日ロ領土問題にどう臨むか

プーチン首相が、領土問題の最終的解決に意欲を見せたというニュースが流れ、藤村官房長官が「期待」を表明したことについて、ちょっとつぶやきました。

プーチン首相 領土問題に意欲 NHKニュース

  • 「期待」などと浮かれたことを言っていると完全に足をすくわれるぞ。国際的に通用する、領土返還の論拠をきちんと構築しなければ太刀打ちできない。”北方領土:プーチン氏発言、政府内に広がる「期待」” – 毎日新聞 http://t.co/JVwZnMDn posted at 22:17:07
  • ロシア側は、ヤルタ密約で千島列島はソ連に引き渡されたのだ、という論拠がある。これは、密約とは言え、米英がお墨付きを与えたもので、国際的には千島列島をソ連が占拠する法的根拠として十分通用する。 posted at 22:55:34
  • それにたいして、「国後・択捉は一度も外国領土になったことがない」というのは、日本国内では通用するかもしれないが、国際的には領土返還の論拠にはならない。歯舞・色丹については、「地形的にも千島列島ではないから、ソ連の占拠には根拠がない」と言うことは十分な根拠がある。 posted at 22:58:04
  • 歴史的にふり返ると、日本とロシア帝国の国境は、何度かの交渉を経て、明治8(1875)年の「千島・樺太交換条約」で、日露雑居の地とされた樺太にたいする日本の権利を放棄して、代わりに千島列島全体が日本領となった。これが平和的に確定された日ロ国境。 posted at 23:01:04
  • そのあと南樺太を領有したのは日露戦争によるもの。従って第二次大戦の結果、日本は放棄し、ソ連に返還されたのは当然の措置。しかし、千島列島は日本が戦争で手に入れた領土ではない。にもかかわらず、ヤルタ密約ではソ連への引き渡しが決められた。だから同密約でも南樺太とは別扱いになっている。 posted at 23:03:49
  • 第二次世界大戦では、連合国は「領土不拡大」の原則を掲げた。ヤルタ密約はこの原則に反するもの。ヤルタ密約で、南樺太は「返還」となっているのにたいして、千島列島は「引き渡し」になっている。米英もソ連も、千島引き渡しが「領土不拡大」に反することは分かって、取り引きしたのだ。 posted at 23:09:03
  • だから、日本が世界に向かって、日本の領土返還要求にはこんな正当な根拠があるんだということをアピールするためには、このヤルタ密約でのソ連への千島「引き渡し」取り決めの不当性を訴えなくては。そして、「引き渡し」条項を破棄して、千島列島を日本に返還せよと訴えることだ。 posted at 23:13:04
  • 千島全島の返還なんて絵空事のように思えるかもしれないが、「南千島は千島にあらず」といってロシアに返還を要求する方がよほど絵空事。サンフランシスコ講和会議では、日本政府も、国後・択捉が千島に含まれていることを認めている。 posted at 23:18:48
  • 日本政府が「国後・択捉は放棄した千島列島に含まれない」と言い出したのは1956年のこと。講和会議の席では認めたことを、後になって違うと言い出しても、それは国際的には通用しない。日本政府の見解を支持しているのはアメリカぐらい。これでは、ロシアと領土交渉をすすめる足場にはならない。 posted at 23:24:16
  • 領土交渉は、情に訴えたり、経済援助をちらつかせても解決しない。自国の主張の国際法的な根拠を鮮明にして、真正面から堂々と返還要求の正当性を訴えることが一番の早道。そこをはっきりさせないと、プーチンが本気で「領土問題を解決しよう」と言い出したら、たちまに日本政府は押し切られるぞ。 posted at 23:28:32
  • プーチンは交渉相手としては相当タフ。しかもロシア側にしてみれば、日本との交渉が実らなくても、そのまま占拠し続ければいいだけ。しかし、日本側からみれば、恐らくこれが最後の交渉チャンス。そのときに、日本政府がまっとうな論拠を何ももっていないことが一番の気がかり。 posted at 23:31:38
  • しかも、もし日本政府がロシアとの領土問題の解決に成功すれば、日本はきちんとした国際法上の根拠にもとづいて議論を進める国だということになり、韓国や中国との間でもまっとうな領土問題解決交渉をすすめる可能性が開けるのではないだろうか。そういう大事なチャンスだと思うのだが。 posted at 23:35:38

つぶやかなかった問題を1つつけ加えると、こんどの発言は、大統領選挙を前にしたブラフという可能性があります。ロシア国内向けに、偉大なロシア領土を守る力強い候補者として自身を売り込むための発言かもしれない、ということです。だから、これで日本が調子に乗って「国後、択捉も返せ」と言い出すと、まんまとプーチン圧勝に手を貸すことになるだけです。

プーチン首相 領土問題に意欲

[NHKニュース 3月2日 18時55分]

 今月4日のロシア大統領選挙を前に、最有力候補のプーチン首相は、一部の外国メディアと会見し、北方領土問題について「日ロ双方が受け入れ可能な形で決着し、この問題に終止符を打ちたい」と述べ、大統領への復帰後に日本との領土問題を解決することに意欲を示しました。
 ロシアのプーチン首相は、大統領への復帰を目指す選挙を前に1日、モスクワ郊外で外国メディアの代表と会見しました。この中で、プーチン首相は、日ロ間で懸案となっている北方領土問題について、「双方が受け入れ可能な形で決着し、この問題に終止符を打ちたい」と述べ、大統領へ復帰したあと領土問題を解決することに意欲を示しました。
 そのうえでロシアが中国との間でおよそ40年かけて国境を画定させたことを引き合いに出して、「経済交流を活発化させて領土問題が2次的な課題になれば、双方が妥協しやすくなる」と述べ、経済関係の強化を優先させるべきだとの考えを強調しました。
 さらに、プーチン首相は、両国が批准した1956年の「日ソ共同宣言」に言及し、「平和条約を締結したあと、色丹島と歯舞群島を引き渡すとあるが、そのほかの領土要求はない」と述べ、ロシアとして2島以外の引き渡しは難しいとする考えを示唆しました。
 藤村官房長官は、記者会見で、「プーチン首相の発言は、日ロ関係における領土問題の重要性を指摘し、その解決に意欲を示したものとして期待をしている。領土問題の中身は、両国間で静かな環境のもとで協議をしていくのが政府の姿勢であり、両国間のこれまでの諸合意、および諸文書、それに法と正義の原則に基づいて問題解決を図っていきたい」と述べました。

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