東響第635回定期演奏会

東京交響楽団第635回定期演奏会(2015年11月22日)

東京交響楽団第635回定期演奏会(2015年11月22日)

昨日は、ジョナサン・ノットの指揮で東京交響楽団の定期演奏会を聞いてきました。ピアノはエマニュエル・アックス。とても刺激的で魅力的な演奏会でした。

  • リゲティ:ポエム・サンフォニック-100台のメトロノームのための-
  • J.S.バッハ(ストコフスキー編曲):甘き死よ来たれ BWV478
  • R.シュトラウス:ブルレスケ-ピアノと管弦楽のための-
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第15番 イ長調 op.141

1曲目はリゲティ(1923-2006)が1962年に作曲した作品。副題にあるとおり、ホールに入るとステージに100台のメトロノームが並べられ、開演前から動いていて、バラバラにリズムを刻んでいます。それが時間とともにだんだん止まっていき、最後にすべてのメトロノームが停止するという超実験的な「作品」です。

最初の頃は100台もあると、もうダーー、ダーーっと激しい雨音のように途切れなく聞こえるだけ。お客さんもメトロノームを気にもせず、おしゃべりしたりプログラムやチラシをめくったりしていました。しかし、動いているメトロノームが減ってくると、ダ、ダダダ、ダダ…と脈打ってきます。ステージの照明も暗く落とされて、オケのみなさんが静かに登場するころにはお客さんたちも静まっていきました。速いリズムを刻むメトロノームが遅いメトロノームに追いつき追い越していき、やがてそれが3台、2台となり、最後の1台が止まるとともに、バッハの「甘き死よ来たれ」が始まる…。生から死、脈動から静寂へ。肌が粟立つような見事な演出でした。

続けて、R・シュトラウスの「ブルレスケ」が始まりました(アックスは「甘き死よ来たれ」の演奏中に登場)。アックスの実演を聞くのは初めてですが、「軽妙、風刺的」という意味のタイトルにふさわしい、遊び心いっぱいの楽しい演奏でした。アンコールは、ショパンのワルツ第3番(作品34-2)。アックスはCDを1枚もっているきりですが、実演はCDよりも何倍も魅力的でした。ちょっと注目ですね。

後半はショスタコーヴィチ最後の交響曲。身体のマヒと死への恐怖のなかで書かれた曲で、第1楽章はコミカルな雰囲気が漂いますが、2楽章以降、陰々滅々な曲風となり不気味さが増していきます。そんな曲をノットは、むしろ速めのテンポで明るく?振っていました。しかし、それがかえってショスタコーヴィチのこの曲に込めた不安や恐怖を浮かび上がらせたように思いました。CDも何種類か持っているし、これまで何度か実演を聞くチャンスもありましたが、ノットのような演奏は初めて。素晴らしい解釈だと思いました。

【演奏会情報】東京交響楽団第635回定期演奏会
指揮:ジョナサン・ノット(音楽監督)/ピアノ:エマニュエル・アックス/コンサートマスター:グレブ・ニキティン/会場:サントリーホール/開演:2015年11月22日、午後2時

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