日本経済新聞が報じた、政府の示した2030年時点での原発依存度0%、15%、20〜25%という選択肢について、産業界では0%や15%を師事するところはなく、最低でも20〜25%、あるいはもっとそれ以上ないと生産や雇用に大打撃を受ける、という記事↓。
実はもとになっているのは、日本経団連が13日に発表したこちらのアンケート↓。(PDFファイルが開きます)
で、これを読んでみると、まず驚いたのは、アンケートを送付したのは135団体で、回答を寄せたのはわずか33団体しかなかったという事実。産業界あげて0%や15%ではとんでもないことになると言っているのかと思いきや、実は、それは一部のことだったのです。
しかも、中身を見ていくと、アンケートそのものに慶応大学・野村准教授による生産と雇用への「影響分析」なる資料がつけられていて、要するに、原発依存度が0%、15%だとこんなに大変なことになると予測されているが、お前のところの業界は大丈夫か? という調査になっているのです。
この「影響分析」なるものは、どういう仮定を置いて、こういう結果を導いたのか、まったく示されておらず、検証のしようもありません。原発をゼロにするとなれば、代替エネルギー分野や省エネ・節電技術の開発等、新しい産業の広がりも当然予想されますが、そういうものが入っているのか入っていないのかも不明で、ただ、原発依存度0%だと、生産への影響が紙・パルプでマイナス13.9%、化学マイナス13.0%、石炭製品マイナス11%、石油製品マイナス11%という数字が恐ろしげに並べられているだけ。
しかし、よくよく見ると、原発依存度25%の場合でも、紙・パルプはマイナス9.1%だし、化学はマイナス8.4%で、原発ゼロになったためにマイナスになるのは4.5〜4.6%程度。石炭製品にいたっては、原発依存度25%のほうがマイナス11.1%と落ち込みはひどくなっています(エネルギーを原子力に頼れば、石炭が売れなくなるのは当たり前だけど)。つまり、野村准教授の「分析」で明らかになった影響のかなりの部分は、実は原発依存度とは関係ない要因によるもの? ということになります。
しかも、このアンケートは、業界団体や地方経済団体を相手におこなわれたもの。もし企業を対象にアンケートをおこなっていれば、当然、再生エネルギーに商機を見いだす企業や、省エネ・節電技術に期待する企業など、反応はさまざまだったに違いありません。
日本経団連の鳴り物入りのアンケートの正体は、まあ、こんなもんです。
「原発ゼロ」支持なし 経団連33団体
[日本経済新聞 2012/8/12 23:26]
経団連は中長期のエネルギー政策について、33の業界団体や地方経済団体を対象に緊急調査を実施した。政府が示した2030年時点の原発依存度を「0%」「15%」「20〜25%」とする3つの選択肢に対しては、「0%」「15%」を「望ましい」と答える団体は一つもなかった。
「20〜25%」を望ましいと答えた団体は全体の38%だった。国民生活や経済への影響が大きいなどの理由で「いずれも適当でない」とする回答も38%あった。
3つの選択肢で再生可能エネルギーが最低でも25%以上必要になっている点には「妥当ではない」が76%で、「妥当」の24%を大きく上回った。生産や雇用、設備投資への影響では、いずれの選択肢でも減少するとの回答が大半だった。特に原発依存度「0%」の場合の雇用は96%の団体が減少すると答えた。
調査は7月上中旬に実施。33団体のうち20団体が製造業だった。