「やらせ」前科ありの九電、「トカゲの尻尾切り」は許されない

九州電力の「やらせメール」問題。会長は「一種の愛社精神」「再開容認のメールを送れとは言っていない」といって、6月末で退任した元副社長と、実際にメールを書いた「課長級」社員に責任を押しつけて、乗り切りを計っている。

しかし、九州電力原発本部の中村明・副本部長の説明によれば、「上司から議論を活性化させてほしいと言われ、部下に説明会を周知するよう指示した」というもの。「部下の具体的な行動のフォローをしていなかった」とは言っているが、九州電力は、これまでも限界原発プルサーマル実施の「公開討論」や鹿児島県川内原発の現地説明会や公聴会に社員や関連会社社員を動員した前科をもっている。つまり、「議論を活性化させてほしい」と指示を受ければ、部下は何をどうすればよいか十分承知しているわけだ。だから「内容をフォローする必要はなかった」までのこと。

しかも、当の元副社長は、マスコミの問いに、「「こうなった以上はしょうがない。責任は最終的には私にある」と発言している。「こうなった以上」とはどういう意味か? 「ばれた以上仕方ない」としか聞こえない。だいたいこの元副社長は、別に今回の事件で責任をとって副社長を辞めたわけでも何でもなく、たまたま6月末に九電の株主総会があって、その機会に退任しただけのこと。たまたまいいタイミングでやめた人物に「こうなった以上、責任をとらせた」ことにしてすませようという魂胆が見え見え。

九電やらせ 番組前、佐賀県に情報:東京新聞
やらせメール「説明会周知、上司が指示」 九電役員が認める:日本経済新聞
九州電力:やらせメール「部下の独断」強調…副本部長:毎日新聞
九電、社員動員慣例化か 原発説明会「参加促す風土あった」 :日本経済新聞
九電、佐賀県説明会にも動員 社内調査判明、8日開催分:朝日新聞
【やらせメール問題】元副社長「責任は私にある」 番組周知の指示認める:MSN産経ニュース

九電やらせ 番組前、佐賀県に情報

[東京新聞 2011年7月9日 夕刊]

 原発説明番組をめぐる九州電力の「やらせメール」問題は、九電の関連会社社員の内部告発がきっかけで発覚したことが関係者の話で分かった。メールの存在は番組放送の直前に佐賀県幹部に伝えられたが確認作業がなされないまま番組が進行していた。
 佐賀県の武藤明美県議(共産)らによると、番組前日の6月25日に知人を通じ、九電からの依頼が記された文書を入手した。関連会社社員が武藤議員の知人に「こんなことがあっていいのか」と知らせたという。
 武藤県議は、番組放送直前の26日朝、佐賀県幹部に「九電側が、番組中に賛成のメールを送るよう指示した文書がある」と伝えたが、県は九電に事実関係を確認しないままだった。県幹部は「まさかと思った。(原発の安全性について)国がどう説明するかに集中していた」と釈明している。
 同社の松尾新吾会長は9日、社内調査のとりまとめを急ぎ「結果をできるだけ早く経済産業省に持っていきたい」と記者団に述べた。来週前半にも国に一定の報告ができるようにしたい考え。
 九電のこれまでの調査によると、政府主催の原発説明番組に先立ち、原発担当だった元副社長=6月末で退任=が「国の番組を支援、協力してやれ」と原子力管理部長に求めた。これがきっかけとなり、部長から指示を受けた課長級の男性社員が、玄海原発(佐賀県)の運転再開に賛成する意見を番組に送るよう求めるメールを子会社四社などに送った。
 松尾会長は8日夜、元副社長の発言について「一種の愛社精神や、原子力事業がうまく運ぶようにと思い、軽い気持ちで下に言ったのではないか」と記者団に説明。一方で「(再開を容認する)メールを送ってくれとは全く言っていない」とし、元副社長はやらせには関与していないとの見方を示していた

この記事↑を読むと、佐賀県も実はグルだったのでは? と疑いたくなる。26日当日の朝、共産党の武藤明美・佐賀県議が県に「やらせメール」の存在を知らせたにもかかわらず、県は放置し、国や九州電力に問い合わせることさえしなかったというのだから。

