松岡和子さんの翻訳によるシェイクスピアの『オセロー』。
去年、二期会のオペラで見たときは、オセローがなんであんなにあっさりとイアゴーの嘘を信じてしまうのか、とあきれてしまいましたが、あらためてシェイクスピアの原作を読んでみると、オセローがまんまとだまされてしまうという筋書きはその通りだけれど、「ムーア人」にたいする差別の問題や、女性の描き方、それに松岡さんが解説で指摘されているような、デズデモーナとオセローの「年の差」の問題などなど、いろいろ奥が深いなぁ〜と感心させられました。
シェイクスピアといえば小田島雄志氏の翻訳が有名ですが、オイラのように「読み物」として挑戦しようという人間には、あまりに達意の訳文すぎて、とても読みこなせません。その点、松岡さんの翻訳は、芝居の台本としてはもちろん、小説のようにも読めるので、取っつきやすかったです。
去年、NHKで何年か前にロンドンのグローブ座でやった「オセロー」の公演を放送していましたが、オープンな舞台で、1階のお客さんは立ち見で、舞台に頬杖をついて見ているお客さんもいるほど。俳優は、その観客のあいだをぬって登場していました。そして、お芝居は、もうがんがん台詞が飛び交っていて、「古典劇」といった身構えた雰囲気は微塵もありません。なるほど、これがシェイクスピアなんだな〜 と思って、すっかり引き込まれました。
さて、途中で挫折した『ヘンリー6世』にもう一度挑戦してみますかねぇ。
【書誌情報】
著者:シェイクスピア/訳者:松岡和子(まつおか・かずこ)/出版:筑摩書房(ちくま文庫、シェイクスピア全集13)/発行:2006年/定価:本体880円+税/ISBN4-480-03313-0