カナダが、米国がカナダ上空を通過するミサイルを発射する場合、カナダの事前許可が必要だとの考えを示しました。
「防衛」のためのミサイルだと言ってみても、やっぱり領空侵犯は許されないということ。主権国家であるというのは、こういうことなんですよ。
領空通過の事前許可要求、ミサイル防衛構想拒否のカナダ(CNN.co.jp)
領空通過の事前許可要求、ミサイル防衛構想拒否のカナダ
トロント――米国のミサイル防衛構想への不参加を発表したカナダのマーティン首相は25日、米国がカナダ上空を通過するミサイルを発射する場合、カナダの事前許可が必要との考えを示した。記者団に、「我々は主権国家であり、許可を得ずに領空を侵犯してはいけない」と語った。AP通信が伝えた。
カナダの駐米大使が、構想不参加に関連し、「事実上、主権を放棄しており、米国がミサイル迎撃の決定を下した場合、かやの外に置かれる」旨の談話に触れて、述べた。
これに対し、野党は、ミサイルが現実に飛んできた場合、米国がカナダに許可を求める時間的余裕があると考えるのは馬鹿げている、と首相を批判している。
ミサイル防衛構想をめぐっては、首相は当初は支持を表明。しかし、世論調査で国民の多数が反対しているとの結果が出ると、姿勢を転換した。調査結果では、カナダ国民の多くは、ミサイル防衛構想は軍拡競争につながりかねないとしている
米国とカナダは共同の防空組織である北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)を持っている。 [2005.02.26 Web posted at:16:49 JST – CNN/AP]
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はじめまして。Blogを見て気になりましたのでTBしました。
今回の件で、カナダが「領空通過を認めない」と言ったこと自体は、直接意味を成さないのではないでしょうか?迎撃ミサイルがカナダ上空に達するときに、十分高度があれば、そこは「領空」ではなくて「宇宙」ということが出来るからです。それでも、「上空通過を許さない」という姿勢を示そうとしても、ミサイル迎撃システムを持たないカナダは、迎撃ミサイルを打ち落とすことも出来ません。そしてカナダが、ミサイル防衛システムに協力しなくても、米国はそれをカバーすることは出来るでしょうし。
では、何故このような発表になったか? それは、現在のカナダは、国防上の脅威が存在しないので、
・現時点では、米国の迎撃システムに頼らなくても済むこと。
・独断専行傾向の強い米国に、追従姿勢を取ることが、カナダの対外イメージ・国益を損なうこと。
ということが大きいと思います。特に後者の政治的アピールが。
ただ、日本の場合は、既に北朝鮮のミサイルによる恫喝を受けている以上、主権を守る意味でもミサイル防衛システムは必要です。ただ、これを独力で開発・配備することは現実的ではないでしょう
もし、日本が独力で十分な質・量の国防装備を開発・配備できるレベルまで、国防費を増やせば日本は、他国の干渉を受けず、主権は保たれるかも知れません。ただ「国防費の大幅な増大を許容できるか?」という問題も生じますし、日本の国防費の増大が、周辺国に「軍拡」の印象を与えかねません。これにより緊張が高まる可能性を考えると、あまり現実的とは言えません。
日本として現実的なのは、日本独力の軍事力はある程度のレベルに抑え、周辺国にあまり脅威を与えず、尚且つ防衛においては、必要に応じ米国の軍事力・軍事技術の支援を受け、北朝鮮・中国の恫喝を受けなくても済む(主権を守れる)ようにすることだと思います。もちろん、米国からの干渉が入ってくるので、デメリットもありますが、メリット・デメリットのバランスを考えれば、やむを得ないと思います。
>Yamamoto56さん
問題は、日本がアメリカとの同盟ということでこれまでやってきたこと、およびいまやろうとしていることが、かえって日本周辺の緊張のタネになっていないか、ということではないでしょうか。主権国家のあり方として、日本の安全保障を考えるなら、北朝鮮や中国をはじめから「脅威」とみなさない立場で、日本の進路を考えるべきだと思います。
ところでミサイル防衛の問題は、いみじくもYmamoto56さんが指摘したはるか上空を通過して飛んでいく弾道ミサイルです。自民党の中には、これらのミサイルも「ミサイル防衛」の名のもとに撃墜しようという話が出ていますが、そうなれば、アメリカを攻撃しようという国は、まず日本のミサイル防衛施設を攻撃する、ということになります。カナダが、アメリカのミサイル防衛システムに加わらない、という根本は、こう言うところにあると思います。
それから、実際には、アメリカの要求に従うことで、日本の軍事費は拡大してきました。しかも、それらが本当に日本の安全保障に役立っているのか? そこもリアルに考えてみる必要があると思います。
>GAKUさん
>アメリカを攻撃しようという国は、まず日本のミサイル防衛施設を攻撃する
これに関しては、「中立政策」を採れば、日本の安全は保障されると言うことでしょうか? そうであれば、無理があります。
