原発を減らす72%、「不便でも省電力」65% – 毎日世論調査

少し古くなったけれど、20日付にのった「毎日新聞」の世論調査。

「日本の原子力発電を、今後、どうすべきか」の問いには、「危険性の高いものから運転を停止し、少しずつ数を減らす」60%、「できるだけ早くすべて停止する」12%、合わせて72%が原発を減らすべきだと回答。原発を減らすべきだという世論は、もはや定着したといえるだろう。

さらに注目されるのは、65%が「生活程度は低くなっても、電力の消費を少なくすべきだ」と回答していること。30代71%、20代67%と、若い世代でその割合が高いという。生活程度が少々悪くなっても、電力を減らす、ひいては原発を減らすべきだと考える人が3分の2を占めているということだ。

財界・大企業は、「電力供給に不安があると、企業が海外へ流出する」と言って、従来のように好きなだけ自由に電力を使わせろと主張しているが、それがどれほど国民意識から乖離しているか、考えてみるべきだろう。

毎日新聞世論調査:東日本大震災 「不便でも省電力」65%「原発徐々に削減」60%:毎日新聞
毎日新聞世論調査:東日本大震災 国政への不信鮮明:毎日新聞

もう1つ、この調査で注目されるのは、「震災に対する政治の対応を見て、国家を運営する仕組みを改める必要があると思うか」の問いに、85%が「ある」と答えていること。「毎日」の世論調査は、その中身をいろいろと尋ねているが、これはそうした質問項目にかぎらず、「ともかくいまの政治のあり方を根本から変えなければいけない」という国民意識の反映とみるべきだろう。

先日の「読売」の世論調査では、震災での「仕事ぶりを評価する」と答えた割合が「政府」6%、「国会」3%だったが、今回の「毎日」調査でも、政治のあり方にたいする根本的な疑問が大きく広がっているということが分かる。

とくに問題だとされるのが、「被災地の復旧・復興の遅れ」74%、「被災者の生活再建の遅れ」57%、「福島第1原発事故の収束に向けた対応」63%、「放射性物質による影響の防止策」56%。だれもが歯がゆく思い、不安に感じ、政治がそれに答えていないことに大きな批判、不満を抱いていることは明らか。

民主党の対応にも不満だが、民主党政権の揚げ足取りばかりをくり返す自民党・公明党にたいする不満も強い。問題は、この不満にたいして、こうすれば解決できる、という明確で、積極的な打開の方向を示すこと。世論調査では7割、8割の国民が原発を減らす方向に賛成だと答えているが、国会の中では、原発を減らす方向に踏み出そうという方向は、依然として少数にとどまっている。もっと声を上げて、それを大きく響かせて、政治の動きを実際につくり出していかなければならない。そのこともまた、問われているということを、こんどの世論調査は示しているように思う。

毎日新聞世論調査:東日本大震災 「不便でも省電力」65%「原発徐々に削減」60%

[毎日新聞 2011年9月20日 東京朝刊]

 毎日新聞は9月、東日本大震災発生から半年を控え、全国世論調査を面接方式で行った。東京電力福島第1原発事故を受け、電力供給や消費のあり方を尋ねたところ、「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」が65%に上り、「生活程度を維持するために電力供給を増やすべきだ」の32%を上回った。今後の日本の原発については「危険性の高いものから運転を停止し、少しずつ数を減らす」が60%と最も多く、段階的な原発削減志向がうかがえる。
 「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」と回答した人を性別でみると、男性60%、女性70%。年代別では若年層の高さが目立ち、30代で71%、20代で67%と続いた。生活程度より電力消費の見直しを優先する人のうち、原発について「少しずつ数を減らす」と答えた人は66%を占めた。
 原発を今後どうすべきかとの設問では、「少しずつ数を減らす」(60%)に次いで、「数は増やさずに運転を続ける」(20%)、「できるだけ早くすべて停止する」(12%)、「今ある原発の運転と新設も進める」(6%)の順だった。福島第1原発事故は収束しておらず、「脱・原発依存」を目指す回答が7割に達している。
 東京で災害が発生した時に首都機能を補う「副首都」構想について、「必要ない」は10%にとどまった。具体的な立地先は(1)関西43%(2)首都圏を除く関東18%(3)東海9%――などの順。広範囲に被害が及んだ東日本大震災を受け、関東や東海が伸び悩む一方、副首都として関西を選ぶ人が多かった。
 調査は9月2〜4日に面接方式で実施した。対象者4378人のうち有効回答者は2413人で回答率は55%だった。【中山裕司】

    ◇

 東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島3県は調査対象に含まれておりません。

毎日新聞世論調査:東日本大震災 国政への不信鮮明

[毎日新聞 2011年9月20日 東京朝刊]

