街娼が並び、それ目当ての男たちが行き来するパリの裏通り、そんなブルー通のアパートに暮らすユダヤ人の少年モモと、その向かいで小さな食料品店を営むトルコ人のイブラヒムとのお話。モモは父親と2人暮らしなのですが、この父親がいったい何の仕事をしているのかよく分からない。ともかく家に帰ってくると、使ってない部屋の灯りを消して回り、モモが音楽を楽しんでいるラジオを切り、楽しみというと本を読むことだけという陰気な親父で、二言目には兄のポポルと比較するのでモモは面白くない。そんなモモが毎日買い物をするのがイブラヒムの店。イブラヒムは、モモが時々商品を万引きしていることに気づいていたが、モモを叱るどころか、やさしく「盗みを続けるなら、うちの店でやってくれ」と言う…。
父親の愛情を知らずに育つモモと、それを温かく見守るイブラヒムとの心の交流が、大人ぶろうとするモモを温かく受け入れるブルー通の娼婦たちや同じアパートの女の子との初恋などをまじえながら、優しく、温かく描かれていきます。そして後半では、2人がイブラヒムの故郷、トルコへ旅立っていきます。
ユダヤ人の少年とイスラム教徒の老人――この2人の心の交流を通して、この映画は「和解」と「寛容」の大切さを伝えてくれます。9.11以後の、とくにアメリカを中心とした世界でのイスラム教にたいする不寛容と排除、パレスチナの地をめぐるユダヤ人とイスラム教徒との対立、さらにトルコのEU加盟をめぐる動き、などなどを思うとき、イブラヒムが示す“すべてを受け入れる姿勢”、そして、モモに注がれる無私の愛情には、本当に心が熱くなります。映画のラストは、凡庸に流れたけれども、エンディングで流れる歌詞に、はっきりとそのメッセージが示されています。
イブラヒムを演じるのは、「アラビアのロレンス」などで有名なオマー・シャリフ。哲人めいた雰囲気を見事に演じています。モモ役のピエール・プーランジェは、これが映画初出演ですが、父親の愛情を知らず、孤独で、同時に大人ぶってみたい年頃の少年を見事に演じています。
恵比寿ガーデンシネマ、今年映画5本目。
【映画情報】監督・脚本:フランソワ・デュペイロン/原作・脚本:エリック=エマニュエル・シュミット/出演:オマー・シャリフ(イブラヒム役)、ヒペール・ブーランジェ(モモ役)/2003年、フランス
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