対中国ODAの見直しが声高に主張されています。ODAというと、何となく“タダでくれてやる”的なイメージがありますが、無償援助はわずか52億円でODA全体のわずか5%。残り大部分(約967億)は円借款です(※)。
※中国向けODA開始(80年度)から2003年度までの累計3兆3000億円のうち、円借款は3兆472億円にたいし無償援助は1416億円(4.3%)。「毎日」12/14付による。
円借款というのは、お金を“やる”のではなく、低利とはいえ利子を取って資金を“貸す”もの。その資金で、日本企業から物資を購入する場合もあって、その場合は回り回って日本企業の利益にもなるわけです。しかも、谷口誠著『東アジア共同体』(岩波新書)によれば、中国は、この借款をきちんきちんと返しているとのこと(※)。“中国は経済成長したのに、いつまでも日本からODAをもらおうとして、けしからん!”というイメージとは、実は、まったく違っているということです。
※「毎日」12/14付によれば、2003年度は借款967億円にたいして償還額1058億円ということで、差し引きで日本は中国からお金を返してもらっているのです。
対中ODA、数年内に「無償資金」打ち切りへ(読売新聞)
政府は、中国に対する政府開発援助(ODA)について、返済が不要な無償資金協力を数年以内に打ち切る方針を固めた。政府筋が11日、明らかにした。
2006年以降は、新規の案件は認めず、継続中の複数年の事業が完了した時点で中止する案が浮上している。
低利融資の円借款についても、当面は削減を続け、無償資金協力の終了後、一定期間を置いて打ち切り、対中国ODAを完全に中止することを視野に入れている。
政府は今後、中国側と協議しながら削減額などを決める。ODAの段階的な削減は、中国側の反発を和らげる狙いがある。
2003年度の中国に対する無償資金協力は約52億円で、世界で9番目。アジアに限ると、パキスタン、ベトナム、カンボジア、フィリピンに次ぐ額となっている。円借款は約967億円で、インド、インドネシアに次いで3番目に多い。
中国は近年、めざましい経済成長とともに、軍備増強を進めており、日本国内では、「対中ODAは早期にやめるべきだ」との意見が強まっている。政府は、こうした世論を踏まえ、対中ODAを段階的に削減することにした。
政府は、開発途上国に援助を行う目安として、世界銀行の融資指針を参考に、無償資金協力は対象国の1人当たり国内総生産(GDP)が約1400ドル以下、円借款などは同約3000ドル以下としている。
昨年の統計によると、中国は約1090ドルで、数年以内に1400ドルを超えると見られている。2008年に北京五輪を開催する予定で、外務省幹部は「五輪開催は先進国の仲間入りの証しと言える。五輪の前後に、無償協力をやめるのが自然な姿だ」としている。
円借款の今後の進め方としては、発展の遅れた中国内陸部を対象に、環境保全や災害防止、貧困対策などに分野を限定することにより、将来の打ち切りに向けて総額を抑制していく考えだ。[ 2004年12月12日3時1分 ]