◇国家運営の仕組み「改める必要ある」85%

 毎日新聞が2?4日に実施した全国世論調査(面接方式)で、東日本大震災への政治の対応を見て、国家を運営する仕組みを改める必要があるかを尋ねたところ、「ある」との回答が85%に達し、「ない」の13%を大きく上回った。政府の東京電力福島第1原発事故への初動対応や被災地の復興の遅れ、「ねじれ国会」で進まない与野党協議など、国政の機能不全に対する国民の強い不信を浮き彫りにした。【中山裕司、坂口裕彦】

 「仕組みを改める必要がある」と回答した人に、具体的に改めるべき点(複数回答)を聞いたところ、「国のリーダーの選び方」が63%で最多となった。次いで、「国会議員の選び方」(44%)▽「中央と地方の行政の役割分担」(36%)などの順。2006年の安倍内閣以降、ほぼ1年置きに首相が交代するなか、リーダーの選び方への関心が高まっている。
 国政に対する不満や不安は、強いリーダーを求める国民心理をもたらした。「強力なリーダーシップを持った政治指導者の出現を期待するか」との設問には「期待する」と答えた人が71%。「期待しない」(8%)を大きく上回った。阪神大震災が起こった1995年の村山内閣当時、同じ質問をしたところ、「期待する」との回答は64%で、今回、7ポイント上昇している。
 リーダーシップを持った政治指導者に期待する人を年齢別にみると、20?24歳では58%だったのに対し、55?59歳73%▽60?64歳74%▽65?69歳84%▽70歳以上78%??と高齢層で高い傾向がある。「国家運営の仕組みを改める必要がある」と答えた人のうち、「期待する」と答えた人は74%に及んだ。
 国政の当事者も危機感を強めている。自民党の林芳正政調会長代理は17日のNHK討論番組で、リーダーシップの発揮に向け、民主党代表選や自民党総裁選のあり方を見直すべきだとの認識を表明した。野田佳彦首相を民主党代表に選んだ8月の党代表選は実質3日間。林氏は「(首相候補として)どういう人かも大事な要素だが、3カ月ぐらいかけて、選ばれているかがポイントだ」と述べ、主要政党のトップ選びに一定の時間をかけるよう提案した。
 大震災後の国の政治について、特に問題だと思う点(複数回答)では、「被災地の復旧・復興の遅れ」が74%で最多。次いで「福島第1原発事故の収束に向けた対応」(63%)▽「被災者の生活再建の遅れ」(57%)▽「放射性物質による影響の防止策」(56%)の順だった。

◇原発国民投票「実施を」65%

 イタリアでは6月に原子力発電再開の是非を問う国民投票が行われ、原発を再開しない方針を決めた。日本でも原発運転に関する国民投票を実施すべきかを尋ねると、「実施すべきだ」が65%。「実施する必要はない」の31%を大きく上回った。
 参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」により、政治の意思決定は遅れがちだ。参院の権限を弱めるための憲法改正を行うべきかについては「反対」(46%)、「賛成」(45%)で拮抗(きっこう)した。

◇「原発=地方、消費=都市」の構図「事故後知った」36%

 原子力発電所の多くが地方に立地する一方で、発電された電力は主に都市部で消費されてきた。この「原発=地方、消費=都市部」の構図を知っていたかと尋ねたところ、「福島第1原発の事故の後に知った」が36%を占めた。「知らない」との回答もなお20%に上る。一方、「事故の前から知っていた」は43%で最多だった。
 「知らない」と回答したのは、男性15%、女性25%。年代別では20代が26%と最も多く、70代以上24%、40代22%、30代20%と続いた。原発が立地する道県と立地しない都府県別でみると、「知らない」は立地しない都府県の19%、立地する道県では24%だった。
 一方、「事故の前から知っていた」と回答した人を性別でみると、男性が56%に上り、女性の31%を25ポイント上回った。年代別では50代が51%で最多。20代は33%にとどまり、最も少なかった。原発立地別にみると「事故の前から知っていた」はともに43%だった。
 支持政党別では、民主、自民両党の支持層は「事故の前から知っていた」(47%)、「事故の後に知った」(34%)でともに同じ結果だった。「知らない」が多かったのは、たちあがれ日本(33%)、社民党(30%)、公明党(26%)など。支持政党がない無党派層は「事故の前から知っていた」(41%)、「事故の後に知った」(38%)、「知らない」(21%)だった。

