埼玉県警がつくった警察官募集のポスターに書かれた『守りたい、「ひと」がいる。』という文句が、陸上自衛隊が商標登録したものとよく似ているという理由で回収されたというニュースが流れています。
陸上自衛隊が2001年に商標登録したというのは、どうやら『守りたい、「人」がいる。』というもののようですが、はたして、これは商標として登録が認められるようなものなんでしょうか?
商標法は、次のようなものは「商標」として登録できないとしています。
第3条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
- その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
- その商品又は役務について慣用されている商標
- その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
- ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
- 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
- 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
「守りたい人がいる」というのは、「守りたい」も「人」も「いる」も、ごく普通の言葉であり、しかもごく普通に用いられる表現です。きわめて簡単で、ありふれた表現ともいえます。また、人を守る職業はいろいろあるので、「守りたい人がいる」と言われても、それが自衛隊の「役務」であるとは認識できないのではないでしょうか。
警察官募集ポスター回収
[NHKさいたま放送局 2010/3/18]
埼玉県警察本部のことしの警察官募集のポスターなどに、陸上自衛隊が商標登録をしているものとよく似た表現が使われていると外部から指摘を受けたことから、警察は掲示してあるポスターなどおよそ2万枚の回収を始めました。
ポスターの製作などにはおよそ600万円がかかっていたということです。
このポスターなどは埼玉県警察本部が平成22年度の警察官の募集のために作ったものです。
この中の『守りたい、「ひと」がいる。』という表現が、陸上自衛隊が2001年に商標登録をしたものとよく似ていると外部から指摘され、埼玉県警察本部は、商標権を侵害している恐れがあるとして17日から配布したポスターなどの回収を始めました。
ポスターなどは今月上旬から埼玉県内の警察施設のほか、都内や神奈川、千葉を走るJRの電車の中づりにも使われ、ポスターとチラシあわせて2万枚あまりの製作や掲示の費用としておよそ600万円かかっていたということです。埼玉県警察本部は、「漢字がひらがなになっているなど完全に同じ文言ではないが、法令違反の懸念がある以上、使うわけにはいかないと判断した」としています。