ホントはアメリカに訂正など求めてないのでは?

野田首相が「すべての物品及びサービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せる」と発言したかどうか、という問題。すでにTwitterではつぶやきましたが、あらためて指摘しておきます。

首相、TPP発言巡る米の発表「訂正求めた」:日本経済新聞

今日、野田首相は、国会で「米国側に事実確認をした際に訂正した方がよいとは言った」と答弁。これは事実で、間違いないとしましょう。他方で、藤村官房長官は「訂正までは求めるものではない」と述べています。もし実際にアメリカ側に訂正を求めていれば、官房長官がこんな発言をするもの変なもの。

実際に日本政府はアメリカ政府に訂正を求めたのか、求めなかったのか? 真実は1つ。さて、答えはどっちでしょう。

すべての物品自由化? 日米会談、米発表資料に訂正要求:朝日新聞

そこで、気になるのがこの↑「朝日新聞」の記事。

この記事を読むと、「日本側は『発表内容が事実と異なる』と米側に説明を要求」したと書かれてはいますが、米側に訂正を求めたとは書かれていません。で、アメリカ側の説明を聞いた日本政府は、落としどころをどうするか「米側と協議した上で」、日本側の責任で「訂正資料を発表」したのだとしたら、どうでしょうか。こう考えると、朝日の記事も事実通りだし、国会での野田首相の答弁も事実、「訂正までは求めるものではない」という藤村官房長官の発言もウソではない、ということになります。

そもそも、アメリカ政府に「訂正」を求める勇気が、わが日本政府にあるのかどうか。

「訂正を求めたほうがよい」と「訂正を求めた」。よく似ているが、とんでもなく違うということです。

首相、TPP発言巡る米の発表「訂正求めた」

[日本経済新聞 2011/11/16 13:41]

 野田佳彦首相は16日午前の参院予算委員会で、日米首脳会談での環太平洋経済連携協定(TPP)に関する自らの発言をめぐり日米間で発表が食い違ったことについて「米国側に事実確認をした際に訂正した方がよいとは言った」と述べ、米国に訂正を求めていたことを明らかにした。
 米国は会談後、首相が「すべての物品とサービスを交渉のテーブルにのせる」と説明したと発表、日本側は発言を否定したが「訂正までは求めるものではない」(藤村修官房長官)としていた。
 公明党の木庭健太郎氏への答弁。米国は発表を訂正しないとの姿勢を変えていない。

すべての物品自由化? 日米会談、米発表資料に訂正要求

[asahi.com 2011年11月14日13時33分]

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では例外なき貿易自由化について協議すると、野田佳彦首相が約束した――。12日の日米首脳会談で、野田首相がオバマ米大統領にこんな発言をしたと米ホワイトハウスが発表し、日本側の指摘で訂正する一幕があった。
 会談直後に米側が発表した資料には「大統領は、野田首相が『すべての物品及びサービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せる』と発言したことを歓迎する」とあった。日本国内にはTPP参加で、主要農産物の関税撤廃や保険診療の崩壊への懸念が根強い。それだけに、首相がいきなり柔軟姿勢を示した印象を与える内容だった。
 驚いた日本側は「発表内容が事実と異なる」と米側に説明を要求し、米側と協議した上で日本側が訂正資料を発表。それによると、米側は「日本側がこれまでに表明した基本方針や対外説明をふまえ、米側において解釈したものであり、会談でそのような発言はなかった」と説明したという。
 菅前政権が昨年11月に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」では、「センシティブ品目(重要品目)について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象(とする)」としている。早くも米側が揺さぶりをかけた形だが、外務省は「深読みすべきではない」(幹部)と沈静化に躍起だ。(ホノルル=土佐茂生)

〔11/25 追記〕
その後も野田首相は「事務方から訂正を求めた」と言っています。恐らく、上記、「朝日新聞」の記事でいうところの「『発表内容が事実と異なる』と米側に説明を要求」というのが、それにあたるものと思われます。しかし、それはあくまで「米側に説明を要求」する程度のもの(事務方からでは、それ以上は不可能)だったと考えるのが妥当でしょう。

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