本日の「日本経済新聞」のコラム「大機小機」が、「左翼はどこへ行った」という題して、「資本主義がこれほど欠陥をさらしているのに、その批判者の左翼、すなわち社会主義勢力は、なぜか振るわない」と論じている。
ソ連の崩壊で社会主義勢力が困難を強いられていることは事実だが、「大機小機」のようにソ連を社会主義の代表扱いする見地からは、社会主義の展望が見えてこない。
しかし、このコラムで大事なことは、いまや「日本経済新聞」でさえ左翼を必要としているという事実だ。それだけ、資本主義が次々と欠陥をさらけだしている、ということでもある。
あともう1つ。ソ連社会の実態は、マルクスが考えたような社会主義社会でもなかったし、そこにむかう途上の社会でもなかった。この事実をしっかりと見据えるところから、21世紀の社会主義の理論と運動は始まる。そして、日本共産党は、ソ連による干渉や、ソ連の大国主義・覇権主義とのたたかいを通じて、自主的に、その結論に到達した。そして、その立場から、いま、科学的社会主義の理論と運動を根本的に刷新しているということ。このような共産党は、残念なことに、日本共産党しかない。
【大機小機】左翼はどこへ行った
[日本経済新聞 2011年12月23日付朝刊]
20年前のクリスマス。ゴルバチョフ・ソ連大統領が辞任し、クレムリンのハンマーとカマを配した赤旗が降ろされ、ソ連が崩壊した。
米国の政治学者フランシス・フクヤマは「歴史の終わり」を著し、民主主義と資本主義の最終的な勝利を宣言し、この先、世界史は退屈になるだろうと予言した。
どっこい、そうはならなかった。3年前のリーマン危機この方、資本主義は、1930年代以来の危機にある。繁盛するのは民主主義なき資本主義、例えば中国だ。経済危機は民主政治の危機にも転化する。ユーロで揺れる欧州で政権交代が相次いだ。
資本主義がこれほど欠陥をさらしているのに、その批判者の左翼、すなわち社会主義勢力は、なぜか振るわない。ギリシャ、イタリア、スペインと続いた政権交代でも左翼に出番はなかった。「失われた20年」の日本でも、左翼政党は低迷している。
「ウォール街を占拠せよ」で始まり世界に広がる反格差デモも「資本主義を倒せ」とか「社会主義革命を」という声はあまり聞こえない。
生産手段の国有化と一党独裁が結びついたソ連・東欧型社会主義の、あまりにも非効率な経済、自由を抑圧した政治の実態が体制崩壊で白日にさらされ、社会主義の魅力を損なったからだろうか。左翼はどこへ行ったのか。
先ごろ来日した欧州のさる国の閣僚の話が、興味深かった。彼が言うには、欧州では左翼、右翼という政治区分は時代遅れで「ローカリスト」と「グローバリスト」という分け方が現実に近いそうだ。「地元主義者」と「地球主義者」とでも訳すべきか。前者は反EU(欧州連合)、反ユーロ、反グローバル化、反移民を唱え、後者はその逆になる、というのだ。
確かにフランス革命期の議会で、議長の左手に急進派、右手に保守派が陣取ったことに始まる左翼、右翼に、いつまでもこだわることもない。日本でも、環太平洋経済連携協定(TPP)への賛否の分布は、右、左では割り切れない。グローバリスト対ローカリストの方が納得する。
ローカリストは、郷土や母国の伝統や歴史にこだわる。だが、歴史をどんどんさかのぼっていくと、アフリカで生まれ、後に世界に散らばった霊長類の1つの種に行き着く。もとは一緒なのだから……と思う筆者はグローバリストなのだろう。(手毬)