書店で偶然見かけたのですが、あの渋谷陽一氏の責任編集と銘うった『SIGHT』なる雑誌が積み上げられていました。キャッチコピーは「リベラルに世界を読む」、そして特集は「小泉靖国参拝で日本は何を失ったか」。もちろん、出版社はロッキング・オン。(定価:税込780円)
第28号ということになっていますが、実際にはリニューアル第1号。
巻頭言というのでしょうか、雑誌の最初に、渋谷陽一氏の一文が掲載されています。同誌に掲載されたニール・ヤングのロングインタビューに触れながら、次のようにリニューアル創刊への思いを書かれています。
雪崩のように保守化する日本の論稿シーン(そんなものがあるか、という議論はまた別にするとして)を見ながら、僕が待っていたのは、既存のリベラル系と思われるメディアの反攻である。しかし、リベラルと思われるメディアは一様に腰の引けた論陣しか張れず、歯切れの悪いメッセージしか出せないでいる。ニール・ヤングは若い世代を待つのを止めたようだが、僕も既存のリベラル系メディアの反攻をただ待つのを止めた。自分の本来の仕事は、優れたサブカル系の出版物を刊行することだと決めていたのだが、下手なりに総合雑誌というジャンルに挑戦することにした。ロッキング・オンを作って35年、初めてサブカル系でない雑誌のスタートである。切り口はシンプルである。常に知的で批評的でありたい、ということだ。別にとりたてて強い思想的な背景があるわけではない。あえて言うなら、ロックに植付けられたラヴ、ピース、そしてフリーという、中学生レベルの思い込みである。それでも、ニール・ヤングよりは5年若いが、、60年代に青春期を過ごした記憶のDNAには、それなりの反権力意識が刻まれているかもしれない。どこまで走れるか分からないが、とりあえず行けるところまで走ってみようと思っている。
ニール・ヤングはこうも語っている。「私は永遠に楽観的だ。変革は明日起きなくても良い。明後日でも良いのだ。結局は人々がこのアルバムを聴いて、何を考えるかはその人次第である。そして私も言いたいことを自由に言える。私たちはこの点を見失っているように見える」。僕も楽観主義には自身がある。ひょっとすると、それだけが武器かもしれない。
僕のようにロックファンでない人間でも、渋谷陽一氏がここまで語ってくれると、こっちまで胸が熱くなってきます。
で、中味をめくっていってみると、けっこう硬派な企画が続いています。
- 小泉外交、5年間の喪失を検証する 特別対談:田中秀征×藤原帰一
- どうしても参拝反対はゆずれない 加藤紘一
- 最悪の日中関係、突破口はどこか。 毛利和子
- 脱小泉外交のシナリオは竹島・独島問題にある 李鐘元
- 小泉経済改革は何が問題だったのか? ――強者への利益誘導でしかなかった構造改革 小野善康
阪大の小野善康氏のインタビューは、「新自由主義」経済学への理論と現実の両面からの徹底批判。けっこう高度な中味にまで踏み込んでいるんだけれども、それが読みやすくまとめられているあたり、SIGHT誌編集部の力量はただものではない!
ロックファンな人も、そうでない人も、とりあえずまずご一読あれ!
はい、sightは、とても魅力的な雑誌でした。視点がpureというか、変にいじけてなくて、あっそっかと。小泉さんの性格によるところが大きいのに、立場が立場だけに、こんなことになって・・といった、感慨を持ちました。何かと暗くなり勝ちなこのごろでしたが、ニールさん渋谷さんに倣って、希望をもって生きてけそうな^^。こういうアソートメント、ぜひ世代を超えて楽しんでいただきたいです!