10人の子どもに甲状腺機能の変化

ちょっと衝撃的なニュース。NPO団体が福島の子ども130人を対象におこなった調査で、10人の子どもに甲状腺機能の変化が見つかったという。現状では病気とはいえない水準だというのが少し安心なところだが、親御さんにとっては心配で限りないことだろう。

もちろん、この機能変化と福島第1原発事故との因果関係を立証することはできない。しかし、何の関係もないということも証明できない。100ミリシーベルトの放射線を浴びて発癌率が0.5%高まったとしても、癌になった一人一人と福島原発事故との因果関係は証明できない。100ミリシーベルト以上被曝しても癌を発症しない人もいるし、50ミリシーベルトでも癌になる人もいる。「確率的影響」とはそういう意味だ。

しかし、もし自分の子どもに異常が見つかれば、親としては、そんな統計学的な理屈ではすまない。「もっと早く、遠くへ避難すればよかったのでは」「食べる物には気をつけていたのに」と悩んだり悔やんだりすることは限りない。その意味で、その苦痛は明らかに東京電力原発事故が引き起こすものだ。

もっと大規模に、20km、30km以内だったか、被曝線量○○ミリシーベルト以上か、避難地域だったかどうかなどで線引きをせずに、福島県中の子どもたちを対象に、甲状腺その他の異常が生じていないかどうか徹底した健康調査をおこない、長期にわたって継続的な健康管理をおこなわなくてはならないだろう。その中には、すでに避難した子どももいるし、これからだって避難する子どももいるだろう。そうでなくても5年、10年とたてば引っ越す家族もあるだろう。そういうケースも含めて、継続的な健康調査と健康管理をすすめるにはどうすればよいのか。国の責任でしっかりとした体制を早くつくってほしい。

10人の甲状腺機能に変化 福島の子130人健康調査:信濃毎日新聞

10人の甲状腺機能に変化 福島の子130人健康調査

[信濃毎日新聞 10月04日]

 認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と信大病院(ともに松本市)が、福島県内の子ども130人を対象に今夏行った健康調査で、10人(7.7%)の甲状腺機能に変化がみられ、経過観察が必要と診断されたことが3日、分かった。福島第1原発事故との関連性は明確ではない。旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の被災地では事故から数年後に小児甲状腺がんが急増しており、JCFは今後も継続的に検査が受けられるよう支援していく方針だ。
 調査は原発事故から逃れて茅野市に短期滞在していた子どものうち希望者を対象に7月28日、8月4、18、25日に実施。130人は73家族で生後6ヵ月〜16歳(平均年齢7.2歳)。医師の問診と血液検査、尿検査を受けた。
 甲状腺は成長に関するホルモンをつくる。今回の調査で1人が甲状腺ホルモンが基準値を下回り、7人が甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った。甲状腺機能低下症と診断された例はなかった。信大病院の中山佳子小児科外来医長は「現時点では病気とは言えないが、経過観察の必要があるので、再検査を受けるように伝えた」としている。
 ほかに、2人の男児(3歳と8歳)が、甲状腺がんを発症した人の腫瘍マーカーにも使われる「サイログロブリン」の血中濃度が基準値をやや上回った。サイログロブリンは甲状腺ホルモンの合成に必要なタンパク質。甲状腺の腫瘍が産生したり、甲状腺の炎症で甲状腺組織が破壊されたりすることで血中濃度が高くなるが、健康な人の血液中にも微量存在する。
 原発事故で放出された放射性物質のうち、放射性ヨウ素は、甲状腺が甲状腺ホルモンを合成する際にヨウ素を使うため、人体に取り込まれると甲状腺に蓄積、甲状腺がんや機能低下症を引き起こす。
 JCFの鎌田実理事長(諏訪中央病院名誉院長)は「いろいろ意見はあるが、被ばくの可能性は捨てきれないと思う。継続してフォローしていくのはもちろん、福島の新たな希望者がいれば、健康調査の枠を広げるつもりだ」と話している。

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