JR東海、「出勤遅延未遂」で責められた駅員が自殺

JR東海で、入社2年目の駅員が、上司から定時1時間前の出勤を命じられ、20分前に出社したら「出勤遅延未遂」と言われて、1週間にわたって勤務を外され「反省」を求められたそうだ。

20分前に出社しているのに、「出勤遅延未遂」で懲罰とは! あまりにひどい。

<はたらく>始業前出勤 強制か心掛けか 「出勤遅延未遂」責められた駅員が自殺:東京新聞

かつてJR西日本の脱線転覆事故で、懲罰的な「日勤教育」のことが問題になりましたが、こちらもやってることはまったく同じ。20分前に出社しているのに、1週間にわたって「勤務」から外して反省をせまるなんて、まともな企業のやることではありません。

企業は労働者に「時間厳守」をいうのに、その企業が時間を守ってないではないか!という指摘はまさにそのとおり。

そもそも、この記事でも指摘されているように、制服への着替えなど仕事を始めるための準備の時間や、朝礼、朝の打ち合わせなどは立派な「就業時間」。1時間前に出勤していなければならなかったのであれば、その1時間分の給料をJR東海は払わなければなりません。

しかし、そんなことより大事なことは、自殺した駅員のお父さんが言われているように、まさにこれは「パワハラ」の犠牲。「いじめ」殺人事件です。労働基準監督署はきっちり調査して、厳しい指導をおこなっていただきたいと思います。

<はたらく>始業前出勤 強制か心掛けか 「出勤遅延未遂」責められた駅員が自殺

[東京新聞 2013年4月5日]

 「朝活」ブームで、早朝から一日のスタートを切る人も多い。だが、それが仕事絡みで上司の指示に基づくなら、時間外労働として扱われ、労働基準法の制約を受けるのが筋だ。始業前出勤はあくまで自主的な心掛けか、それとも事実上の強制か。はざまで苦しんだ駅員だった男性のケースを追った。 (三浦耕喜)

 今年1月17日。滋賀県内の山林で、21歳の男性が自ら命を絶った姿で見つかった。男性はJR東海に入社して2年。駅員だった男性は寮から姿を消し、家族や友人が行方を捜していたのだ。
 家族が上司から聞いた説明で、経緯が浮かび上がってきた。男性は以前、始業時間に遅刻したことから、定時より一時間前に出勤するよう「奨励」されていたのだ。
 失踪する数日前、男性は定時の20分前に出勤した。だが上司は、1時間前に出勤しなかったことを理由に、「出勤遅延未遂」と指摘。理由を明らかにするように、プライベートを含めて、前日からの行動記録を提出するよう求めた。
 その提出期限は男性の休日だったが、職場に来て提出するよう約束させた。しかし、男性は期限に現れず、行方が分からなくなった。
 以前に遅刻した際、男性は1週間にわたって勤務を外され、「反省」を迫られる経験をしている。失踪の前日、近所のホームセンターで男性はロープを買っていたことが、見つかったレシートで分かった。男性の父親(55)は「息子が遭ったのは明らかないじめであり、パワハラだ。遅刻未遂とは、遅刻していない意味のはず。なぜ自殺に追い込まれるまで責められなければならなかったのか。会社は明らかにするべきだ」と話す。

     ◇

 始業前に余裕を持って出勤するのは、一般的には仕事をスムーズに運ぶ上で良いこととされる。だが仕事に密接に関わることは本来、労働時間に含まれる。例えば制服や作業着に着替える時間。これを争った大手造船会社の勤務をめぐる裁判では2000年3月、着替え時間も労働時間に含まれると最高裁が判断した。
 判断の基準は「労働者の行為が、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否か」だ。朝礼や打ち合わせなど、上司が仕事の方針や手順を示し、それに参加しないと仕事上、本人の不利益になる場合は「指揮命令下」に当てはまる。
 では、始業前に有志で勉強会を開く「朝活」はどうか。その場合、本人の自由意思で参加している限り、労働時間には入らない。だが、その「朝活」を上司が奨励し、昇進や給与、待遇を判断する材料となる場合は、「指揮命令下」である疑いは濃くなる。
 会社側が始業前出勤を労働時間と見なさない以上、始業前に出勤しないことを理由に本人の責任を問うことは本来できない。自殺した男性のケースでは、1時間前の出勤「奨励」が事実上、上司の指示に基づく強制だったのかどうか、あくまで「奨励」なら、上司が遅刻の「未遂」をただしたことが正当だったのかどうか、が問題となる。
 労働法制に詳しい労働弁護団の鵜飼良昭会長は「時間厳守と言いながら、働く者の時間を守っていないのは会社側だ。大幅な定時前出勤を奨励すること自体、法の精神に反している」と指摘する。
 男性の自殺について、JR東海広報部は本紙の取材に対し「当社と遺族との関係なので、コメントはしません」としている。

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