第2次大戦以前は、欧州等に確かに「中立政策」を採った国々が今以上にありました。
ベルギーもその1つで、第1次大戦、第2次大戦と中立政策を採りました。
しかし、その国は「戦場」になりました。
両大戦共に、ドイツ軍が、フランスの背後を突くための「通り道」として必要だったからです。ドイツは、「通り道」の邪魔者を武力で制圧しました。もちろん、ベルギーも抵抗を試みましたが、無駄でした。ベルギー独力の戦力では、不十分だったのです。
同じような事例は、欧州で中立政策を採っていた他の国々でもあります。
つまり、「中立」を採っていても、意図しない理由で戦争に巻き込まれる可能性は、十分にあるわけです。これは、歴史上の「事実」です。そして、独力で安全保障を得ることが、如何に難しいか悟ったベルギーは、戦後NATOに加盟しました。「集団安全保障」という枠組みを使うことで、小国ながら、十分な防衛力を手に入れたのです。
結局のところ「中立」は、決して安全を保証するものではなく、意味するところは軍事的「孤立」です。「孤立」しているので、直接的に敵対することはありません。「孤立」しているので、軍事的協力を求められる事はありません。
但し、直接敵対しなくても、たとえ望んでいなくても、かつてのベルギーのように戦争を仕掛けられる可能性は、十分もあります。その場合でも、中立であれば、他国に軍事的協力を求めることは出来ません。
さらに今回のカナダの場合は、ミサイル防衛面で表面的に中立を装っても、NATO加盟国であることに変わりないのです。
>日本の軍事費は拡大してきました。
少なくとも80年代半ば以後ずっと、GDPの1%程度です。また防衛庁の「防衛予算関連文書」を見る限り、少なくとも平成10年度以降の防衛費は、ほぼ横ばいか、もしくは減少しております。増大を許す環境にありません。
ただ、予算の枠組みが、おおよそ決まっている以上、兵器単価がハイテク化のために上昇すれば、数が減ります。幾ら高性能な兵器でも、1つの兵器かカバーできる範囲は、限られています。つまり、数が減れば、有効な防衛が難しくなります。そうなれば今後、他国と共同で国防する必要に、これまで以上に迫られるでしょう。
>自民党の中には、これらのミサイルも「ミサイル防衛」の名のもとに撃墜しようという話が出ています。
>北朝鮮や中国をはじめから「脅威」とみなさない立場で、日本の進路を考えるべきだと思います。
銃を構えて脅してくる人間に対し、安全を確保するのは、非常に大変です。銃を下ろすように説得を試みても、すぐに応じない場合も多々あります。説得には、長い時間がかかるでしょう。相手が疲弊するまで、待たなくてはならないかもしれません。その間、危険に晒されなくてはなりません。ジュラルミンの盾を並べたところで、銃に対しては意味が無いでしょう。
もし、防弾ガラスの盾があれば、相手の疲弊を待ちながら、比較的安全に説得を続けることもできるかもしれません。
彼らは、弾道ミサイルという銃を持っています。ミサイル防衛は、それに対する防弾ガラスの盾なんです。相手を傷つける攻撃兵器ではないんです。ただ、その防弾ガラスの盾は、高度な技術で作られていて、簡単に真似できるものでないとしたら? それを作るためには、製造元と提携する必要があります。
そして、我々が防弾ガラスの盾を作れたとしても、揃えることのできる盾の数は、予算の関係上、あまり多くありません。盾の無いところを撃たれれば、ケガ人が出ます。ケガ人を出さずに説得を続けるには、より多くの盾をそろえなくてはなりません。
ならば、他の人の盾を貸してもらう必要もあるかもしれません。只、無料では貸してくれないでしょう。貸す側も盾が足りないときは、協力を要請してくるでしょう。
そろそろ、日本も真剣に集団安全保障について考えなくてはならない時期が、やってきたのです。デメリットがあるから駄目と言うのは、「理想論」です。
「政治」と言うのは、「理想論」だけを語るものでありません。メリット・デメリットを考慮して落とし所を探る「現実論」なんです。そして、安全保障とは、現実に即して速やかに対処しなければならない政治的問題なのです。
>Yamamoto56さん
>これに関しては、「中立政策」を採れば、日本の安全は保障されると言うことでしょうか? そうであれば、無理があります。
>第2次大戦以前は、欧州等に確かに「中立政策」を採った国々が今以上にありました。
ベルギーもその1つで、第1次大戦、第2次大戦と中立政策を採りました。
中立政策だけで日本の安全が100%保障される、などということはありえないし、僕もそんなふうに考えていません。しかし、武装していたフランスだって占領された訳ですから、軍備を持っていても安全が保障されることにはならない、ということです。そこで、ヨーロッパは、ECSCをつくり、ドイツとフランスの共同・協力を具体化してきました。そういう発想こそが求められていると思います。
なお、ミサイル防衛システムは「防弾ガラスの盾」ではない、と思います。
最後に
Blogの考え方として、私は、自分の意見はTBしながら、自分のBlogに書きこむものだと思います。これ以上のご意見は、そういう形で述べていただければと思います。