「えひめ丸」追悼の曲

都響第693回定期演奏会Bシリーズ(2010年1月26日)

一昨日(26日)、仕事の関係であきらめていたのですが、予想外に早く仕事が終わったので、無事聴きに行くことができました。

都響第693回定期演奏会Bシリーズ

  • 松平頼則:「ダンス・サクレとダンス・フィナル」より ダンス・サクレ(振鉾)
  • 廣瀬量平:尺八と管弦楽のための協奏曲
  • 三木稔:管弦楽のための「春秋の譜」
  • ドナルド・ウォマック:After 尺八と二十弦箏のための協奏曲(日本初演)

指揮:小泉和裕/尺八:坂田誠山/箏:木村玲子/ソロ・コンサートマスター:矢部達哉/会場:サントリーホール/開演:2010年1月26日 午後7時

別宮貞雄氏のプロデュースによる「日本管弦楽の名曲とその源流」シリーズの第10回。ということで、この日は尺八や箏の登場する和風なプログラム。その中で、どうしても聴きたかったのは、最後に演奏された曲。ハワイ在住のアメリカ人が、2001年2月9日に起きた「えひめ丸」事件の犠牲者を追悼するためにつくった作品です。

この日は、作曲者のドナルド・ウォマック氏も出席し、プレトークにも登場。「えひめ丸」事件の犠牲者が9人だったことにちなみ、「9」という数が1つのモチーフになっています。

冒頭、大太鼓やティンパニの激しい打撃音が9回、サントリーホールも割れんとばかりに響きわたります。犠牲者9人を象徴するだけでなく、潜水艦との突然の衝突の衝撃を表わしているようで、激しい音が炸裂するたびに、ぎゅっと心臓をわしづかみにされるような気分です。

それから、音楽は、なにか急かされるようなリズムに。突然の衝撃から、一刻も早くデッキに駆け上がらなければ…という乗組員の気持ち、遠く離れた日本で事故の知らせを聞き、一刻も早く現地へとはやる家族のみなさんの気持ち、そんな気持ちが渦巻くような音楽です。

そうしたオーケストラの演奏のあいだに、尺八と箏の演奏が、これも9回、挟み込まれています。前半にも尺八などをつかった曲を聴きましたが、この作品が一番日本風の尺八と箏の演奏でした。う〜む、どうしてアメリカ人がここまで純日本風にやれるんだ…?

ちなみに、作曲者のウォマック氏は、プレトークで「誰かが作曲すべきだと思ったが、誰もやらないので自分が作曲した」と語っておられましたが、犠牲者への哀悼の気持ちとともに、再びこのような事故を起こしてはならないという思いを強く感じました。作品の完成は2005年、2006年に大友直人氏の指揮、ホノルル交響楽団の演奏で初演。今回の都響の演奏が日本初演でした。

「えひめ丸」事件のことを思いながら聴くと、作曲者が作品に込めた思いが非常によく伝わってきます。ぜひともCD化と、愛媛、宇和島での演奏を実現してほしいと思います。

「えひめ丸」追悼の曲、26日に東京で日本初演…米国人作品 : 読売新聞
えひめ丸事故忘れない 米作曲家が追悼協奏曲 : 愛媛新聞

「えひめ丸」追悼の曲、26日に東京で日本初演…米国人作品

[2010年1月25日 読売新聞]

 米ハワイ沖で2001年2月、愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が米原潜に衝突され、実習生ら9人が犠牲となった事故を追悼するオーケストラ曲が26日、東京のサントリーホールで日本初演される。曲を作ったハワイ在住の作曲家ドナルド・ウォマックさん(43)=写真=は「決して忘れてはいけない悲劇」と話している。
 曲のタイトルは「After」。尺八と二十絃箏をまじえた約35分の協奏曲。小泉和裕さんの指揮により、東京都交響楽団の定期演奏会で演奏される。
 ウォマックさんはニュースで痛ましい事故を知り、地元のホノルル交響楽団から新作の委嘱を受けた2004年、自ら追悼作品を提案。1年かけて作曲し、06年、ホノルルで同楽団により初演された。この時指揮をした大友直人さんは、「とても心のこもった作品」と語る。
 曲は破裂音で始まり、邦楽器とオーケストラがぶつかり合い、最後は融合し癒やしをもたらす。犠牲者9人にささげるため、第一主題のテーマを九つの音で構成するなど、曲を通じ「9」という数字を重視し、追悼の気持ちを表している。
 ウォマックさんは生存者の「決して事故を忘れないでほしい」という言葉に心打たれ、「犠牲者が感じた恐怖感、家族や友人の悲しみ、怒りなど、すべての人間に通じる悲劇を描いた」という。

えひめ丸事故忘れない 米作曲家が追悼協奏曲

[愛媛新聞 2010年01月27日]

 事故に巻き込まれたすべての人に癒やしを――。2001年2月にハワイ沖で米原潜に衝突され沈没した宇和島水産高校実習船えひめ丸の事故を追悼する協奏曲が26日、東京・赤坂のサントリーホールで観客約1600人を前に披露された。
 協奏曲を作ったのはハワイ在住の米国人ドナルド・ウォマックさん(43)。ハワイ大の学部長も務めた作曲家で「この悲劇的な事故を作品にして、わたしたち全員が事故を記憶し続けなければいけない」と05年に「After(アフター)」を作曲。日本では今回が初演で、東京都交響楽団(都響)の企画で実現した。
 演奏前に曲の解説があり、ウォマックさんは「事故をテーマに人の複雑な感情を描こうとした。苦しい経験をした人が前向きに生きていける癒やしになったらいい」と曲に込めた思いを説明した。
 約35分にわたる作品はオーケストラに和楽器の尺八と琴が加わった演奏。事故の犠牲になった9人にささげるため、和楽器のソロパートを9カ所入れるなど数字の9を意識した構成で、時に激しく時に静かな音色が会場を包んだ。

ちなみに、Afterというタイトルは、「事件後の経験」や「感情」を意味していて、作品では「恐怖、混沌、そして混乱」から、やがて「はじめの恐怖が遠のいた後」の「感情的な反応を整理していく複雑な道のり」が表わされています。(プログラムノーツから)

えっと、前半の3曲ですが、半分寝てました。(^_^;)

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