米軍がヘリ操縦士を賞賛していることについて、「琉球新報」の社説が非常に的確な指摘をしています。
1つは、操縦士が人のいないところへヘリを墜落させようと操縦したというのが本当なのかという問題。後部ローターが落下した段階で、ヘリは操縦不能だったはずと指摘しています(後部ローターが落下すれば、機体がぐるぐる回転してしまい操縦不能になるはず)。
もう1つは、ヘリを墜落させ、住民を危険にさらした責任を棚上げして、乗員を賞賛する無責任さ、傲慢さです。
そもそも、米軍は「墜落」であることさえ認めず、あれは「緊急着陸」「不時着」だったというのです。あれが「緊急着陸」なら、自動車事故も「衝突」ではなく「緊急停止」だったということになるでしょう。社説は最後に、こうした米軍の増長を許しているのは日本政府の姿勢に責任があるとも指摘しています。本当にその通りだと思います。
米軍司令官発言・重大性の認識に欠ける(琉球新報ホームページ – 特集 – 米軍ヘリ沖国大墜落)
2004/08/28社説
米軍司令官発言・重大性の認識に欠ける
事の重大性を全く認識せず、言語道断で、県民をばかにしているとしか思えない。トーマス・ワスコー在日米軍司令官のことである。
26日に東京都内で講演した際、米軍ヘリ沖国大墜落事故について「乗員は墜落すると分かった段階で、被害を最小限にしようと努力した。三人の乗員が制御不能の状況下で、人のいないところに(ヘリを)もっていったという素晴らしい功績があった」などと発言したのだ。
そもそも、機体尾部のローターが飛行途中に脱落した状態では操縦不能になっていたはずだ――と専門家も指摘している。沖縄国際大の墜落地点に、たまたま人がいなかったからこそ、犠牲者を出さずに済んだ。民間人の身体に被害が及ばなかったのは奇跡以外の何ものでもない。
自らの失態で県民、市民の生命を脅かし、恐怖に陥れたことへの反省もなく、乗員を称賛する神経は到底理解できない。身勝手で占領意識丸出しだ。米軍が、こんな感覚で住民地域の上空を飛んでいるかと思うと、背筋が寒くなる。
司令官以下も同じだ。27日に駐日米国大使館で記者に事故の背景説明をした在沖第3海兵遠征軍の担当官は「大学の敷地に緊急着陸した」「不時着した」「大学の施設に触ってしまった」「ビルがちょっと傷を受けてしまったが、中の人たちを安全なところへ避難させた」などと述べていた。驚きである。
墜落し炎上した事故が、どうして「不時着」になるのか。子供でも分かる話だ。ここまで事実とかけ離れた認識を披歴されると、米軍の言うことは一切信用できなくなる。
彼らをこれほどまでに増長させたのは、対米追従で弱腰な日本政府の責任でもある。政府は、ワスコー司令官の発言を黙視せず、直ちに米国政府に抗議すべきだ。
米軍基地の管理・運用体制にとどまらず、司令官の資質まで問われている。このような意識を持つ司令官がトップに座っている限り、事故の危険性は消えず、再発防止など望むべくもない。速やかな更迭を望む。
ピンバック: たまごの距離