自民党・公明党が、菅内閣にたいする内閣不信任案を衆議院に提出した。
今回の内閣不信任案にたいして、世論は、一方では、震災でも原発事故でも菅内閣の対応を不満に思い、もっとスピーディーな、もっと被災者の心に寄り添い、原発の不安にこたえてくれる支援や対応を望んでいる。そして、「はたして、菅内閣にそれができるのか」という疑問も持っている。しかし他方で、自民党・公明党や、民主党小沢グループの動きを、「いまはそんなことをやっている場合じゃないだろう」と強い怒りにもにた気持ちで眺めている。
原発事故にかんしていえば、そもそも「安全神話」に浸りきって、原子力発電所の震災や津波対策、あるいは事故が起きたときの避難対策を怠ってきたのは、歴代の自民党・公明党内閣だ。それを棚に上げて、やみくもに「倒閣」に持ち込もうとする動き(これを永田町では「政局にする」という)は、無責任のきわみとしか言いようがない。
だからこそ、世論調査をみても、「不信任案」には賛成、反対が拮抗しているのだ。
そんななか、共産党が本日、急遽記者会見をして、不信任案の採決には棄権するとの態度を発表した。先日、「自公と立場は違うが、菅内閣を信任できないのは明らか」として賛成の態度を表明したが、正直言って、それで「いま、そんなことをやっている場合か」という有権者の不満(怒り?)にこたえられるのだろうかと心配だった。もとより菅内閣を信任できないことは明らかだが、被災者や避難者をそっちのけにして「政局」に持ち込もうという自民党・公明党の側にも大義や道理があるわけでない。
そういう場合には、棄権とか退場とか、いろんな手があるじゃないかと思っていたので、棄権の方針は大歓迎だ。
そもそも、自民党・公明党などだけでは、内閣不信任案を提出しても、あっさり否決されるだけ。それが、これだけの「政局」騒動になっているのは、民主党小沢グループの、与党なのに不信任案に賛成するという動きによる。では、なぜ小沢一郎氏がここまで菅首相「不信任」にこだわるのか? 陸山会3億円不正献金事件の裁判がすすみ、小沢氏は徐々に追い込まれつつあるが、それにたいして、政権を自派に取り戻すことで、なんとしても我が身を守りたいというのが本音ではないだろうか。だから、ますますもって、今回の「不信任」騒動にはなんの道理もない。
自民党が本当に、震災復興、原発事故対策のためにこういうことをやりたい、というのがあれば、そしてそれが道理にかなったものであれば、内閣不信任案を可決したあと、賛成した各党が、震災救援・原発事故対処に限って、一致してその実現にとりくむということも可能だ。しかし、谷垣総裁は、志位委員長に質問されて、菅内閣が総辞職したあとについて「確たる展望を持っていない」としか答えられなかった。それは、自民党が、震災復興、原発事故対策でこうしたことをやるんだ、というものがない証拠でもある。にもかかわらず、やみくもに倒閣をめざすのは、無責任と言われても仕方がない。
内閣不信任決議案 衆議院に提出
[NHKニュース 6月1日 19時27分
自民党・公明党・たちあがれ日本の3党は、菅総理大臣の下では東日本大震災からの復旧・復興や原発事故の収束は実現できないなどとして、菅内閣に対する不信任決議案を衆議院に提出しました。こうしたなか、民主党の小沢元代表は、自民党などが提出した菅内閣に対する不信任決議案に賛成する意向を固めました。
自民党の谷垣総裁と公明党の山口代表は、菅総理大臣との党首討論を終えたあと、国会内で会談しました。そして、菅総理大臣の下では東日本大震災からの復旧・復興や原発事故の収束は実現できないなどとして、不信任決議案を1日夕方に提出することを正式に決めました。このあと、谷垣総裁らは共産党、社民党、たちあがれ日本と党首会談を行い、決議案の共同提出を呼びかけたのに対し、たちあがれ日本は加わる考えを示しましたが、共産党と社民党は共同提出には加わらない考えを伝えました。これを受けて、自民党・公明党・たちあがれ日本の3党の幹事長らは、横路衆議院議長に不信任決議案を提出しました。内閣不信任決議案は、衆議院議院運営委員会の理事会で取り扱いが協議され、2日の衆議院本会議で採決が行われる見通しです。
