左=松岡和子訳、シェイクスピア『テンペスト』(ちくま文庫)、右=池上永一『テンペスト』第1巻<春雷>(角川文庫)
松岡和子さん訳の『オセロー』のあとは、『テンペスト』を読み終えました。
ミラノ公国の大公位を奪われ、孤島に追いやられたプロスペローのもとに、嵐で遭難して流れ着いた簒奪者である弟のアントニオ、ナポリ王のアロンゾとその弟セバスチャンら一行。いまこそ12年前の復讐の時が来たる…。
ご存じシェイクスピアの(単独著作としては)最後の戯曲。みずから魔法を修め、嵐を起こし復讐を遂げんとする老いたるミラノ公は、精霊たちをあやつり、アントニオにナポリ王弟を唆せて、かつての自分のように兄を裏切らせようとしたり、一人娘ミランダとナポリ王の息子フェルディナンドとが恋するようにしむけたり、さらには間狂言のようにナポリ王の賄い方と道化のドタバタ騒ぎがあったりと、にくいほどの筋立てと演出です。
しかし、ラスト、プロスペローが復讐の種明かしをするあたりから、なんだか話が急に尻すぼみに…。結局すべては、エピローグの口上のための前座芝居だったのでしょうか?
それはさておき、もう1冊は、池上永一氏の『テンペスト』。仲間由紀恵主演の舞台が話題となり、やはり仲間の主演でNHKのドラマにもなるそうです。それはさておき、19世紀の琉球王朝が舞台だというので、読んでみることにしました。
この時代、琉球王朝は薩摩藩に服属させられながら、その薩摩藩の思惑から、中国にたいしては依然として独立国であるかのように装うことを強いられ、複雑な立場にありました。そして、主人公が「男装の麗人」となれば、なかなかおもしろいものが期待できそうだ、と思ったのですが、50ページほど読んで、投げ出してしまいました。池上氏には申し訳ありませんが、あまりに表現がストレートすぎるというか、お子様向けのライトノベルスのようで、およそ「行間を読む」とか「文章を味わう」といった楽しみがありません。さらに「保護貿易」だの「関税撤廃」だの、およそ19世紀らしからぬ言葉が平気で登場したり、平仮名交じりの候文などというあり得ないものが麗々しく書かれていたりして、僕にはとても耐えられませんでした。
時代は少しさかのぼりますが、同じく琉球王朝を舞台とした陳舜臣氏の『琉球の風』のような作品を期待した僕が浅はかでした。
で、3つめの「テンペスト」は、こちら↓。6月11日公開の映画「テンペスト」です。
原作と違って、主人公が女性(ミラノ大公プロスペラ)に置き換えられていて、それがどんな効果を生むのか、そして、プロスペラの復讐は? 救済は? 結末はどうなるのか、楽しみです。
実を言うと、あらためて原作を読んでみようと思ったのも、先日、映画館で「テンペスト」の予告編を見たから。その『テンペスト』とも読み終わってしまいましたので、次は、『リア王』にとりかかっております。(^_^;)