ただいま発売中の『週刊ポスト』7月12日号が、表紙にも「『共産党に1票』は政治への劇薬か悪魔の選択か」の見出しをかかげて、志位委員長のインタビューを含めて特集しています。
記事は前半では、「共産党の地方議員や組織が、党員のためだけでなく広く『市民のため』に地道な政治活動を展開してきたことは確か」「地方議会がオール与党化する中で、共産党が行政チェック機能を果たしてきたことも支持を集めた理由」などと書き、「共産党の10議席は民主党や第3極など『政権と戦わない野党』の数十議席とは“破壊力”が違う」とも指摘してきます。
とはいえ、後半では「一党独裁のイメージ」などと書いて、使い古された共産党攻撃を蒸し返していますが、そこは無視して、同誌に紹介された志位委員長のインタビューを転載しておきます。
直撃60分「志位委員長、党名を変えればもっと支持されると思いませんか?」
今、最も多忙な党首かもしれない。都議選で議席を倍増させた共産党の志位和夫・委員長だ。「取材依頼が殺到している」(党広報部)という“大人気”を、どのように受け止めているのか。
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――都議選での大躍進の理由をどう分析するか。志位 昨年12月の総選挙では、東京の共産党の比例得票は48万票。今回の都議選は投票率が19%近く下がったにもかかわらず、62万票まで戻しました。出口調査では、無党派層の2割が共産党に投票していた。新聞の調査では、アベノミクスに批判的な層の3割から5割が共産党に入れたそうです。従来の支持層だけでなうk、無党派層からも支持をいただいたことは大変に喜ばしいことです。
――それが野党第1党という結果に繋がった。
志位 いえ、もともと共産党は都政では野党第1党ですよ。だって、石原都政・猪瀬都政は「オール与党」ですから(笑い)。野党は我々だけです。
実は国政でも同じことがいえるんです。この10年来、国政は「2大政党による政権選択」といわれ、どちらにも与しない共産党は蚊帳の外に置かれていた。ですが、民主党政権が自公と一緒に消費税増税を決めたように、「2大政党」は同質同根でしかなかったことが明らかになりました。
この1、2年は「第3極」という言葉が持て囃されましたが、実態を見ると、憲法改定やTPP推進など自民党の補完勢力でしかない。大阪市長の発言などもそうなのですが、政策も体質も自民党以上に自民党的。そうしたことがこの短期間で国民の目にはっきりわかるようになり、政党関係の見晴らしが良くなった。本当の対立軸が「自民対共産」であることが浮かび上がってきました。――共産党こそ第2極?
志位 というより「対極」ですね。とはいえ、都議選の得票率は13.6%の第4位です(2位が民主、3位が公明)。参院選での議席拡大のためには、都議選での躍進のおごらず気を引き締めて戦いに臨まなければなりません。党名が変わる政党は信頼されない
――共産党は“第1極”、すなわち政権党を目指しているのか。
志位 もちろんです。ただし単独政権でなく、(連立を組んで)「民主連合政府」をつくろうという方針です。――でも、共産党に投票した無党派層は、共産党政権がどんな国になるかまでは考えていない。
志位 私たちが政権をとった瞬間に日本が共産主義にチェンジすると思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。まずは資本主義の枠内で、日本が抱える2つの歪みを正そうというのが我々の目標です。1つは日米安保条約を廃棄して米国の言いなり政治から脱却すること、もう1つは「ルールなき資本主義」を正すことです。
日米安保をやめるというと「とんでもない」という反論が出てきますが、東アジアから南アジアまでの23カ国の中で、米国と軍事同盟を結んでいるのは日本と韓国だけです。それでも他のアジア諸国はアメリカと友好的な関係を維持、発展させていますからね。
この改革をやり遂げた上で、国民統合で資本主義を乗り越えた未来社会――社会主義・共産主義社会に進む。「利潤第一主義」という資本主義の害悪を除いてこそ、恐慌、貧困と格差、失業、投機マネー、環境破壊などの矛盾も解消する道が開けます。――党の綱領には「生産手段の社会化」を掲げているが、トヨタやパナソニックを国有化するということか。
志位 必ずしも国有化ではないんですよ。それがどういう形態を取るかというのはあらかじめ決められない。主要な生産手段を社会全体の手に移すことが大切であり、その形態は国民合意で決めていく。その際、資本主義の時代に達成された自由と民主主義は、絶対に一つ残らず発展的に受け継いでいくことが大前提なんです。――『週刊ポスト』が共産党政権を批判してもOK?
志位 もちろんです(笑い)。資本主義時代に達成された自由と民主主義は断固として守り発展させることを約束します。――しかし、世界的に共産党は総じて評判が悪い。現に、旧ソ連や中国では言論の自由はありません。
志位 政治面では、ソ連型の体制なんですね。ソ連では憲法の中に「共産党が国を指導する」と書き込んでいました。中国であれベトナム、キューバであれ、そうした内容を書き込んでいる。しかし日本共産党は、特定の政党や世界観を特別扱いしないということを明瞭に掲げています。
解体したソ連は社会主義とは無縁の体制でした。だから我々は、ソ連共産党が解体した時に〈諸手を挙げて歓迎する〉という声明を発表したんです。「共産党政権ができたら一党独裁国家になってしまう」という誤解は、丁寧な説明で解いていかなくてはなりません。教唆のつが国会の中心になったからといって、民主主義を破壊するわけではないのです。――最もわかりやすい説明は、「共産党」の党名を変えることではないか。掲げる政策に共感できても、投票用紙に「共産党」と書くのは抵抗感がある。
志位 共産という言葉は、共同社会を意味するラテン語の「コムニス」に由来しています。それがコミュニティとかコミューンという言葉になった。だから、コミュニティホールやコミュニティーセンターは直訳すれば「共産ホール」「共産センター」(笑い)。決して旧ソ連の体制のことではなく、一般的に受け入れられている言葉なんですよ。
それに政党であるからには、堂々と理想を党名に掲げることが誠実だと思います。どことはいいませんが、コロコロと党名が変わる政党はやはり信頼されませんから。この名前で91年やってきましたし、名前を変えないというのも筋を通す政党としての信頼に繋がっていると思っています。(『週刊ポスト』7月12日号から)