がんばれ、南相馬市!! 原発交付金を辞退

南相馬市が、東北電力が計画中の浪江・小高原発(2021年度運転開始予定)にかかわる「電源立地等初期対策交付金」の今年度分の受け取りを辞退することが明らかに。

交付金は、立地自治体にとっては、一度手を出したら辞められなくなる一種の「麻薬」。一時は地元は潤うようにみえても、実は、原発が稼働して16年たつと自治体の収入ががっくり減ってしまって、次から次へと新しい原発の立地を受け入れていかないと財政破綻する――。そんな恐ろしい交付金を、ともかく返上するという決断はすばらしいものだと思います。

南相馬市、新原発の交付金辞退へ 住民の安全を優先:朝日新聞

南相馬市、新原発の交付金辞退へ 住民の安全を

[asahi.com 2011年8月4日3時1分]

 東北電力の原発新規立地計画がある福島県南相馬市は、この計画に関連する「電源三法交付金」の受け取りを、今年度から辞退する方針を固めた。原発の見返りに自治体財政を潤してきた交付金だが、東京電力福島第一原発の事故で、自治体の判断にも変化が生じている。交付金よりも住民の安全を優先させた被災自治体の判断は、全国に広がる可能性がある。
 電源三法交付金は、発電所の立地計画や建設が進む自治体に配分される。南相馬市が辞退するのは、この交付金の一つで、建設計画のある自治体に交付される「電源立地等初期対策交付金」。東北電の計画では、同市と浪江町の境で、浪江・小高原発の2021年度運転開始をめざしている。南相馬市は1986年度から、交付金を受けている。昨年度は約5,000万円で、これまでの累計は約5億円にのぼる。
 交付金の対象自治体は例年5月と10月に、国に交付申請する。南相馬市は、東日本大震災の影響で5月分を申請していないが、10月も申請しない方針だ。
 桜井勝延市長は、朝日新聞の取材に「今回の原発事故を受け、将来的にも住民を脅かす原発を認めない。交付金を申請しないことで、新規立地に反対する市の立場を明確にできる」と説明している。

泊原発:営業運転21年間、国の交付金など653億円 周辺4町村に支給/北海道:毎日新聞
上関原発:是非論争、町を二分 交付金もめど立たず:毎日新聞
話題:佐賀へ九電65億円寄付 県要望で関連3事業に 09年プルサーマル以降:毎日新聞
話題:川内原発増設計画 寄付金集中 薩摩川内04〜08年 九電から16億円:毎日新聞
どうするエネルギー:識者に聞く/1 村上達也・茨城県東海村長:毎日新聞

泊原発:営業運転21年間、国の交付金など653億円 周辺4町村に支給/北海道

[毎日新聞 2011年7月6日 地方版]

 北海道電力泊原発1号機が営業運転した1989年以降の21年間で、周辺4町村に支給された国の交付金などが計約653億円に上ることが、道のまとめで分かった。泊原発が立地する泊村は8割強を占める約546億円の収入があり、一般会計の歳入総額に占める収入割合は56.8%に達している
 5日に開かれた道議会予算特別委員会で、共産の真下紀子氏(旭川市)が質問し、道が答えた。
 道によると、周辺4町村は89年以降の21年間で、電源立地促進交付金や電源地域産業育成支援補助金などのほか、固定資産税収入を得ており、約546億円の泊村を筆頭に、共和町約29億円▽岩内町約51億円▽神恵内村約27億円の収入があった。また、道も約306億円の収入があったという。
 これに対し、周辺4町村の2010年の人口は05年比で泊村13.9%減▽共和町10.0%減▽岩内町8.2%減▽神恵内村14.9%減となり、後志管内の平均6.8%減を上回る減少率となっている。真下氏は「『原発マネー』がなければ、町村財政が成り立たないゆがんだ構造になっている。また、原発マネーが地域のために役立っていない」と指摘した。

上関原発:是非論争、町を二分 交付金もめど立たず

[毎日新聞 2011年6月22日 2時19分(最終更新 6月22日 13時05分)]

