24日、防衛庁は、自民党憲法調査会の中谷元・改憲案起草委員会座長の求めに応じて憲法改正案を作成・提出していた陸上自衛隊幹部にたいして口頭注意したことを発表。
「組織的な行為はなく、個人が休日などに作っただけ」「業務時間中に自衛隊のファックスを使ったのが悪いだけ」とのことですが、個人的な関与なしに組織的関与などありえません。二佐(昔で言えば中佐)のこのような政治的発言が許容されるならば、自衛隊員があっちこっちで政治的発言を始めても、それをダメだという歯止めがなくなります。
それに、休日などにやったことだから問題なし、というなら、東京・中央区で休日に選挙のビラ配りした社会保険庁職員を逮捕した事件はどうするの? 勤務時間外の自衛隊員のところへビラを配りに行くのをなぜ禁止するの? 全然理由が通りませんね。政権与党に賛成する政治的行為は許されるが、反対するのは犯罪だ、などという恣意的な基準は許されません。
防衛庁:憲法改正案作成の陸自幹部、口頭注意のみ
防衛庁は24日、陸上自衛隊幹部が憲法改正案を作成し自民党憲法調査会の中谷元・改憲案起草委員会座長(当時)に提出していた問題で、「組織的な行為はなく公務員の憲法順守義務にも抵触していないが、配慮を欠いていた」とする調査結果を発表した。改正案作成は「個人的な行為」と判断、シビリアンコントロール(文民統制)の逸脱はなかったと結論付け、森勉陸上幕僚長が文書を作成した陸上幕僚監部所属の2等陸佐と上司の1等陸佐を口頭で注意した。
調査報告書によると、2佐は10月15日、防衛大出身の中谷氏から電話で憲法改正案の作成を依頼された。2佐は同22日、集団的自衛権行使などを明記した改正案を中谷氏の事務所にファクスで送付。中谷氏は同日の自民党憲法調査会で、この改正案を自分の案として配布したという。
防衛庁は今月5日、調査委員会を陸幕に設置。調査結果に基づき、内局で処分を検討し、職場である陸幕からファクス送信したことが職務専念義務(自衛隊法60条)に抵触したと認定。改正案の作成自体は、休日に自宅で行っていたため「問題はない」と判断した。組織的な関与については、陸自内の聞き取り調査で他人が関与した形跡が認められず、2佐の個人的な行為とした。「自衛隊が組織的に改正案を作成した」との疑念を招いたことに対する「配慮を欠いた行為」(同46条)を直接の口頭注意の理由とした。ただし、2佐が上司である1佐に事情を報告していたため、1佐を監督不行き届きで口頭注意とした。
憲法99条の公務員の憲法順守義務については「改憲を検討したり、主張することで直ちに問題は生じない」と判断。自衛官の政治的行為を禁じた自衛隊法61条については、中谷氏が「個人的勉強のため」と依頼したことなどから、政治的な意図はなかったと結論付けた。【古本陽荘】
■政治関与、歯止め示されず
防衛庁が発表した陸上自衛隊幹部による憲法改正案作成問題の調査報告書は、2等陸佐が「改正案を職場のファクスで送り、組織が関与したとの誤解を与え配慮を欠いた」と形式のみを問題視する内容だった。報告書はシビリアンコントロール(文民統制)の逸脱の恐れはなかったと結論付けたが、同様な事案の再発防止について具体案は示されず、自衛隊法で禁じられている「自衛官の政治関与」の在り方をめぐっては課題が残った。
調査報告書は、文民統制について、防衛出動が国会承認を得ることや、首相が最高指揮権を有することから「制度的に担保されている」と強調した。
しかし、今回の改正案作成問題で浮き彫りになったのは、たとえ個人的な関係であるにせよ、自衛官の意見が政治家に大きな影響力を与えることがあり得ることだ。しかも、改正案は集団的自衛権行使や武力行使という憲法9条の根幹に関わる内容に言及していた。首相が最高指揮官だから、それだけで文民統制が維持できるというほど単純なものではない。
その意味では、今回のケースは、政治家と自衛官との付き合い方を考え直す絶好の契機だったはずだ。しかし、防衛庁は、政治関与の「歯止め」策の基準作りに積極的に乗り出そうとはしなかった。北原巌男官房長は記者会見で、どういう場合を問題とするかについて「ケースバイケース」と答えるのみ。再発防止のため新たなガイドラインを作る用意があるかどうか再三質問されたが、明確に答えることを避けた。
自衛隊が組織的に政治に関与するのはもってのほかだが、自衛官個人であれば、憲法改正問題でも積極的に政治家に意見具申できるという雰囲気が自衛隊内に生まれれば、文民統制は危うくなると言わざるを得ない。【古本陽荘】[毎日新聞 2004年12月24日 23時25分]
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