ああ、男はなんと情けない… 二期会オペラ「オテロ」

二期会オペラ「オテロ」(ベルディ作曲)

二期会オペラ「オテロ」(ベルディ作曲)

上野の文化会館で、二期会オペラ「オテロ」(ジュゼッペ・ヴェルディ作曲)を見て(聴いて?)きました。

座席は、4階Rの最後列、足下にバーがある“止まり木席”です。舞台をはるか下に見下ろすため、後ろの座席がかなり高くしてあって、足が届きません…。それで、足下にバー(止まり木)があって、そこに足を置いて眺める、という訳です。おかげで舞台はなんとか見渡せますが、ピットのオケは半分ほど隠れて見えません。(^_^;)

お話は、後輩のカッシオが副官に任命されたことを恨んだイアーゴの言葉にまんまと騙されて、ムーア人の将軍オテロが貞淑な妻デズデモナの不貞を疑い殺害にいたる、という悲劇。

どうして男は、女性の愛を素直に信用できないんでしょうねぇ…。

第4幕でデズデモナが「柳の歌」「アヴェ・マリア」を歌い、さらにオテロに最後の命乞いをするところでは、こちらも引き込まれて、思わずぐぐぐ??っとこみ上げてきます。デズデモナ役の大山亜紀子さんは、声もよく通って、本当に大熱演でした。オテロ役の福井敬氏もさすがの貫禄でしたが、後半やや声が疲れたようになったのが悔やまれます。

それにしても、ヴェルディのオペラって、ほんとに荒唐無稽です。オテロは、なんであんなにあっさりイアーゴの言葉を信じてしまうのか? オテロ自身、イアーゴを疑っていたのにねぇ。イアーゴにしても、カッシオを陥れるならともかく、将軍オテロを破滅させたのでは、自分の出世だってかなわないだろうに。デズデモナの侍女のエミーリアにしても、もっと早く夫イアーゴの所行を話していれば、あんなことにはならなかったはず、等々。ま、そういうところを乗り越えてしまうのがヴェルディのオペラの醍醐味なんですが…。 (^_^;)

白井晃氏の演出は、非常に簡素。最近よくあるように、ステージ上にしつらえられた斜めの舞台以外には、ほとんど作り物らしい作り物はなし。赤い布が、1幕冒頭で凱旋する船の帆になったり、オテロの嫉妬に揺らめく心を表わすために使われていました。ただ、舞台装置が簡素な割に、幕間の転換に時間がかかってしまった印象。3幕では、モノリスが登場。証明を動かして、モノリスの影をぐるりと回して、オテロがまんまとイアーゴの計略にはまって、デズデモナの不貞を確信してしまう心の動きが印象的に演出されていました。

もう一つの疑問は、なんでベネツィアの将軍がムーア人なのか? プログラムでも、岸純信氏がこの問題を取り上げていましたが、もすこし広く、シェークスピアの時代にイギリスで「ムーア人」がどんなイメージで受容されていたのか、調べてみるとおもしろそうです。ということで、とりあえず、シェークスピアの「オセロ」を読むところから始めてみますかね?

オペラ公演ラインアップ「オテロ」 – 東京二期会

公演は本日が初日。21日まであと3回あります。明日と21日は別キャストです。

東京二期会「オテロ」 モノトーンの舞台に渦巻く疑念と策謀 : MSN産経ニュース

さて、個人的には、本日からコンサート3連荘。明日は、オペラシティで、尾高忠明×東フィル×ブルックナー交響曲第9番、明後日は、サントリーで、レイフ・セゲルスタム×読響×マーラー交響曲第7番。がんばりたいと思います。(^_^;)

【キャスト】(2/17)
オテロ:福井敬/デズデモナ:大山亜紀子/イアーゴ:大島幾雄/エミーリア:金子美香/カッシオ:小原啓楼

指揮:ロベルト・リッツィ・ブリニョーリ/演奏:東京都交響楽団/演出:白井晃/会場:東京文化会館/開演:2010年2月17日 午後6時半?

【追記】

いつもブログを拝読させていただいている東条碵夫氏が、20日(土)の公演の感想を書かれています(キャストは17日と同じ)。

東条碩夫のコンサート日記 2・20(土)東京二期会 ヴェルディ:「オテロ」

実は、ラストでイアーゴが舞台袖に登場したのは僕も気になっていたのですが、なにせ4階席からなので、イアーゴの所作までよく分からず、なんだろうなぁ? と思っていました。東条氏の記事を読んで、初めてその演出の意味が分かったのですが、それでもやっぱり、「言わずもがな」のことをわざわざ付け足すような印象はぬぐえませんでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください