今日、某新聞に紹介されていましたが、佐村河内守(さむらごうち・まもる)さんの交響曲第1番《HIROSHIMA》のCDが、昨日、発売されたということで、さっそく帰りに新宿タワーレコードで買ってきました。
広島に被爆2世として生まれ、聴力をすべて失ってなお書き上げられた作品。全3楽章、80分を超える大作で、しかも、マーラー、ショスタコーヴィチを思わせるような正統派の交響曲です。聴いてみると、曲の細部まで充実した、こうでしかありえないという緻密な構成でありながら、ところどころに懐かしさを感じるような音の構成があって、まったく飽きさせるところがありません。曲のエネルギーの大きさに圧倒される、実に堂々とした作品です。
3つの楽章は、作者自身のコメントによれば、第1楽章が「運命」、第2楽章が「絶望」、第3楽章が「希望」を表しているとのことですが、「絶望」を表す第2楽章でさえ、けっして全否定ではないように思いました。第3楽章の「希望」は、ベートーヴェンの交響曲のように喜び歌い上げられるものではありませんが、圧倒的な「絶望」から最後に希望の鐘が鳴り響くところまで、傷だらけになって血を流しながら、それでも絶望のなかからみずからもがき出てくる、そんなものをを感じさせられました。
HIROSHIMAという表題を抜きにしても、クラシック音楽の1つの交響曲作品として、文字どおりマーラーやショスタコーヴィチに負けない、すばらしい作品だと思います。
大友直人氏の指揮で、東京交響楽団による演奏。東日本大震災から1ヵ月の、4月11日、12日にセッション録音がおこなわれました。セッション初日、演奏が第3楽章の最後にさしかかったところで、マグニチュード7の余震が発生。東京でも震度4の揺れを感じましたが、演奏は止まることがなかったそうです。
孤高の作曲家、佐村河内守による奇跡のシンフォニー『交響曲第1番「HIROSHIMA」』がリリース – CDJournal.com ニュース
【追記】
今週の「しんぶん赤旗」日曜版(7月24日号)に、佐村河内守さんのインタビューが掲載されています。
「この曲は、私が生きているうちには演奏されないだろうと考えていました」という佐村河内さんは、表題を《HIROSHIMA》としたことについて聞かれて、次のように答えています。
父も母も被爆者です。被爆2世として核廃絶を願う一人ですし、原爆を風化させてはいけない。堂々とレゾンデートル(存在理由)を打ち出すべきだと思いました。
そして最後に、東日本大震災の被災者に――
おこがましいかもしれませんが、もし音楽を聴ける条件があれば、ぜひこの曲を聴いてほしい。本当に苦しんでいる人を癒やせるのは、苦しみの中から生まれた芸術だと思うんです。
※自分がこのCDを買ったという記述以外、すべて削除します。2014/02/11