記者会見した自民党の谷垣総裁は、「菅総理大臣は『信なくば立たず』の状態であり、各方面から信頼のない状況では、人の気持ちは結集できない」と述べました。また、公明党の山口代表は、党の両院議員総会であいさつし、「『この時期に、政局に走るとはどういうことだ』という懸念があるかもしれないが、被災者の思いに応えて力を結集させるためには、菅総理大臣に辞めていただくのがいちばんだと確信している」と述べました。
こうしたなか、小沢元代表に近い鈴木総務副大臣と三井国土交通副大臣は、菅総理大臣の東日本大震災への対応などから、内閣不信任決議案に反対できないとして、副大臣を辞任する意向を固めました。そして、こうした動きを踏まえ、民主党の小沢元代表は、自民党などが提出した菅内閣に対する不信任決議案に賛成する意向を固めました。議員会館の事務所でみずからに近い議員と会談した小沢氏は、「仲間の副大臣や政務官も辞任の動きをしてくれているし、当選1回の衆議院議員の仲間も一致団結してくれているようで心強い」と述べています。
不信任案採決は棄権=賛成方針を転換―共産
[時事通信 2011/06/01-21:06]
共産党の志位和夫委員長は1日夜、国会内で緊急に記者会見し、内閣不信任決議案に賛成するとしていた当初方針を変え、採決を棄権すると明らかにした。
志位氏は、方針転換の理由として、同日夕の野党党首会談で自民党の谷垣禎一総裁が菅内閣が総辞職した場合の政権の在り方について「確たる展望を持っていない」と発言したことに触れ、「自民、公明両党の党略的で無責任な動きに手を貸すことになるので賛成できない」と説明した。
先日の日本経済新聞の世論調査の結果は、こちら↓。これをみても、「不信任案」にたいする世論は割れている。
「首相交代すべき」70% 「できるだけ早く」21%:日本経済新聞
原発対応「評価せず」74%に上昇 本社世論調査 :日本経済新聞
「首相交代すべき」70% 「できるだけ早く」21%
[日本経済新聞 2011/5/29 22:00]
本社世論調査 政権、厳しい局面続く
菅直人内閣の支持率が低迷している。日本経済新聞社の世論調査では、首相は「できるだけ早く交代すべきだ」は21%だったが、「震災・原発対応が一段落したら交代すべきだ」の49%を含めると7割がいずれかの時点での交代を望んでいる。東日本大震災や福島第1原発事故などへの指導力を疑問視する声が強い。政権の命運がかかる「6月政局」へ首相は週明けから正念場を迎える。
自民、公明両党は来月上旬にも内閣不信任決議案を衆院に提出する方針。小沢一郎元代表の支持勢力を中心に、民主党内で同調者がどれだけ広がるかが焦点になる。首相は29日、仏ドービルでの主要8カ国(G8)首脳会議などから帰国すると、公邸到着の約40分後には枝野幸男官房長官らと週明け以降の国会対応などを巡って協議した。
首相を取り巻く情勢は厳しい。4月の前回調査では「すぐに交代すべきだ」が17%、「震災・原発対応が一段落したら交代すべきだ」が52%だった。その後、原発事故収束に向けた工程表などが発表されたが、今回の調査でも首相が「交代する必要はない」との回答は22%にとどまった。
民主党支持層でも「交代する必要はない」は42%と多数派ではない。「震災・原発対応が一段落したら」(48%)と「できる限り早く」(7%)を合わせると、交代を求める声が半数を超える。
震災復興・被災者支援への政府対応を53%が「評価しない」と回答。福島第1原発への対応は74%が「評価しない」とした。菅内閣の不支持率に反映している構図で、不支持の理由(複数回答)では「指導力がない」が前回調査から3ポイント上昇し73%だった。日本経済新聞が調査を実施した歴代政権で最多を更新した。
民主党内のごたごたも首相の不人気につながっている。指導力不足に次いで「政府や党の運営の仕方が悪い」(49%)、「安定感がない」(46%)を挙げる声が多い。
