バンクーバー・オリンピックのボブスレーで、日本女子チームのソリの装飾が話題になっています。和服の女性、桜や富士など「純和風」の題材を、レトロモダン風なイラストで、実際、ほんとうにきれいです。
ところで、今日の「読売」夕刊の記事によると、この見事なソリは本体だけで約600万円。実は桧野真奈美選手の“私物“なのだそうです。統括競技団体である日本ボブスレー・リュージュ連盟は資金がなくてソリを買えず、桧野選手が自分で200社を回って資金集めをして、それで2年前に買ったものだそうです。
オリンピック代表選手が、そこまでやらなければ器材さえ買えないとは…。しかも、強豪国では数千万円のソリが当たり前なのに、桧野選手のソリはドイツの中古品。スポーツ振興策の貧しさに唖然としてしまいます。
着物女性や桜、桧野自前の美しすぎるソリ : 読売新聞
五輪ボブスレー:桧野・浅津組のソリが人気…「美しい」 : 毎日新聞
このデコレーションも、桧野選手のアイデアで、数十万円かかったとか。桧野選手がインタビューに答えて「これがきっかけで、ボブスレーに関心を持ってもらえれば」と話していましたが、それはホントに切実な願いだったのですね。
着物女性や桜、桧野自前の美しすぎるソリ
[2010年2月26日04時47分 読売新聞]
バンクーバー五輪は24日、ボブスレー女子2人乗り3、4回戦が行われ、日本の桧野真奈美(北斗病院)、浅津このみ(海野ビル)組は16位だった。カナダ勢が1、2位だった。
着物姿の女性や桜を描いた日本のソリは「美しい」と評判だ。欧米から取材が相次ぎ、山本忠宏監督が急きょ、英文の資料を作って配ったほど。操作するパイロットの桧野は「日本らしいソリにしたかった。注目されてうれしい」と喜ぶ。
このソリの所有者は桧野本人だ。2年前に約600万円でドイツから購入した。統括団体の日本ボブスレー・リュージュ連盟には費用がない。選手が新しいソリで五輪に出るためには、自力で調達するしかなかった。
旧型ソリで初出場したトリノ大会は、16チーム中15位。強豪国は1台数千万円のソリを使う。資金力が成績に直結することを痛感した桧野は、スポンサーを探して200社以上回り、ソリを買う資金を集めた。「世界とあまり差がない道具で戦いたい」という一心からだった。
いつも逆風にさらされてきた。女子が採用されたのは2002年ソルトレーク大会。日本も大陸枠で出場権を得たが、当時の日本オリンピック委員会は「五輪では戦えない」として、女子の派遣を見送った。桧野は、女子のレースが行われたのと同じ日に、以前から痛めていた右ひざの手術を受けた。テレビで熱戦を見ながら「絶対にトリノに出る」と決意した。
今回も、五輪出場権を得る直前に、行政刷新会議の事業仕分けで「マイナーな競技まで支援する必要があるのか」と名指しされた。
「ソルトレークは昔の話だけど、あのとき五輪に行けなかったから今がある。でも、意地でやっているわけじゃない。ボブスレーに魅力があるから続けてきた」
30歳の思いが詰まった美しいソリは結局、16位。厳しい戦いが続いたが、観客は拍手で挑戦をたたえた。(岡田卓史)
五輪ボブスレー:桧野・浅津組のソリが人気…「美しい」
[毎日jp スポーツ&エンタメ 2010年2月24日]
【ボブスレー】女子2人乗りの3回目でゴールする桧野(手前)、浅津チーム=カナダ・ウィスラーのスライディングセンターで2010年2月24日、手塚耕一郎撮影
バンクーバー冬季五輪第12日の23日(日本時間24日)、ボブスレーはウィスラーで女子2人乗りの1、2回戦を行い、カナダAのハンフリーズ、モイズ組が首位に立った。日本勢は、桧野真奈美(北斗病院)、浅津このみ(海野ビル)組が18位に入った。24日(日本時間25日)に後半の3、4回戦を行い、4回の合計タイムで順位を決める。
黒いボディーに着物の女性や富士山をあしらった桧野・浅津組のソリが人気だ。桧野が「日本らしさを出したい」とデザインを考えて、大会前に遠征先のドイツで数十万円かけて塗装した。海外勢は「美しい」と絶賛。写真撮影を求められたり、チームには塗装方法などについての問い合わせが10件以上も寄せられた。思わぬ反響に桧野は「びっくりしています」と喜ぶ。レースでは2回戦で中盤の連続カーブで危うく横転しそうになりながらも何とかゴール。出場21組のうち18位の成績に桧野は「ソリ(の人気)に負けないような滑りをしたい」と3回戦に向けて意気込んでいた。