今日の「朝日新聞」の記事。国保滞納者の差し押さえが急増しているという。国保料(税)の負担の重さは、これまでもくり返し指摘されてきたが、本来、病気というもしものときに備えるはずの健康保険のために財産を差し押さえられてしまう、というのでは、もはや社会保障都はいえない。
国保滞納者の差し押さえ急増、4年で5倍 朝日新聞調査:朝日新聞
国保滞納 差し押さえ5倍 37市区4年で 強制徴収が加速
[朝日新聞 2011年8月29日朝刊]
国民健康保険(国保)の保険料を滞納し、財産を差し押さえられる世帯が増えている。朝日新聞社が19の政令指定市と東京23区に聞いたところ、回答があった37市区の差し押さえ件数の合計が、2010年度までの4年間で5倍に増えたことがわかった。差し押さえた財産を換金するケースも急増。雇用悪化を背景に国保料収納率の低下に歯止めがかからず、強制徴収が加速している実態が浮き彫りになった。
調査は7月、計42市区を対象に06〜10年度の差し押さえ状況を聞いた。仙台、京都両市と東京都渋谷区は10年度分について「未集計」「非公表の段階」と回答。大田、板橋両区は「古いデータが残っていない」と答えた。残る37市区の差し押さえ件数は06年度、計3429件だったが、10年度は4.96倍の計1万7020件に増加。特に指定市の伸びが大きく、増加率は6.6倍に上った。
10年度でみると、指定市では横浜(2913件)、福岡(1745件)、名古屋(1254件)の順に多く、北九州は99件だった。23区は杉並区の943件が最多。差し押さえた財産の内訳は預貯金が50%で最も多く、保険(22%)、不動産(15%)と続いた。36市区が回答を寄せた差し押さえ金額(滞納額)は総額91億3千万円。4年前に比べて4.6倍となった。
自治体は地方税法などに基づき、滞納者の財産を差し押さえることができ、滞納額が納付されなければ財産を換金して保険料に充当できる。換金実績を回答した31市区でみると、06年度の計1106件から10年度は計6979件に増えた。
全国の国保料収納率は09年度、過去最低の88.01%に落ち込み、指定市と東京23区は85.89%と低水準。
ただ、長引く不況で支払い能力の低い失業者や非正社員らの加入が増加。東京都中央区は「国保は福祉的要素があり、生活を困窮させる恐れがある」として差し押さえを実施せず、「学資保険の差し押さえはできるだけ避ける」(大阪市)といった配慮も見られた。