先週末、2つのコンサートを聴いてきましたが、どちらも大変充実した演奏でした。
まず17日は、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの定期演奏会。指揮は、ダニエル・ハーディング。
- ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調(1890年、ノヴァーク版)
ハーディングがブルックナーを振るのは初めてだとか。あの日、日本にいて震災を体験し、それでも当日夜にはコンサートを実施したハーディングが、ふたたび来日して、どんなふうに新日本フィルを振るのか、というのも期待でした。
オケは対抗配置で、ハープは3台。全体として少し遅めの演奏だったでしょうか。でも、インテンポで、確実にブルックナーの音楽が構築されていきます。弦が力強く音を刻んでゆき、管、とくにホルンとワーグナー・チューバがきれいな音を響かせます。ところどころで、木管のメロディがふわっと浮き上がってくるのも印象的でした。ハーディングの情熱が、そのままオケのすみずみまで行き渡っていっているように思いました。
東条碩夫のコンサート日記 6・17(金)ダニエル・ハーディング指揮新日本フィルハーモニー交響楽団ブルックナーの「8番」
願わくは、数年後にまた…?ハーディング&新日本フィルのブルックナー 交響曲第八番|新・千葉さとしの「はい、クラシックを聴いてます」
翌18日には、日フィルの定期演奏会。指揮は沼尻竜典、ピアノは小川典子さん。
- ストラヴィンスキー:交響的幻想曲《花火》
- チャイコフスキー:ピアノと管弦楽のための幻想曲 ト長調 op.28
- ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ホ短調 op.93
実は、ラザレフ来日中止というので、いったんは17日の定期をやめて、上記ハーディングのブル8を聞きに行くことに決めたのですが、やっぱり沼尻さんが2年ぶりに日フィルをふる――しかもショスタコの10番を振るというので、聞き逃す手はないと思い直して、チケットを土曜日に振り替えてもらって、聴いてきました。(^_^;)
で、そのショスタコ10番は、全体としては少しゆっくり目? でしたが、第2楽章は、4分ちょいの早めのテンポで、実に私好みの激しさでした。沼尻さんがインタビューで「思いの強烈さ、皮肉、絶望、希望など、込められているものに圧倒されます」と答えているとおり、ショスタコーヴィチの「思い」が強烈に込められた演奏でした。
日フィルの弦は、ほんとにいい音をさせるようになりましたね。第1楽章でだしの不気味な響きも、第2楽章の刻みも、しっかりがっつりいきながら、ちっとも音が濁りません。ヴィオラもいい音を響かせていました。管では、とくにクラリネットの伊藤寛隆さんが大活躍。終わったあとも拍手大喝采でした。
1曲目も、ラザレフの希望で変更された曲です。これが、沼尻氏曰く「短い割には編成が大きいということで演奏機会が少ない」作品とのことですが、実際、花火が打ち上がる様子がなかなか楽しい、いい曲でした。
2曲目では、小川典子さんが力強い演奏。第1楽章は、展開部が事実上のカデンツァ。これが楽章全体の3分の1くらいを占めるでしょうか。小川さんは、ここをがっつんがっつん弾きまくっておられました。2楽章での、チェロの菊地さんとの掛け合いもお見事でした。それにしても、チャイコフスキーって、ほんと美しいメロディーの作品をいっぱい残していますねぇ。あらためてその魅力を実感しました。
沼尻さん、お疲れ様でした。また、日フィルを振ってください。期待しています。
東条碩夫のコンサート日記 6・18(土)沼尻竜典指揮日本フィルハーモニー交響楽団
【演奏会情報】
●新日本フィルハーモニー交響楽団第478回定期演奏会
指揮:ダニエル・ハーディング/コンサートマスター:崔文洙/会場:すみだトリフォニーホール/開演:2011年6月17日 午後7時15分
●日本フィルハーモニー交響楽団第631回定期演奏会
指揮:沼尻竜典/ピアノ:小川典子/コンサートマスター:扇谷泰朋/ソロ・チェロ:菊地知也/会場:サントリーホール/開演:2011年6月18日 午後2時