郵政民営化法案に反対した議員に、小泉首相が対抗馬をぶつけるというので、マスメディアは大賑わいしている。
東京10区の小林興起氏には、小池百合子環境大臣。
亀井静香・元政調会長の広島6区には、かの竹中平蔵大臣(現在は参議院議員)の名前もあがった(本人は否定したが)。ほかにも、前外相の川口順子首相補佐官や中山恭子・元内閣官房参与などの立候補も取りざたされているそうで、まるっきりの“ティーチャーズ・ペット”状態。
しかしこれは、選挙を「郵政民営化に賛成か反対か」の構図にもち込もうという、小泉一流の作戦。本当の争点から国民の目をそらさせるための、一大フレームアップというべきものだ。
当面する国政の争点は、郵政民営化に賛成か反対かなどでは決してない。政府は、消費税増税や所得税・個人住民税増税に、この1年程度のあいだに目鼻を付けると言っている。憲法も、11月の自民党大会を皮切りに、いよいよ具体的な改憲案をめぐってのたたかいになる。首相の靖国参拝問題での中国、韓国との外交的な緊張、強引な国連常任理事国入りの破綻、蚊帳の外に置かれた「6カ国協議」、さらに年末には辣腕プーチンが来日し、北方領土交渉は、4島の帰属問題どころか、歯舞・色丹の返還だけで押し切られる可能性が大。まさに、内政・外交ともに、まったくお先真っ暗状態。「自民党をぶっ壊す」と言った小泉首相が、国民の暮らしや日本の国際的な立場をぶっ壊してしまった。これへの審判が、こんどの総選挙の最大の争点。
なぜ、郵政民営化がフレームアップ作戦だというのか。その理由は、第1に、郵政民営化反対の候補者が当選しても、小泉子飼いの「郵政民営化賛成」候補が当選しても、所詮、どっちも自民党の枠のなかでの議席争いにすぎない。小池百合子大臣など大物は、小選挙区だけの立候補でのガチンコ勝負じゃなくて、比例との重複立候補で、小選挙区で負けても議席は確保されることは間違いない(逆に、比例との重複立候補を認められないような対抗馬は、所詮、はなから当選など考えてない小物候補者ということ)。
またメディアは、「新党」ができるかどうかを必死になって追っかけているが、地元にいけば、無所属立候補を余儀なくされた造反派議員は、自民党の地元支部の支部長だったりする訳だから、はなから自民党分裂・新党結成、選挙結果によっては民主党と連合して政権樹立、などという路線はありえない。
造反派は、自分たち以外に、新しく候補者を立てるわけなどないし、自民党から割ってでて新党をつくる気もないのだから、放っておいても、いまより議席が増える心配はない。とりあえず、解散強行で、新聞世論調査の内閣支持率は軒並み上昇。これで、自民+公明で過半数をとれば、小泉は「勝った、勝った」「郵政民営化は国民に支持された」ということになる。
「郵政民営化に賛成か反対か」にメディアを集中させ、造反派を締め上げ、なおかつ民主党にたいする牽制にもなる。しかも、どこかに地盤を持ってたたき上げてきた代議士を使うのでなく、落下傘部隊で自分の手持ちの(しかも使い古した)コマを放り込むだけなのだから、負けても痛手は小さい。もちろん、造反派を1人でも落とせれば、こんな嬉しい話はないというわけ。
分裂選挙で民主党有利といってみても、自民党が分裂するのは、300の小選挙区のうち1割ほどしかない。しかも、政権交代を押し出せば押し出すほど、海のものとも山のものともつかぬ岡田よりは小泉の方がまし、という意見が増えるだけ。もともと、民営化賛成、郵政は「解体・縮小」という民主党にとって、「郵政民営化反対」一本ではたたかえない。このままいくと、民主党は、そんなじり貧においこまれることになるだろう。
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