◇震災で「自然の猛威」感じた…68%

 「東日本大震災が起きて、どのようなことを感じているか」を尋ねたところ、「自然の猛威」と回答した人が68%で最も多かった。阪神大震災を受けて、同様の設問で聞いた1995年の調査でも「自然の猛威」は最多。ただ、95年調査では53%にとどまり、東日本大震災でより自然災害への恐れが広がった結果となった。
 回答者の多い順にみると、「自然の猛威」に次いで「技術への過信」(11%)▽「人間のたくましさ」(7%)▽「死生観・運命観の変化」(6%)▽「人智(じんち)の限界」(4%)。前回調査では「技術への過信」(17%)▽「人間のたくましさ」(10%)▽「人智の限界」(7%)などが多かった。

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◇世論調査の質問と回答

◆東日本大震災が起きて、どのようなことを感じていますか。最もあてはまるものを選んでください。
全体 男性 女性
自然の猛威 68 66 70
技術への過信 11 16 7
人智の限界 4 5 4
死生観・運命観の変化 6 4 8
人間のたくましさ 7 6 9
その他 1 1 2
特にない 2 2 1
◆震災後の国の政治について、特に問題だと思うのは次のどれですか。(いくつでも)
被災地の復旧・復興の遅れ 74 74 74
被災者の生活再建の遅れ 57 55 59
福島第1原発事故の収束に向けた対応 63 64 63
放射性物質による影響の防止策 56 53 59
首相の座にとどまった菅直人氏の姿勢 24 27 21
原発をめぐる政府内の見解の不一致 36 37 36
内紛を続ける与党 38 40 37
政府・与党を批判する野党の対応 33 33 33
その他 2 2 2
◆震災に対する政治の対応を見て、国家を運営する仕組みを改める必要があると思いますか。
ある 85 84 85
ない 13 14 12
◇<「ある」と答えた方に>どのような点を改めるべきだと思いますか。(いくつでも)
国のリーダーの選び方 63 62 65
国会議員の選び方 44 46 43
政党の人材育成システム 28 27 29
中央官僚の人材育成システム 29 30 28
地方自治体の人材育成システム 17 16 18
中央省庁間の役割分担 31 34 28
中央と地方の行政の役割分担 36 36 36
議院内閣制 14 16 12
都道府県・市町村に分けた現在の地方自治制度 20 20 20
憲法改正の賛否に限っている現在の国民投票制度 17 19 15
その他 2 3 2
◆参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」により、被災地の復旧・復興に向けた意思決定が遅れています。憲法は、国会を衆院と参院で構成すると定めていますが、参院の権限を弱めるために憲法を改正することに、賛成ですか、反対ですか。
賛成 45 44 46
反対 46 51 40
◆強力なリーダーシップを持った政治指導者の出現を期待しますか。
期待する 71 71 72
期待しない 8 10 7
どちらともいえない 20 19 20
◆東京に大地震など災害が起きた場合に備え、首都機能を補う「副首都」の必要性を訴える意見があります。副首都を立地するとしたら、どこが適当と思いますか。
北海道 6 6 6
東北 3 3 2
首都圏を除く関東 18 18 18
東海 9 11 7
関西 43 41 44
九州 5 5 5
その他の地区 2 3 2
必要ない 10 11 10
◆今年の夏は福島第1原発の事故や原発の運転再開中止などにより電力が不足し「節電」が奨励されました。「生活程度を維持するために、電力の供給を増やすべきだ」という意見と、「生活程度は低くなっても、電力の消費を少なくすべきだ」という意見のどちらに賛成ですか。
生活程度を維持するために、電力の供給を増やすべきだ 32 38 27
生活程度は低くなっても、電力の消費を少なくすべきだ 65 60 70
◆日本の原子力発電を、今後、どうすべきだと思いますか。
今ある原発の運転と、新設も進める 6 8 5
数は増やさずに運転を続ける 20 21 19
危険性の高いものから運転を停止し、少しずつ数を減らす 60 56 63
できるだけ早くすべて停止する 12 13 11
◆イタリアは今年6月、原子力発電再開の是非を問う国民投票を実施しました。日本でも原子力発電の運転に関して国民投票を実施すべきだと思いますか、思いませんか。
実施すべきだ 65 62 68
実施する必要はない 31 36 26
◆原発が建てられている多くの自治体は地方にありますが、発電された電力は主に都市部で消費されています。あなたはこのことを知っていましたか。
福島第1原発の事故の前から知っていた 43 56 31
福島第1原発の事故の後に知った 36 28 42
知らない 20 15 25

 (注)数字は%、小数点以下四捨五入。無回答は省略。

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《調査の方法》

 9月2〜4日の3日間、層別2段階無作為抽出で選んだ、東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島3県を除く全国285地点の20歳以上(9月30日現在)の男女4378人を対象に面接調査した。回答者2413人、回答率55%。

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