富裕税で日本は3兆円以上の増収効果

3%の富裕税による増収効果(ILO「世界労働レポート2011」)

3%の富裕税による増収効果(ILO「世界労働レポート2011」)

ILOの「世界労働レポート2011」World of Work Report 2011を見ていて、こんなグラフを発見しました。3%の富裕税による税収効果(2010年、単位10億ドル)です。

これによると、日本の場合は税率3%で年間4470億ドル、今日のレートで換算すれば約3兆7000億円の増収が見込めるというのです。3.7兆円といえば、消費税1.5%分ぐらいに相当します。財政再建のために増税は避けられないというなら、消費税増税の前に、まずこの程度のことは考えてほしいものです。

同書には次のように書かれています。

 個人所得税は個人の富ないし資産は考慮に入れていない。富裕税の導入――あるいは同税がすでに存在している場合の税率の小幅引き上げ――は、政府にとって大幅な税収を生み出すことがわかっている。例えば、データの示すところによれば、家計のうち最富裕10%層が世界の富の70%以上を所有しており(Davies他、2010)。これに3%の富裕税を一時的に付加すれば(ヨーロッパにおける最近の提案のように)、2010年に世界全体で歳入が4兆ドル増加するだろう。G20だけに限定しても3.5兆ドルに達し、そのうち相当な部分はアメリカで生み出される(図5.21〔上グラフのこと〕)。この追加的な歳入はほとんど悪い雇用効果なしに、債務削減に甚大なインパクトがあるだろう。アメリカ1.2兆ドル(これに対して公的債務9兆ドル)、インドネシア380億ドル(同184億ドル)、フランス2,580億ドル(同1.8兆ドル)などとなっている。さらに、富裕税は累進的なので、適切な再分配手段として機能し得るだろう。
 それにもかかわらず、富裕税のある国は非常に少ない。フランス、インド、ノルウェー、スイスでは富に一種の税金が付加されているが、国によって大きく異なる。ごく最近では、ハンガリーが2010年に富裕税を導入し、スペインも再導入を計画している。これよりずっと多数の諸国はそのような税金をほとんど廃止している。これには以下の国々が含まれる:オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ギリシア、アイスランド、イタリア、スウェーデン(Ristea and Trandafir, 2010)。(同書127〜128ページ)

同書では、「金融取引税」(FTT)についても、次のように指摘されています。

0.05%の一般的なFTTを世界経済全体向けに導入したとすれば、名目の世界GDPの1.1%に相当する税収が得られる。北アメリカとヨーロッパでは税収はもっと多く、GDPの1.5〜1.8%に達するであろう。(同書129ページ)

日本の場合がどうなるかは書かれていませんが、北アメリカやヨーロッパ並みの税収が期待できるとすれば、7兆円程度の税収になります。

同書では、一般的な金融取引税を実施する根拠を次のように指摘しています。

 金融取引税(FTT)実施の背後には経済的に二重の論拠がある。第1に、株式や商品の市場における過度の短期的な投機――それが価格の乱高下をもたらす――とたたかうのに役立つだろう。第2に、潜在的な税収は巨額であろうから、政府としては比較的低い率で膨大な収入を上げることができるだろう。加えて、比較的少数の主体に対する課税のため、管理が非常に容易であろう。(同前)

つまり、投機の規制にも役立つし、税収は巨額で、影響を受ける人は少なく、管理もしやすい、というのです。

ILO「世界労働レポート2011」英文はこちら↓からどうぞ。

World of Work Report 2011: Making Markets Work for Jobs

邦訳は、田村勝省訳で、発売・一灯社、発行・オーム社、定価本体2,500円(税別)で発売されています。

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