九州電力の「やらせメール」。指示を出したのは、6月末で退職した元副社長らしい。退職といっても、別にこの問題で責任をとったわけではなく、たんなる偶然。
九電やらせメール、原発担当の元副社長が関与:読売新聞
九電やらせメール、当時の副社長が指示 組織ぐるみ:日本経済新聞
九州電力の2009年度の有価証券報告書(PDF、1.6M)を現在の役員と較べてみると、この原発担当の前副社長というのは段上守(だんがみ・まもる)氏と思われる。1967年、九州電力に入社、1997年7月、玄海原発第1所長、2001年6月、川内原発所長となり、翌月執行役員に。2007年6月には取締役常務(原子力発電本部長)、2009年6月に副社長になっており、今年6月28日の株主総会後、退職している。
もう一人は、常務の諸岡雅俊氏だろう。1969年、九州電力に入社。2005年6月、玄海原発所長、同7月、執行役員に。2007年6月に退任し、日本原燃の取締役に就任。2009年6月に九電に復帰し、副社長になった段上氏のあとの取締役常務(原子力発電本部長)になり、今年6月に退職している。
九電やらせメール、原発担当の元副社長が関与
[2011年7月8日 読売新聞]
九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を巡る「やらせメール」問題に、当時の原子力発電担当の副社長と、再稼働の地元交渉役を担っていた原子力発電本部の担当役員(いずれも6月末に退職)の2人が関与していたことが8日、九電の内部調査でわかった。九電は週明けに調査結果を発表し、第三者委員会を発足させて幹部らの処分を決める方針。経営陣の関与が明らかになったことで、真部利応社長の経営責任が問われるのは必至だ。
九電幹部によると、2人は、佐賀県民向けの説明会が開かれる数日前の6月下旬、説明会の日程などを社員や子会社に周知するなどし、説明会を再稼働に理解を得る機会にすべきだとの意向を伝えたとみられる。
九電社内では、説明会の2日後の同28日に株主総会を控えていたため、説明会で再稼働への反対意見が相次げば、紛糾が予想された株主総会にさらに影響が出ることが懸念されていたという。九電幹部の一人は、「2人は『よろしく頼む』という気持ちを、部下に伝えたようだ」と話している。
九電やらせメール、当時の副社長が指示 組織ぐるみ
[日本経済新聞社 2011/7/8 12:07]
九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡る「やらせメール」問題で、同社の原子力担当の副社長(当時)ら役員2人が、国主催の佐賀県民向け説明会に再稼働賛成の意見を出すことを呼び掛けるよう部下に指示していたことが8日、九電関係者への取材で分かった。組織ぐるみの世論誘導工作が浮き彫りになり、真部利応社長の経営責任が問われるのは必至だ。
九電関係者によると、県民向け説明会の6月26日の開催が決まった後、原子力担当の副社長は、広く意見を募ることになっていた説明会に「再稼働賛成」や「原発推進」の趣旨の意見を積極的に送るよう指示。部下の部長級社員らに口頭で「よろしく頼む」などと伝えたという。取締役原子力発電本部長(当時)も同様の指示を部下に出していたとされる。
これを受け、原子力発電本部の課長級社員が22日と24日、再稼働に賛成する意見メールを説明会に送るよう、社内と子会社4社の担当者にメールで依頼。こうした具体的な方法は課長級社員が考案したとみられる。依頼メールの内容は子会社だけで約2300人が閲覧し、このうち少なくとも約20人が説明会に意見メールを送っていた。
原子力担当副社長と原子力発電本部長はいずれも6月28日の株主総会で退任し、現在は子会社の社長を務めている。
九電の松尾新吾会長は8日、海外出張先から予定を早めて帰国した。同日中にも真部社長と会い、今後の対応を協議するとみられる。真部社長は6日の記者会見で自らの指示を否定している。
この段上前副社長は、5月23日、佐賀県議会議員の学習会で、議員の質問に答えて、玄海原発2、3号機の運転再開について「町や県の理解を得るのは大事」と述べていた。議員の前では、殊勝にも「地元の理解を得るのが大事」といっておきながら、陰では、社員や関連会社を動員して「地元の理解」を捏造しようとしていたのだから、ふてぶてしいというか、議員のみなさんはなめられたもんです。
【玄海】「運転再開、勝手に決められぬ」と九電
[2011年5月24日 読売新聞]
九州電力の段上守副社長ら幹部が出席し、23日に開かれた佐賀県議会の玄海原子力発電所(玄海町)の安全対策に関する勉強会。定期点検中の玄海原発2、3号機の運転再開や緊急安全対策について、議員側は、九電に納得のいく説明を求め、質問を重ねた。
午後1時に始まった勉強会は、予定の2時間では収まらず、同3時半頃に終わった。最初に九電側が、福島第一原発事故後の安全対策への取り組み、玄海原発との相違点、今夏の電力需給の見通しなどを説明。その後、質疑応答に入った。
議員からは、津波だけでなく、地震も想定した対策を要望する意見が相次ぎ、九電側は「国が津波だけでは不十分とすれば、新指針に基づき、必要な対策を取っていきたい」と答えた。玄海原発2、3号機の運転再開について、九電側は「福島の事故が起きた後なので、当社の勝手な判断で決められることではない。町や県の理解を得るのは大事」と述べ、地元の同意を得た上で再開を進める姿勢を見せた。
また、夏場の電力供給に関連し、議員の「県民の不安解消と供給のどちらを優先するのか」という問い掛けに対して、九電側は「電力事業者として地元の社会生活や経済活動に責任がある。供給責任は非常に重いが、地元の理解がないと、原発の立地はあり得ない。どちらも大切」として、優先順位を付けなかった。
その一方で、今後の会社の方針について、段上副社長は「今の産業活動、社会を支えていくために原発は必要。色々な安全対策を取り入れながら火力と原子力、自然再生エネルギーを最大限に活用していく」と強調した。
終了後、県議会原子力安全対策等特別委員会の木原奉文委員長は「今日の議論を踏まえ、6月2、3日の特別委では、県民に安全安心の認識を持ってもらえるように議論を進めたい」と語り、石井秀夫議長は「説明を受けたのは良かったが、まだ再開するかどうかを議論する段階ではない」との考えを示した。
ところで、この「やらせメール」が発覚するきっかけとなったのは、子会社社員が福岡県内の共産党事務所を訪れて、内部告発をしたこと。これはNHKニュースでも報道していましたが、今日の「読売新聞」夕刊に、3段見出しで、こんな記事が載っていました。
やらせメール、子会社社員が説明会前日に告発
[2011年7月8日15時46分 読売新聞]
九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を巡る「やらせメール」問題が表面化したのは、九電子会社の男性社員による内部告発がきっかけだったことがわかった。
共産党福岡県委員会によると、説明会前日の6月25日、この男性社員が県内の党事務所を訪れ、「やらせメール」の指示があったことを情報提供した。会社が社員向けに通知した文書も同党に提供した。
メールは同22日、九電本社原子力発電本部の課長級社員から、子会社4社と九電の3事業所の社員各1人に送信された。男性社員の会社では、再稼働への賛成意見をメールで説明会に送るよう社員に通知された。男性社員は「こんなコンプライアンスに反する行為は、自分の会社のためにはならない」と考え、知人に相談したところ、共産党の事務所を紹介されたという。