30代のストレス深刻化

産経新聞が紹介していた記事。社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所の調査によると、企業のなかで「心の病」になる年齢層が30代に集中していることが明らかに。

心の病 30代に集中…年々、深刻化(産経新聞)

その背景には、「個人で仕事をする機会が増えた」67%(「そう思う」「ややそう思う」の合計)、「職場でのコミュニケーションの機会が減った」61%、「職場での助け合いが少なくなった」49%など、働き方の大きな変化がありそう。ただし、「産経」の記事では触れていませんが、この世代は、週60時間以上働いているという人が3割近くいます(→データはこちら)。こういう長時間労働をなくさない限り、「心の病」は増え続けることになります。

心の病 30代に集中…年々、深刻化
[産経新聞 2006/08/30 東京朝刊から 08/30 10:38]

≪「働き過ぎ」危険、企業の対応急務≫

 この3年間で職場での「心の病」が増えていると感じている企業は約6割にのぼり、その多くが30代に集中していることが、財団法人「社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所」(東京都渋谷区)が行った調査で明らかになった。年々深刻になる職場での心の病について、専門家は「自己管理も必要だが、企業が現状を認識して、しっかりと対応する必要がある」と指摘している。(岸本佳子)

 調査は今年4月、上場企業2150社を対象に行われ、218社から回答があった。
 まず、最近3年間で心の病が「増加傾向にある」と答えた企業は61.5%。4年前の調査では48.9%、2年前は58.2%で、その割合が急速に増えている。特に、従業員が3000人以上の企業で「増加傾向」と回答したのは66.2%にのぼり、大企業ほど心の病が増えている。
 どの年齢層に多いかと尋ねたところ、30代が61%と最も多く、40代(19.3%)、10?20代(11.5%)を大きく引き離した。前回、前々回の調査よりも、30代と答える割合は高くなっており、心の病がこの年齢層に集中していることが明らかになった。逆に、40代と50代は減少傾向にある。
 職場のメンタルヘルスに詳しい、神戸親和女子大学大学院の丸山総一郎教授(精神医学)は「30代といえば、団塊ジュニアの世代。採用人数が多く、職場での競争も激しい。次の段階に進むのも大変な状況にあるのでは」と分析する。また、雇用形態が変化し、一部の正規職員に仕事が集中し、過重労働になる傾向も。30代の正規職員が非正規職員をうまく使いこなせず、自分ですべてかぶってしまうケースもあるようだ。
 「苦しくても、目標や希望があればいい。近くに支援者がいればいい。でも、職場の人たちも余裕がない。助けてあげたくても、個人の仕事が増えてしまって、どこをどう手助けすればいいかわからない、という状況でもある」と丸山教授は指摘する。
 今回の調査でも、「個人で仕事をする機会が増えた」という質問に対し、「そう思う」「ややそう思う」と回答したのは合わせて67%。「職場での助け合いが少なくなった」と答えたのは49%、「職場でのコミュニケーションの機会が減った」との回答は60.1%にのぼった。
 職場でのコミュニケーションが減ったり、助け合いが少なくなった、という企業ほど、心の病が増えたと答える割合が高くなっており、同研究所では「職場における横のつながりの回復などが課題」と提言している。
 ただ、横のつながりを回復するといっても容易なことではない。丸山教授は「心の病に対応できるシステムや制度をつくる必要がある」と指摘する。外部のEAP(従業員支援プログラム)を利用して従業員が相談しやすい環境を整えるなど、「企業がきちんと予算をとったうえで、対策を考えてほしい」という。
 しかし今は、増え続ける従業員の心の病に対して、企業側も対応が追いついていないのが実情。それだけに、従業員側の自己管理も重要となる。
 丸山教授は「心の病は他人事、と考えている人が大多数でしょう。しかし、患者さんをみているとよくわかりますが、バリバリと仕事をしているように見えていた人が突然、病気になり、本人も、周囲もびっくりするのです。そうならないためにも、まずはきちんと休みをとることが必要。寝ずに仕事を続けられるわけがない。オーバーヒートしないように自己管理を徹底してほしい」とアドバイスしている。

テキストだと、せっかくのグラフが抜けてしまうので、表にしておきました。

【心の病の最も多い年齢層】

年齢層 2002年 2004年 2006年
10?20代 13.1% 10.4% 11.5%
30代 41.8% 49.3% 61.0%
40代 27.0% 22.0% 19.3%
50代以上 9.6% 5.6% 1.8%

↑この数字は、あくまで年齢層ごとの全体に占める割合。30代以外で%が減っているからといって、実数が減っているとは限らないので、念のため。

【職場の変化】

そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない
個人で仕事をする機会が増えた 22.5% 44.5% 28.9% 3.7%
職場でのコミュニケーションの機会が減った 10.1% 50.5% 33.0% 6.9%
職場での助け合いが少なくなった 7.3% 41.7% 44.5% 6.4%

社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所の調査結果はこちら。↓
2006年 「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査結果(PDF 58.5KB)

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