やらせメール「説明会周知、上司が指示」 九電役員が認める

[日本経済新聞 2011/7/11 13:10]

 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡る「やらせメール」問題で、九電の中村明・上席執行役員(原子力発電本部副本部長)は11日、国主催の佐賀県民向けの説明会を巡り「上司から議論を活性化させてほしいと言われ、部下に説明会を周知するよう指示した」と明らかにした。参考人として出席した鹿児島県議会の原子力安全対策等特別委員会で述べた。
 やらせメールを巡っては、原子力部門を統括する前副社長らが賛成の立場で説明会に意見を送るよう指示していたことが明らかになっているが、九電幹部がメール作成の発端となった説明会周知の指示を公の場で認めたのは初めて。当時、中村執行役員は原子力発電本部の部長を務めていた。
 中村執行役員は「部下の具体的な行動のフォローをしていなかった」と述べ、原子力発電本部の課長級社員が玄海原発の再稼働に賛成するメールを送るよう依頼したことは知らなかったと釈明し、「部下が安易に考えて依頼メールを送った」と述べた
 県議からは上司の肩書を明らかにするよう質問が出たが、中村執行役員は「国への報告書を作成中なので、ご了承願いたい」と明言を避けた。
 一方、同委員会に出席した山元春義副社長は「県議、県民にご迷惑をかけ、国の説明会の信頼を損なうようなことになり、おわび申し上げる」と謝罪。伊藤祐一郎知事にも同日、謝罪した。
 同委員会では7月4日、やらせメール疑惑を県議が質問したが中村執行役員は否定。真部利応社長が6日夜の緊急記者会見で事実関係を認めた。
 依頼メールは6月22日と24日、社内の一部と九電子会社4社に送信された。4社で約2300人が閲覧し、実際に40〜50人が賛成の立場で説明会に意見を送ったことが既に分かっている。

九州電力:やらせメール「部下の独断」強調…副本部長

[毎日新聞 2011年7月11日 12時55分]

 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡る「やらせメール」で、子会社4社にメールを送るよう指示した原子力発電本部の当時の部長(執行役員)、中村明・現原子力発電本部副本部長が11日、鹿児島県議会原子力安全対策等特別委員会に参考人として出席し、部下への指示を公に認めた。
 中村副本部長は「メールで(番組周知を)依頼したのは原子力管理部の課長」と答弁。県議に「指示したのは誰か」と追及され「私でございます」と答え、番組周知のメール依頼を認めながらも「部下が軽い気持ちで意見を発信するように書いた」と述べるなど、番組への投稿を求めるなどの具体的な指示は部下による独断だったと強調した。また、中村副本部長に対して指示した人物については「上司」と述べるにとどめた。中村副本部長は4日の同特別委でやらせメールを否定していた。【福岡静哉】

九電、社員動員慣例化か 原発説明会「参加促す風土あった」

[日本経済新聞 2011/7/11 13:15]

 九州電力が、玄海原子力発電所2、3号機の運転再開を巡る「やらせメール」以前から、原発関連の説明会などで社員や関連会社社員に動員をかけていた疑いが強いことが11日、関係者への取材で分かった。自発的に出席した社員もいたとみられるが、同社の体質が改めて問われそうだ。
 九電は川内原発(鹿児島県薩摩川内市)3号機増設計画を進めるため、現地で説明会や公聴会を度々開催。2009年1月に同市内で開いた説明会の参加者は「半数以上が作業服姿で、地元で見かけない顔ぶればかりだった。関連会社の社員が動員されたのではと感じていた」と振り返る。反対派の意見にやじが飛ぶ場面も多かったという。
 玄海原発3号機でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やす「プルサーマル」発電を始めるに当たって05年12月に佐賀県が開いた公開討論会でも動員をかけていた疑いが既に浮上。参加者へのアンケート調査では、原発の安全性について約6割が肯定的な意見だった
 古川康佐賀県知事は06年3月にプルサーマル計画への同意を正式に表明、09年11月に国内で初めて稼働させた。原発反対派住民は「推進派の意見が出ると拍手が起き、違和感を持った」という
 玄海原発2、3号機の運転再開問題を議論した8日の佐賀県主催の県民向け説明会(同県多久市)でも動員があったかどうか、九電は社内調査を進めている。
 ある九電幹部は「参加の強制はしていないが、動員を促すような風土が原子力部門にあったのは事実だ」と明かす。別の幹部も「愛社精神の発露というか、(参加して賛意を示すような)雰囲気が自然に醸成された部分はある」と語った。

