実は、東京電力福島第二原発でも、格納容器内の蒸気を建屋外部に放出する「ベント」の準備がされていたというニュース。
第二原発もベントの準備していた…震災翌日に:読売新聞
【放射能漏れ】全号機でベント準備 福島第2の状況公表:MSN産経ニュース
えっ…、と驚いて、あらためて東京電力のプレスリリースをさかのぼってみたら、3月12日午前10時現在のプレスリリースで、「現時点において、安全を確保するため、原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置(放射性物質を含む空気の一部外部への放出)の準備を行うことといたしました」と発表されている。同日午前7時の時点で、政府により、福島第二原発から3km圏内に避難指示、3〜10km圏内に屋内退避指示が出ていて、第二原発でも「ベント」の準備が始まっていたことは当時から発表されていたことが確認できた。
しかし、「読売新聞」に書かれている福島第一原発5、6号機の建屋上部に穴を開けた作業については、12日のプレスリリースにはそれらしい記載はまったく見当たらない。
で、調べていくと、3月19日午後6時のプレスリリースに、「5、6号機について、水素ガスの滞留防止を目的として、原子炉建屋屋根部の各3箇所で穴あけを実施」と掲載されていた。しかし、「新規事項」の目印である下線は引かれていない。となると、それ以前にすでに発表されていたということになるのだが、その前のプレスリリース(午前9時)には、そうした事項は書かれていない。不思議である。
考えられる可能性は、次の3つだろう。
- ただたんに下線を引き忘れただけ。この場合、穴開け作業は、19日午前9時から午後6時までのあいだにおこなわれたことになる。
- 19日午前9時から同日午後6時のあいだに、実はプレスリリースがあって、そこで「新規事項」として発表されていた。しかし、そうなると、そのプレスリリースがなぜ現在はインターネット上に公表されていないのか、という問題が残る。
- 穴開け作業は、実は19日以前にすでにおこなわれていたが、何らかの理由でそのことが発表されないままできていた。それが、これまた何らかの理由で19日午後6時のプレスリリースに盛り込まれることになったが、やはり何らかの理由で下線を引かなかった。
実は、この3番目の可能性が一番大きい。
というのは、現在発表されている「過去の実績」(8月10日)をみると、福島第一原発の5号機、6号機とも「水素ガスの滞留防止を目的として、原子炉建屋屋根部の各3箇所で穴あけを実施」と書かれている(PDFファイルの10ページおよび11ページ)ものの、他の項目ではすべて作業をおこなった日時が分単位で詳しく書かれているにもかかわらず、この作業についてだけ、日付も時刻も記載されていないからだ。この「過去の実績」がなんの記録にもとづいて作成されたのか不明だが、作業日時を明記すると、それまでに発表してきたプレスリリースとの食い違いが明らかになるので、穴開け作業の日時を書かなかった可能性が大きい。もちろん、穴開け作業がいつおこなわれたのか本当にわからないという可能性もある。19日以前に穴開け作業がおこなわれたにもかかわらず、それが本部(どこの?)では把握されず、どこかの時点で「すでに穴が開けられている」ことが判明したが、結局、いつ作業をやったのかわからないまま、というケースも考えられる。
今回の新聞報道のもとになった資料が見られれば、穴開け作業がいつおこなわれたのか判明するのだろうが、いまのところその資料が確認できないので、こんなややこしい推測を重ねているわけだ。
いすれにしても、東京電力が第一原発5号機、6号機の建屋に穴を開けた作業について、記者会見できちんと発表していなかったことだけは確かだろう。
第二原発もベントの準備していた…震災翌日に
(2011年8月10日11時53分 読売新聞)
東日本大震災の発生直後、東京電力が福島第二原子力発電所でも水素爆発を防ぐため、1〜4号機すべてで格納容器の蒸気を建屋外部に放出する「ベント」の準備をしていたことがわかった。
東電が10日、初期対応などの経過を記した資料を公表した。福島第一原発5、6号機では、水素爆発を防ぐため、建屋上部に穴を開ける措置を取ったことも判明した。
発表資料によると、第二原発では震災当日の3月11日、1、2、4号機で原子炉冷却用の海水をくみ上げるポンプの一部が津波で故障、格納容器の圧力が上昇して破損する恐れが生じた。このため、翌12日に3号機も含めてベントを準備したが、ポンプのモーターを交換するなどして循環冷却で原子炉を100度未満に冷やすことができ、ベントは行わなかった。
東電はベントを第一原発1〜3号機で実施したものの、4号機も含めた4基で水素爆発などが起きた。
全号機でベント準備 福島第2の状況公表
[MSN産経ニュース 2011.8.10 17:31]
東京電力は10日、東日本大震災直後の福島第2原発での対応状況を公表した。1〜4号機すべてで、放射性物質を含む気体を外部へ放出して原子炉格納容器内部の圧力を下げる「ベント」作業を準備したが、第1原発と異なり外部電源が確保され、原子炉の冷却が維持できたためベントを実施せずに済んでいた。
東電は、第2原発から回収した運転日誌や機器のデータ類、運転員の証言などを整理し、まとめた。外部電源4回線(うち1回線は点検で停止中)は、地震により2回線がダウンしたが、残された1回線により全号機の中央制御室では多くの計器類が機能した。
また、津波で冷却に必要な海水系ポンプが停止するなどしたものの、別の系統による代替冷却やポンプ復旧により、3月12〜15日には、全号機で原子炉水の温度が100度未満となり、冷温停止状態に至った。
【追記】
福島第一原子力発電所が発表した3月19日午後0時現在のプレスリリースに、「新規事項」として5号機、6号機の建屋屋上部に3箇所穴を開けたことが報告されていたことを見つけた。