首相の即時辞任論が広がっているわけでもない。それは民主党支持層に限らない。首相交代について「できる限り早く」と答えた人は無党派層で19%。内閣不信任案を提出する自民党の支持層でも30%にとどまり、「一段落したら」(54%)を下回った。
菅首相の交代を望む声が強いのは事実。ただ震災復興や原発事故の収束の見通しが立たないなかで、政権トップの辞任のタイミングは慎重に判断すべきだと考える有権者が多いことがうかがえる。一方、菅内閣を支持する理由(同)では「人柄が信頼できる」(28%)、「民主党中心の内閣だから」(26%)などが目立つが、いずれも前回調査の数字を下回った。
民主党参院幹部は29日、党内議員の一部が内閣不信任案に同調する動きについて「どちらがいい、どちらが悪いと言ってる場合ではない」と震災・原発対応に党が結束してあたるべきだと強調。首相が小沢元代表ら民主党代表経験者に会談を呼びかける意向を表明したことには「小沢元代表や鳩山由紀夫前首相に協力してほしいということだろう」と指摘する。主な質問と回答
(単位%。カッコ内は前回調査)
【菅内閣を支持するか】
支持する 28 (27)
支持しない 62 (67)
いえない・わからない 9 (7)
【支持または好意を持つ政党は】
民主党 26 (24)
自民党 35 (34)
公明党 5 (4)
みんなの党 6 (7)
共産党 3 (3)
社民党 1 (1)
国民新党 0 (0)
たちあがれ日本 0 (0)
新党改革 0 (0)
新党日本 0 (0)
その他の政党 1 (1)
支持政党なし 16 (18)
いえない・わからない 6 (6)
(注)四捨五入したため合計が100%にならない場合がある
原発対応「評価せず」74%に上昇 本社世論調査
[日本経済新聞 2011/5/29 22:00]
内閣支持、横ばいの28%
日本経済新聞社とテレビ東京が27〜29日に共同で実施した世論調査で、東京電力福島第1原子力発電所の事故への政府の対応について「評価しない」が74%で4月の前回調査から4ポイント上昇した。「評価する」は3ポイント低下し16%だった。内閣不信任決議案をめぐる与野党攻防が激化するなか、菅内閣の支持率は28%と前回から1ポイント増と横ばいで、低い水準が続いている。
原発事故を契機に、原子力から火力など他の電力に移行した場合、コスト上昇で電気料金が上がる可能性について聞くと「受け入れられる」が63%で、「受け入れられない」の30%を上回った。
菅直人首相が静岡県の中部電力浜岡原発の全面停止を要請したことには「評価する」が62%。「評価しない」は25%で首相の判断を評価する声が多かった。国内の原発をめぐっては「減らすべきだ」42%、「現状を維持すべきだ」35%、「すべてなくすべきだ」12%、「増やすべきだ」3%だった。
震災の復興財源を目的とした増税の是非については賛成44%、反対46%と拮抗した。男女で比較すると男性は賛成50%、反対43%と賛成が上回ったのに対し、女性は賛成40%、反対48%と賛否が逆転した。
復興財源に関しては前回調査では「増税」「国債増発」「増税と国債増発の両方」の中から1つ答えてもらい、増税38%、国債13%、両方31%だった。
内閣不支持率は62%で前回から5ポイント下がった。民主党の支持率は2ポイント上昇して26%、自民党は1ポイント上昇の35%で両党の差は9ポイントでわずかに縮まった。みんなの党6%、公明党5%など。「支持政党なし」は16%だった。
調査は日経リサーチが被害が大きかった被災地(岩手、宮城、福島各県の一部地域)を除く全国の成人男女を対象に乱数番号(RDD)方式により電話で実施した。有権者のいる1513世帯から898件の回答を得た。回答率は59.4%。▼被災地の復旧・復興や、被災者支援に関する政府の対応を
評価する 35%
評価しない 53%
▼福島第1原発事故への政府の対応を
評価する 16%
評価しない 74%
▼原子力発電から火力発電などへ移行を進めた場合、電気料金の値上げを
受け入れられる 63%
受け入れられない 30%
▼復興財源としての増税について
賛成だ 44%
反対だ 46%