 中国電力(広島市)の上関原発建設予定地、山口県上関町が揺れている。福島原発事故で国の原発建設計画が不透明となり、来年度以降の原発交付金のめどが立たないためだ。21日の町議会では、原発反対派が建設計画の白紙撤回を要求。町長は「受け入れられない」としつつ、「原発財源がない場合を想定した町づくりも必要」と苦しい胸の内を明かした。町長選(9月20日告示、25日投開票)も控えており、町の原発論争は拡大しそうだ。
 「原発誘致では町民の命と財産は守れない」。定数12の町議会で、原発反対派は3議員。その1人が21日の一般質問で柏原重海町長(61)に詰め寄った。同町の周辺市町議会では計画の「中止」や「凍結」を求める意見書可決も相次いでいる。
 原発推進を訴えて再選した町長は「原発推進は、少子高齢化に悩む町の財政の安定や産業基盤整備、福祉向上などを目指したもので、原発財源なくして町民の生活支援はできない」などと突っぱねた。同時に、国の原子力政策の変更などで原発財源がなくなる不測の事態に備えることにも言及。「選択の道を広く持っておく必要がある」。答弁からは原発に翻弄され続けた町の歴史が透けて見えた。
 町は過疎化が進み、約30年前に比べて人口は3550人に半減。高齢化率49.4%は、県内1位(09年)だ。原発計画は、町の衰退に合わせたように約30年前に浮上した。
 原発交付金は84〜10年度に計約45億円。11年度当初予算ベースでは11億円に上り、一般会計予算の4分の1を占める中電からも07年8月以降、約24億円の寄付があり、町は原発建設前から原発で潤ってきた。
 一方で原発は町を二分した。町長選は83年以来、推進、反対の両派が8回争い、いずれも推進派が当選。反対派は原発建設用地の入会権確認訴訟などの法廷闘争を続け、近年は瀬戸内海の自然環境保護も訴える。
 「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸貞夫代表は計画凍結などを求める意見書が周辺市町議会で相次いでいることを挙げ、「原発推進体制の崩壊を意味している」と歓迎する。しかし町内の長年の対立構図は簡単には変わらない。上関町まちづくり連絡協議会事務局の古泉直紀さん(52)は「想定外の事故を踏まえ、より安全安心な原発を造ってほしい」と話した。
 柏原町長は3選出馬の意思を表明していないが、推進派には「この難局を乗り切るには柏原氏しかいない」との声が強い。反対派も人選を進めるが、まだ具体的な名前は挙がっていない。反対派3議員は22日の町議会に、上関原発白紙撤回を求める動議を出す予定だ。

◇上関原発計画

 山口県上関町長島に出力137.3万キロワットの改良型沸騰水型原子炉2基を建設する計画。中国電力は12年6月に1号機の本体工事に着手、18年3月の営業運転開始を目指す。海面埋め立ては二井関成知事の免許許可を受け、09年10月に着工。しかし、反対派の抗議活動でほとんど進まず、今年2月に工事を再開したが、福島原発事故で3月15日に中断した。埋立免許は来年10月に失効するうえ、原子炉設置許可の動向も不透明なため、予定通りの本体着工は厳しいとの見方が広がっている。

話題:佐賀へ九電65億円寄付 県要望で関連3事業に 09年プルサーマル以降

[毎日新聞 2011年7月13日]

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で全国初のプルサーマル発電が始まった09年以降、同県が県関連の事業について九電に協力を要望し、少なくとも計約65億円の寄付を受けていたことが分かった。原発立地自治体には「迷惑料」として国から交付金が支給されるが、加えて寄付まで要求する県の“原発依存型”ともいえる財政運営の実態が浮き彫りになった。
 九電によると、同県の関連事業への寄付は、▽唐津市の早稲田大系列の中高一貫校(10年4月開校)を運営する学校法人に20億円(09年2月発表)▽唐津市の再開発ビル内に開設予定の「唐津市民交流プラザ」事業に5億円(10年4月発表)▽鳥栖市に建設中の「九州国際重粒子線がん治療センター」の運営財団に39億7000万円(同月発表)――の計64億7000万円。がん治療センターへの寄付は九電の1件当たりの寄付額としては過去最高。
 これらの寄付はいずれも同県から要望があり、九電は「佐賀県は重要な電源立地地域であり、県の地域振興に協力することは当社事業の円滑運営に大きく寄与する」として寄付を決めたという。
 玄海原発のプルサーマル発電をめぐっては、九電が04年に実施計画を決定。古川知事は06年、全国で初めてプルサーマル発電に同意し、09年に3号機で始まった。
 プルサーマルの実施受け入れに同意した県には「核燃料サイクル交付金」として、計60億円が支払われる。
 電源三法に基づく交付金は家庭の電気料金とともに徴収される電源開発促進税収が財源。福島大の清水修二副学長(地方財政論)は「もともと電源三法には企業からの寄付で原発立地が進められるのを防ぐ目的があった。九電の寄付は立法趣旨に反しており、やめるべきではないか」と話している。

