、校庭の放射性物質についても「放水して、水路を付けて流したらどうだろう」とかなり安直な発言もありますが…。

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