佐村河内守氏の交響曲第1番《HIROSHIMA》に続いて、こんどは團伊玖磨氏の交響曲第6番《HIROSHIMA》を聴いてみたいと思っていたら、タワーレコードで交響曲全曲集が3,000円で売っていたので、早速買ってきました。
團伊玖磨氏の《HIROSHIMA》を聴いてみようと思ったのは、読響の『月刊オーケストラ』7・8月号の下野竜也氏の一文。
それは、読響正指揮者の下野氏が『月刊オーケストラ』に毎号書かれている「下野シェフの『今月のおすすめ』」。10月の定期演奏会で、團伊玖磨氏の《HIROSHIMA》をとりあげるということで、「過ちは繰返させません。過ちは繰返しません」と題して、概略こんなふうに書かれています。
数年前の8月6日、広島の「平和の夕べ」コンサートで、フォーレの「レクイエム」を指揮している間、ずっと何か上から押しつぶされそうな感覚が続き、鳥肌がずっと立ち続けていた、原爆によって命を奪われた人、被爆直後の地獄絵図を目の前にして、命からがら焼け野原をさまよった方々のことを思うと「息も出来なくなるほど」だったという。
さらに、下野氏は、祖父が出生するときにまだ幼かった父が無邪気に祖父に愛嬌を振りまいていたのをみて、とても切なかったという御祖母様のお話を紹介され、「戦争というものがどういうものか――本当には理解は出来なかったにせよ――子供心に、それはとても悲しいものだという風に感じたのを覚えています」と書かれています。そして、原爆死没者慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という碑文に触れながら、こう書かれています。
『過ちは繰返しませぬから』の主語は誰か? という論争は、机上では理解できます。単なる自虐史観とも言い切れず、その反対側の観点からの言葉とも読めるので、戦勝国、敗戦国それぞれの立場で見方が違ってくることは理解できます。
僕は、その敗戦国で生まれ、その母国は、世界で唯一の被爆国であることを、忘れてはいけないと思っています。戦争はいけない。絶対にいけない。戦争を起こしてしまう指導者達の目には、僕は青臭い理想主義者に映るでしょうが、それでも僕は言い続けます。「戦争はいけない」と。
「自虐史観」だとか「青臭い理想主義」なと、いろいろ弁解がましきことを書かれているのは、1つのオーケストラを預かる身として、スポンサーとなっている企業方面、補助金をとりあつかう官庁方面その他への、いやそもそも最大スポンサーの某大手新聞の手前、それでもなお「戦争はいけない」と言い続けるための、下野さん流の”配慮”なのだろうかというのは、僕の深読みのしすぎでしょうか。
いずれにせよ、これだけの思いを込めて、下野氏が團伊玖磨氏の《HIROSIMA》をとりあげられるのだから、この夏は、ぜひともじっくり予習をしておきたいと思います。
【CD情報】
収録曲は、團伊玖磨氏の交響曲第1番〜第6番。指揮は、山田一雄氏(第1番、第2番)、團伊玖磨氏(第3番〜第6番)。オーケストラはウィーン交響楽団。録音は1988〜89年。TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION Vol.9 として2009年12月に再刊されたものです。