  ◇  ◇

 九州電力から玄海原発(佐賀県玄海町)が立地する同県につぎ込まれた約65億円もの巨額寄付。うち二つは唐津市内の事業で、残りの「九州国際重粒子線がん治療センター(鳥栖市)」も当初は唐津市内の立地が想定されていた。そこには原発立地の玄海町と隣接する唯一の自治体である唐津市をも、「原発マネー」で懐柔しようとする構図が透けて見える。
 「がん治療施設を造って原発やプルサーマル発電の根強い反対や不安を取り除きたいんだ」。関係者によると、古川康知事はプルサーマル発電に同意した06年ごろ、周囲にこう話したという。
 当時、古川知事が施設の建設地に想定していたのは唐津市。同市は05〜06年に周辺8町村と合併し、玄海原発に隣接する唯一の自治体になった。このうち3町村議会は合併前、プルサーマル計画に反対を表明していた。
 同市は県や玄海町と違い、九電と安全協定を結んでおらずプルサーマルに了解は求められる立場にはないが、合併で玄海原発の10キロ圏内に玄海町の4倍の人口を抱えることになったため「県としては唐津市を無視できなくなった」(地元県議)。県は06年に同市と確認書を交わし、県の立ち入り調査に市職員も同行できるようにした。
 さらにプルサーマル受け入れで同県に支払われる核燃料サイクル交付金60億円のうち30億円は県と唐津市に半分ずつ支給されるが、県の分も唐津市内の事業に使われる。
 がん治療センターは最終的に鳥栖市に決まったが、ある九電役員は「他(の県)でそこまで(九電が)負担するかと言ったら常識的にしないでしょう」と原発立地県ゆえの“優遇措置”を強調する。
 福島大の清水修二副学長は「巨額の寄付を受けた県が原発の安全性について公平にモノを言えるのか」と批判する。さらに「電気使用者からすれば、それだけの寄付を出せるならもっと電気料金を下げろという声が出るだろうし、株主の立場なら利益を圧縮されているのではないかと反発するだろう」と話している。
 一方、過去の記者会見で、「九電から寄付を受けることで原発の安全性の監視機能に影響しないか」という質問に対し、古川知事は「企業の社会的な貢献という意味があると思っている。そのゆえに、何か監視の目が鈍るということは断じてあってはならないし、そういったことにはなっていないと強く思っている」と答えている。

話題:川内原発増設計画 寄付金集中 薩摩川内04〜08年 九電から16億円

[毎日新聞 2011年7月21日]

 九州電力川内原子力発電所が立地する鹿児島県薩摩川内市が04〜08年に九電から計約16億円の寄付を受けていたことが分かった。3号機増設計画をめぐり、市の同意が焦点となっていた時期に重なっており、市に対する79年ごろからの九電寄付金(合計27億4000万円)の約6割が集中。市と鹿児島県は、19年に予定された3号機稼働に向け本格的な寄付を期待していたが、福島第1原発事故の影響で増設手続きが凍結され、先行きは不透明となっている。
 市によると、出力159万キロワットを予定する3号機増設は92年に計画が表面化。九電が00年、市に増設に向けた環境調査を申し入れ、旧川内市長が01年1月に同意。その2年半後の03年6月、市が九電に求めて15億円の寄付に関する覚書を締結した。同年10月に環境調査が始まり、04年3月に寄付金が振り込まれ、市は九州新幹線駅の周辺整備事業などに充てた。また、08年2月には市が求めて川内港の荷役設備導入事業などで1億3000万円の寄付を受けた。
 09年1月、九電が正式に3号機増設を要請。市が10年6月、県も同11月に同意した。
 市は「04、08年の寄付は1、2号機に関する地域振興協力金であり、3号機増設問題とは関係ない」と説明している。
 九州電力社長室は04年の寄付は「九州新幹線の開業に伴う駅周辺整備や原発周辺の防災関係事業の拡充を図る必要があるなどとして市から要請があった」とし、08年の寄付は「川内火力発電所の燃料変更に伴い川内港の整備が必要になったので協力した」と説明している。
 一方、増設同意後、市や県はともに寄付金への期待を募らせた。市は3号機増設に伴う地域振興策として文化、商業などの複合拠点施設の建設を計画、岩切秀雄市長は10年12月、九電に寄付を要請する考えを表明した。また鹿児島県の伊藤祐一郎知事も3号機増設同意の際、九電に「県の地域振興策に積極的に協力を」と要望。記者会見で「佐賀県のように寄付を想定しているのか」と問われ「その通り。(具体的には)今から明らかになる」と述べ、九電に寄付を求めていることを明らかにした。しかし福島第1原発事故で14年着工、19年稼働開始予定だった増設手続きは凍結され、寄付金の話も頓挫したとみられる。
 同市は、いわゆる電源3法による電源立地地域対策交付金を78〜09年度に約220億円得ている。

こっちは、本編記事のなかの注。電力料金に上乗せされる電源開発促進税だけで、毎年3460億円の税収があります。これが財源になって、原発交付金のばらまきがおこなわれているのです。

電源3法交付金◇自治体に巨額の「迷惑料」

[毎日新聞 2011年7月12日 東京朝刊]

 原発の立地自治体には、電源3法(電源開発促進税法、特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)に基づく交付金のほか、施設にかかる固定資産税など、巨額の交付金、税収が落ちる。
 交付金は、電力消費地が電力生産地に支払う「迷惑料」として、家庭の電気料金とともに徴収される電源開発促進税収(11年度予算での見込み額3460億円)が財源だ。11年度の国の予算は、公共施設の整備などに使われる電源立地対策費約1660億円を計上。原子力を中心に火力、水力などの発電所立地、周辺自治体に配分される。政府試算では、出力135万キロワットの原発を新設する場合、交付金総額は運転開始までの10年間で約450億円、その後35年間で約800億円に達する
 ただし、交付金には適用期限があり、固定資産税も毎年の減価償却とともに減少する。そのため、原発マネーに依存していた自治体が、財政再建のため、原発増設を求めるケースもある。

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