沖縄米軍基地の実態の凄まじさをあらためて考える 『前衛』6月号

『前衛』2009年6月号

日本共産党の雑誌『前衛』6月号が届いたのでさっそく読んでみましたが、巻頭の、伊波洋一・宜野湾市長と赤嶺政賢・共産党衆議院議員の対談は非常に読み応えがありました。

沖縄の米軍基地の実態が赤裸々に語られていて、あらためてその現実の酷さ、凄まじさを感じるとともに、伊波市長が、自治体首長として何ができるか、とことんまで研究して、最大限の努力をされていることがよく分かりました。

1つめは、基地被害の問題。

基地被害の問題は、私もこのブログでいろいろと取り上げてきたつもりですが、米軍にかかわるさまざまな事件・事故が起こる、ということだけではなく、その問題を解決することがどれだけ大変で、自治体にとってどれだけ負担か、ということがよく分かりました。そこに、基地被害という問題の独特の困難さがあると思いました。

たとえば、2002年に、恩名村のキャンプ・シュワブのM2重機関銃から発射された銃弾が名護のパイン畑で農作業中だった男性の近くに打ち込まれるという事件がおきます。ところが米軍は、事件の銃弾と称する写真を示して「これはさび付いているから古いものだ」といって銃弾が飛んでいったことを認めない、あるいは、米軍側は「12、3発撃った」と言っていたが、現場で問い糾してみると、1箱100発以上の弾倉で12、3箱分撃った、つまり1000発以上撃っていた、それを自治体側が問い糾して初めて認めるとか、昨年12月、金武町伊芸地区の実弾射撃訓練の流弾事件でも、「事件がおきた日に演習はなかった」と言って、日本の警察の調査も受け入れない、などなど。ともかく、事件・事故の事実関係を調べるだけでも大変なのです。

それから、キャンプ瑞慶覧での住宅撤去工事で、米軍がアスベスト対処をせずに解体工事を行った問題。市は、読谷村にある最終処分場までいって調査して、アスベストであることを突き止めたのですが、米軍は防衛施設局にも知らせずに向自を強行したそうです。

伊波市長は、「米軍自身に規則があり、本来ならば米軍が守らなければならないはずのその規則すら、日本においては米軍が守らなくてもよい仕組みが成り立っている」、「普天間基地も米軍の基準・規則に即して考えるならば、本来こんなところに基地があってはならないはず」、「金武町では、住宅地域からわずか数百メートルしか離れていないところで実弾演習が行われ、弾が飛んでくる状況がある」が「こういうことは米軍の国内ルールでは、あり得ない話」、「このように米軍が定めている安全基準や JEGS と呼ばれる在日米軍基地に適用されるべき日本環境管理基準がまったく有名無実化していますし、さらに日米の合意も有名無実化している」と、本当に憤懣やる方なしといった感じです。

そして、市長は、こうした問題の解決にも「十何年もかかっている」「一つの問題を解決、あるいは是正しようとするのに、たいへんなエネルギーが必要」と述べ、その大もとには、「米軍には日本に、沖縄にいてもらいたいという気持ちがありあり」という「国の政治の姿勢」を問題にしています。

それとも関連して、伊波市長が、「結局、基地の移転がすすみ、集約が行われると集約されたところほど基地機能は強化される」「集約すればするほど、その地域においては〔基地〕被害が何倍にもなってゆく」と指摘されていることが、米軍基地再編問題を考える上で非常に重要なキーポイントになる問題だと思いました。

これは僕はまったく知らなかったのですが、普天間は、1972年の沖縄返還当時はまだヘリ基地でもなく、今のような大きな滑走路がある基地でもなかったのです。それが、那覇空港基地(現在の那覇空港)の返還、ハンビ飛行場(ヘリコプター)の返還で、普天間に巨大な滑走路が作られ、ヘリ部隊が移転してきて、現在のような巨大な基地になってしまった。

伊波さんが、辺野古への移転について、辺野古の「負荷は高くなってしまいます」と懸念されているのもよく分かりました。

2つめは、伊波市長が、自治体首長という立場をよくわきまえたうえで、徹底的に調べ、徹底的に考え抜いて、米軍基地を沖縄外に移転する可能性を追求されていることです。

伊波氏は、独自の調査もふまえて、「米軍基地再編はアメリカの戦略にもとづいたもの」であることを浮かび上がらせています。

伊波氏の指摘によれば、沖縄の米海兵隊基地は訓練施設としても手狭で、米軍としては、海兵隊の主要部隊はグアムに移転させる計画です。さらに米国は北マリアナ連邦と、テニアン島などの広大な地域を租借する契約を結んでいるそうで、「そこに大きな合同演習場ができ、おそらく在沖部隊の主要な部隊がそのうち移ることになるはず」なのだそうです。

だから、伊波氏の言い方をつかえば、米軍基地再編は「沖縄の基地負担軽減に結びつく取り決めをすすめることのできる重要な機会」になるはずなのです。

それにもかかわらず、「なぜ、負担軽減に結びつかないまま、多額なおカネを支払うだけのこの『グアム移転協定』を承認しようとするのか」――伊波市長の批判は、かりに日米安保条約を認める立場にたつとしても、正面から受け止めてきちんと応えなければならない重い指摘だと思います。

伊波市長は、自治体首長として発言されていますので、そこでは直接日米安保条約を否定するようなことは発言されていません。それでも、沖縄にいる海兵隊は、日本を守るためにいるわけではないし、海兵隊が沖縄でやっている訓練は沖縄以外の場所でもいくらでもできる、さらには、米軍が海兵隊の実戦部隊を沖縄からグアムなどに移そうとしているのではないか、というところまで調べて、そうした米軍の動きをうまく利用して、沖縄の基地負担をきちんと軽減させるように、なぜ日本政府は取り組まないのか、と訴えておられます。自治体首長としては、最大限ぎりぎりの主張だと思いました。

いずれにしても、非常に読み応えのある対談でした。

ただ残念なのは、最初に編集部なりのリードをつけて、対談の中心テーマなどを簡潔に紹介して、もっと読者をひきつける工夫をしてほしかったということ。また、普天間基地やキャンプ瑞慶覧、キャンプ・シュワブ、金武町の実弾射撃訓練施設などなど、地図をつけてほしかったと思いました。

『前衛』のサイトはこちら↓。同誌は、一般書店でも入手可です。
「前衛」2009年6月号・特集 憲法を守り生かす

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