東京都写真美術館で開催中の写真展「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」を見てきました。
1968年8月20日、ソ連とワルシャワ条約機構5カ国の軍隊が、チェコスロヴァキア共和国に侵入に、プラハの街を占領し、共産党や政府の幹部をモスクワに連れ去って、チェコスロヴァキアの自主的な改革の動きを踏みつぶした事件を撮影したものです。
私たちが、ソ連は本当に社会主義といえるのか? と考え始める出発点ともなった重大な事件なので、ぜひ見たいと思っていました。木・金は夜8時まで開場しているというので、仕事帰りに恵比寿にまで出かけてきました。
会場では、チェコの党と政府の要請によって軍隊を派遣したとするタス通信の記事とともに、事態を国際法違反と非難するチェコスロヴァキア共産党中央委員会幹部会の声明や、全面占領という困難な状況の下であくまで合法的政権を支持して闘おうと呼びかける共産党プラハ市委員会の声明なども掲示されていました。
しかしそれ以外には作品にはなんの説明もありません。それでも、20日の占領から始まって、徐々に事態が悪化していく様子がうかがえます。にもかかわらず、戦車部隊の兵士にむかって手をさしだし、必至に訴えかける市民の表情や、広場に座り込む市民の真剣なまなざし、自動小銃の前に自らの胸をはだけて立ちふさがる市民の姿に胸を打たれます。
ロシア革命は、レーニンを中心として、人類史上初めて資本主義から社会主義・共産主義の未来社会をめざす道に踏み出しました。しかし、その道を満足に進むこともできないうちに、レーニンが死亡し、その後、党の最高指導者となったスターリンは、国内で粛正をすすめるとともに、ヒトラー・ドイツとのあいだでポーランドや東ヨーロッパを分割する秘密協定を結んで、社会主義をめざす道から決定的に転落してしまいました。チェコ事件は、スターリン死後のソ連で、結局はこのスターリンの誤りが克服されなかったことを示しています。
あらためて、社会主義をめざす道を踏み外したソ連の犯罪行為の重大性を実感しました。
図録を手に入れたかったのですが、売り切れで買えなかったのが残念です。
写真展は今月18日まで。月曜休館。