休みが続いてすっかりヒッキーになりつつあるので、今日は、夕方になってから映画を見に出かけました。(今年8本目)
「ペーパーバード 幸せは翼にのって」。スペイン映画です。
舞台は、内戦が終結したあとのスペイン。フランコ軍の爆撃で妻と息子を失った喜劇役者ホルヘは、1年後、ふたたび旅劇団に復帰する。相方のエンリケ、そしてエンリケにひきとられた孤児のミゲルといっしょに、ふたたび舞台に立つ。内戦に勝利したフランコ政権は、反体制派に徹底的な弾圧を加える。一人の大尉がホルヘに目をつけ、劇団に部下のパストールを送り込む。やがて、劇団はフランコ総統の前で芸を見せることに……。
ということで、劇団のなかにも、こんなチャンスはないという者がいたりして、いったい何が起こるかは映画を見てのお楽しみ。
おもしろかったのは、軍幹部が臨席するリハーサルの場面でホルヘが突然歌い出す歌。「このカネには価値がない。パインを買いたくてもザクロも買えない。買い物もできない」「1フランじゃとても暮らしていけない」と歌うのですが、この1フランというのがスペイン語だとfranco(フランコ)となって、「フランコでは暮らしていけない」という意味になっています。さらに、カネがないからシャツも買えず、「青かった色(フランコ派の行動隊は「青シャツ隊」だった)があせて、物笑いの種」「理想的な赤(フランコ派に倒された共和国政府は左派政権だった)に染めることもできず、云々」と、皮肉たっぷりです。
といっても、反フランコのレジスタンス闘争を描いた作品ではありません。もちろん反フランコは反フランコなんですよ、スペインではそれ以外には考えられないのだから。でも、描かれているのは、フランコ政権下で旅一座の芸人たちが味わった、ひいてはスペイン国民が味わった息苦しさです。フランコ政権は、ドイツ、イタリアの支持で内戦に勝利したが、第2次世界大戦では中立の立場をとり、その結果、大戦後も独裁体制を1975年にフランコが亡くなるまで維持した。だから、内戦の記憶は、けっして65年前のことではないのです。スペインの外から、スペイン内戦を描いた作品はいろいろあるけれど、スペイン国民自身の目線で内戦の残した”痛み”をあらためて描き出したのではないでしょうか。
ラストシーンは、ちょっと蛇足のような感じもしましたが、しかし、本編があんなふうな結末では、こういうラストシーンがないとやりきれないですからね。