日刊「しんぶん赤旗」を読もう

今日の「しんぶん赤旗」日刊紙の読みどころは、なにはさておき、1面「いま言いたい」に登場した静岡県湖西市の市長・三上元(はじめ)さんの発言だろう。

三上市長は、福島原発事故後の3月の世論調査で、なお原発推進と撤退が半々だった結果に、「この期に及んで推進するというのか。ならば私は慎重・否定の立場に身を置こう。そこに政治生命をかけよう」と決意したそうだ。原発推進か撤退か、国の進路が問われる問題なのだから、政治家は、国民に自分の考えを示す責任があるとして、4月1日の朝礼で「脱原発の立場を鮮明にする」と職員に伝えたそうだ。経営者のあつまる会合でも、脱原発のスピーチをして「反応は極めてよかった」というから、本当に脱原発の立場で筋を通しているのだろう。7月23日に開かれる、浜岡原発の廃炉を求める県民大集会にも参加をされるという。奮闘を期待したい。

震災関連の雇用問題についてニュースが2つ載っている。1つは、大阪のコールセンター(NTT西日本の3次下請け)が、震災で「営業自粛」を理由に、自宅待機を命じられたアルバイト青年たち15人が、労働組合に入って団体交渉をおこない、3〜4月の2カ月分の未払い賃金など328万円の支払いを勝ち取ったというニュース。

もう1つは、ソニーが仙台テクノロジーセンター(多賀城市)の被災を理由に事業縮小し、280人の正社員は県外配転、期間社員150人は全員解雇しようとした問題で、ソニー労組に加入して雇用継続を求めている22人について、6月末で契約が終了するところを、労働組合の強い要求で、協議継続のために1カ月の雇用延長を勝ち取ったというニュース。ところで、ソニー労組は連合傘下の電機連合の加盟労組。それでも「しんぶん赤旗」が3面のかなりのスペースをつかって報道しているのがおもしろい。

それから、高橋ちづ子議員の衆院復興特別委員会の質問を紹介した「論戦ハイライト」。原発事故で東京電力は、被害者にたいして損害賠償の仮払いに応じているというが、実態をよくみると、けっしてそんな単純な話ではないことがよく分かる。

たとえば、農民の賠償請求に、東京電力は「立証責任は被害者が行なうのが原則」といって、21枚もの書類提出を要求したという。高橋議員が「一体、東電は払うつもりがあるのか」「原発事故とは関係ないという立証責任は加害者が負うべき」と追及すると、西沢俊夫・東京電力社長は「事故を起こした当事者と認識して真摯に受け止めたい」と謝罪したそうだが、ほかにも、仮払いの上限が、商工業者の場合は従業員が何人いても250万円、農漁業者の場合は「請求額の半分」とされていて、とてもやっていけないという声が上がっているという。損害賠償を被害の実態にあったものにして、さらに20km、30kmによる線引きを許さず、全面賠償を実現しなければならない。

ところで、6面の記事によれば、2006〜2010年度の5年間で、原子力広報に国の予算358億円が使われていたという。広報紙誌の発行や新聞広告、あるいは立地地域でのシンポジウムの開催などの経費だ。腹が立つのは、これらの予算は、電気料金に上乗せされている「電源開発促進税」から出ていること。原発の安全性を宣伝したければ、電力会社が自分の儲けのなかから出せばいい。税金として有無をいわさず取り上げて、それで「安全神話」を振りまいてきたのだから、現在の民主党政権だけでなく、歴代の自民党、公明党政権の罪は重い。

10面「くらし・家庭」欄では、みずからも二本松市に非難している福島県浪江町の馬場績・町議の手記が読ませる。浪江町の「ホット・スポット」としてすっかり有名になってしまった赤宇木(あこうぎ)椚平は、馬場さんの「家の前」だという。今日も、1時間あたり約35マイクロシーベルトの放射線量を記録している。

馬場さんは「現実にかなり被ばくをした町民の1人として2つのことを報告したい」として、次のように書かれている。

 一つはその時、町民8000人以上が何も知らないまま高線量の浪江町津島地区に丸4日間(3月12日から15日)も避難していた。その責任はだれにあるのかということである。
 3月11日、午後4時36分には福島第1原発の非常用電源が喪失し、「緊急事態」になったことは東京電力も、県も、国も先刻承知である。しかも緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の拡散予測図は3月13日未明には、県も確認していながら公表しなかったのである。
 東伝は3月14日に水素爆発した3号機が、その前日から高放射線量を確認したデータを持ちながら公表しなかったのである。政府は「混乱するから」と、それも公表しなかったのだ。……後で知ることになるのだが、3月12日、爆発した1号機の放射能は風にのり北西方向に、避難者が万といる津島地区や飯舘村など広範囲に広がっていたのだ。

とつとつとした文章だが、怒りの深さが伝わってくるだろう。バラバラに避難した町民は「町も議会も一度も来てくれない。私らは見放されたのか」と怒りと不安をあらわにするという。原発被害は「時間的、空間的、社会的に限定することは不可能」という共産党の「原発撤退提言」の指摘があらためて重く伝わってくる。

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