東日本大地震前から内陸部で正断層の地震が起きていた

3日前の「東京新聞」に載っていた記事。東日本大地震の前から、福島県南東部で、正断層による地震が起きていたことが確認されたという。

正断層とは、地盤が反対方向に引っ張られるために生じるもの。これまでは、日本列島は全体として太平洋プレートによって押されて圧縮の力が加わっているので、内陸部では正断層の地震は生じないと考えられてきたから、これは日本の地震研究の「常識」を覆す発見といえる。

評価外の正断層で地震:東京新聞

これが、なぜ大問題かというと、原子力発電所の安全性をはかるときに、正断層の地震は考えなくてよいことになっているからだ。

大震災後は、東北地方の地盤が全体として東に数十メートル移動したため、これまで東西方向に押しつけられていた圧力が緩み、日本列島の各所で内陸直下型の地震が起きている。それらは東日本大地震の「後遺症」ともいえるが、それ以前からも正断層の地震が起きていたとなれば、今後はますます正断層地震についても研究・調査・警戒が必要となるだろう。

各地の原子力発電所についても、正断層地震の痕跡をきちんと調査して、あらためて原発の安全性を見直す必要がある。

評価外の正断層で地震

[東京新聞 2011年6月23日 朝刊]

 これまで原発の耐震設計の際には考慮する必要がないとされてきた「正断層」による地震が福島県南東部で相次いでいたことが、産業技術総合研究所の今西和俊主任研究員(地震学)の研究で明らかになった。経済産業省は、定期検査などで停止している原発の安全性を確認したとして再稼働を認めたが、断層の評価に不備がある可能性が浮かんだ。
 経産省原子力安全・保安院は、東日本大震災と福島第一原発の事故を受けて、原発から30キロ以内にある未考慮の断層を報告するよう各電力会社に指示。五月末までに全国20カ所の正断層が報告されたが、これらが起こす地震の影響評価は行われていない。
断層にかかる力とずれ方(東京新聞) 正断層は、岩板(プレート)が引っ張られる力により生じる断層で、日本では、太平洋の海溝沿いに多く存在する。昭和の三陸沖地震(1933年)などマグニチュード(M)8クラスの地震を引き起こしてきた。
 しかし日本列島は、海溝に沈み込む太平洋側のプレートに押されて圧縮の力を受けているため、本州の陸上では引っ張る力による正断層の地震は起きないとされてきた。
 ところが、今西研究員が、福島県南東部で2003〜10年に起きた10例の地震波の記録を分析したところ、多くが正断層によるものだったことが判明。東日本大震災前から、内陸部でも正断層による地震が相次いでいたことが分かった。
 福島県南東部では4月11日にも、M7の地震が発生。その後も周辺地域で地震が相次いだが、これらも正断層によるという。
 今西研究員は、この地域にはほかの地域とは異なる地下の構造があり、その影響で内陸部に引っ張る力がたまっているとみている。
 原発の耐震設計では約13万年以内に地震を起こした疑いのある断層を考慮することになっているが、保安院は「300万年前から一貫して圧縮の力が働いている」として、例外的に正断層の考慮を求めていなかった。

 <正断層と逆断層> 断層には、地盤が引っ張られて滑り落ちるようにずれる「正断層」と、双方から押されてせり上がる「逆断層」、地盤が水平にずれる「横ずれ断層」の3つがある。内陸部で起きる地震は、逆断層と横ずれ断層によるものがほとんど。三河地震(M6.8)や新潟県中越地震(M6.8)、能登半島地震(M6.9)は逆断層、阪神大震災(M7.3)は横ずれ断層による。正断層の地震は海では珍しくないが、内陸部では火山活動が活発で特殊な力が働く九州中央部を除いて起きないと考えられてきた。

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