「風土」とか「自然に醸成された」など、無責任な発言だ。住民説明会や公聴会、アンケートなどに社員などを動員して、地域住民の世論形成をゆがめてもよいと考えるか、そうした動きは原発設置当事者としてやってはならないことと考えるか、それは「風土」だったり「自然に醸成」されたりするものではない。九州電力が、「社風」として培ってきたものに他ならない。事件発覚のこの後に及んで、まだ当事者としての自覚のかけらもないのには驚かされる。

九電、佐賀県説明会にも動員 社内調査判明、8日開催分

[asahi.com 2011年7月10日9時12分]

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開問題を議論した8日の佐賀県主催の「県民説明会」に、九電が本社やグループ社員に説明会に参加するよう呼びかけていたことがわかった。同社は9日までに、複数の社員が応募していたことを確認しており、実際の参加者数などの把握を急いでいる。
 「やらせメール」問題の社内調査の過程で明らかになった。同じテーマの国主催のテレビ番組に賛成意見を送るよう社員らに指示しただけでなく、地元住民の率直な意見を聞く場に原発の当事者が組織的な動員をかけていたことも判明したことで、九電に対する批判はさらに高まりそうだ。
 説明会は県内在住者が対象で、佐賀県が1〜5日に県内の各自治体を通じて参加者を募集。定員を超す応募があった自治体については、県が抽選で参加者を決めた。5日の締め切り時点では定員の約3倍の1093人が応募。最終的に370人の定員を下回る323人が参加した。

当日の参加者が370人の定員にたいして323人しか参加しなかったというのは、要するに、少なくとも当日欠席した47人は、「やらせメール」問題が発覚して「参加するのはまずい」と思った九電関係者であることは明らか。もちろん、「やらせメール」事件が発覚してもなお説明会に参加した律儀な「愛社精神」に満ちた九電関係者もいたはずだ。だから、九電の「やらせ」参加者は47人にとどまらなかったと考えるべきだろう。

元副社長の発言↓も、まともに考えればつじつまが合ってない。そもそも、社員に番組を見るように「お知らせする」だけのために、なんでわざわざ副社長が指示をだすのか? それだけなら、もっと下っ端の人間でも十分処理できるし、社員全員が対象なら、総務部あたりにメールを送るように指示を出すはずだろう。そんなことをやっていないということ自体が、副社長の指示が、そんな一般的な「お知らせ」を意図したものでないことを物語っている。

元副社長「責任は私にある」 番組周知の指示認める

[MSN産経ニュース 2011.7.11 11:59 ]

 九州電力のやらせメール問題で、同社の段上守元副社長=6月末に退任=が11日、大分市内で取材に応じ、玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開に向けた県民説明番組の周知を指示したことを認め「こうなった以上はしょうがない。責任は最終的には私にある」と述べた。取材に応じたのは、問題発覚後初めて。
 段上元副社長が6月20日ごろ、当時の部下の中村明・原子力発電本部副本部長=当時・原子力管理部長=に指示をしたことが一連の問題の発端とされる。九電は社内調査を進めており、近く結果を経済産業省に報告する見通し。
 段上元副社長は、中村副本部長への指示は社員が番組を見るように「お知らせする」というものだったとしたが、詳細については「調査結果の発表後にならないとお話しできない」とした。

なんにしても、このような放言や、すぐにばれるような言い逃れがまかり通っているのも、菅内閣が原子力安全・保安院なり、原子力安全委員会なりに責任を持って調べさせるのでなく、「やらせメール」を会社ぐるみでやった九州電力に「調査」を任せているからだ。こんないい加減な調査では、「調べてみましたが、会社を思って、部下が勝手にやったことでした」で幕引きされることは明らかだ。

共産党の志位委員長が指摘するように、九州電力社長を国会に証人喚問して、事実関係を徹底的に調べて明らかにする必要がある。

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