介護の必要な家族がいるとして転勤命令を拒否した従業員の訴えにたいし、神戸地裁が、転勤命令の無効判決。
世界的に見たら、家族を残して単身赴任すること自体が異常なこと。ようやく、妻や親の介護が理由として認められた訳ですが、もっと広く、たとえば子育ての真っ最中だからとか、そういう理由も認められるようになってほしいですね。
介護必要な家族いる従業員への転勤命令に無効判決
介護や援助が必要な家族がいるのに遠隔地への転勤を命じたのは不当として、ネスレジャパン姫路工場(兵庫県香寺町)の男性従業員2人が、本社のネスレジャパンホールディング(茨城県稲敷市)に地位保全と賃金の支払いを求めた訴訟の判決が9日、神戸地裁姫路支部であった。松本哲泓(てつ・おう)裁判長は「2人が転勤すれば、家族の治療や介護が困難となり、症状が悪化する可能性がある。不利益は大きく、配転命令権の乱用にあたる」などとして、転勤命令を無効として従う義務がないことを認めるとともに、会社側に03年9月以降の未払い賃金の支払いを命じた。
原告側代理人の吉田竜一弁護士は「家族の介護などの理由で配転命令が無効になるのは珍しい。家庭の問題を抱える従業員に、転勤が大きな影響を与えることを認めてくれた意義ある判決だ」と話している。
勝訴したのは、妻が精神病を患っている兵庫県姫路市の男性従業員(55)と、母親がパーキンソン病のため要介護度2の認定を受けている同県神崎郡内の男性従業員(49)。
判決によると、ネスレ社は03年5月、贈答品の箱詰め作業をしていた姫路工場のギフトボックス係の廃止を決め、従業員60人に茨城県稲敷市の霞ケ浦工場へ転勤するか、退職するかの選択を迫った。9人は転勤に応じ、49人は退職した。
原告の2人は家族の援助や介護が必要だとして姫路工場に残りたいと会社側に要求したが、拒否された。03年9月から給与の一部の支払いを止められた。
判決は、業務上必要な転勤命令であっても、労働者が通常受け入れるべき不利益を著しく超える場合など特段の事情がある場合には、使用者の権利の乱用となり、転勤命令が無効になるという一般的な判断を示した。
そのうえで、判決は、原告の家族の状態について、「精神病の妻は家事をすることや単身で生活することは困難。夫の転勤により病状が悪化する恐れがあった」「転勤すれば、要介護状態の母親の介護が困難になったり、病状が悪化したりする可能性があった」などと認定。従業員に著しい不利益を与えるとして、会社側の転勤命令は権利の乱用にあたると結論づけた。
原告2人は03年6月に地位保全などを求める仮処分を同支部に申請。同11月、請求を認める仮処分決定を得たが、会社側が姫路工場での就業を認めないため提訴した。
判決後、記者会見した姫路市の男性従業員は「会社のやり方は強引だった。意に沿った判決で大変うれしい」、神崎郡の男性従業員は「介護の大変さを認めてもらい良かった」と話した。
判決に対しネスレジャパングループ広報室は「判決文を見ていないので、コメントは差し控えたい」としている。[asahi.com 2005年05月09日22時40分]