もう次の号が出てしまったのですが、『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)9月2日号が、「リストラ父さん フリーター息子/悲惨世代」というタイトルで23ページの特集を組み、「働く貧困層」(ワーキング・プア)や若年世代の賃金格差、派遣・請負の実態などを詳しく取り上げています。
たとえば、年齢別の離職失業者 ((いちど仕事についていたが、現在失業してる人のこと。))数をみると、25?34歳が43万人とずば抜けて多く、新卒時期がバブル崩壊後の「就職氷河期」に重なってしまった世代に集中しています。しかも、いったんフリーターになると、正社員としての再就職は圧倒的に不利です。
【企業のフリーターに対する採用姿勢】
正規従業員としても非正規従業員としても採用するつもりはない | 41.8% |
正規従業員として採用するつもりはないが、非正規従業員として採用する | 23.3% |
とくに区別せず正規従業員として採用する | 23.4% |
積極的に正規従業員として採用して育成したい | 1.4% |
その他 | 8.1% |
無回答 | 3.8% |
出所:労働政策研究・研修機構「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」(2004年)
また、年齢別の労働所得で見たジニ係数の推移を示したグラフを見ると、高齢者ほどジニ係数が大きく(つまり、格差が大きい)、若年世代は小さいこと、それに全体としてジニ係数は拡大傾向にあることなどが分かりますが、同時に、若い世代では、とくに1997年から2002年の5年間に著しく格差が広がっているのが目立ちます。若者のあいだで、確実に所得格差が広がっている、ということです ((この点は、「格差論争」との関係でも重要。“高齢世代では同世代内での所得格差の大きいため、社会全体で高齢化がすすみ見かけ上ジニ係数が大きくなっただけだ”という反論は、事実によって否定されたことを示すものだからです。))。
「リストラ父さんの悲痛な叫び」として、リストラ・転職先として多いタクシー運転手の実態が紹介されています。しかし、その実態には驚きます。2001年から2004年のわずか3年で年収が299万円から269万円へと1割も減っている ((その間に、タクシーの台数は25.6万台から26.9万台に増えており、規制緩和による参入増大が収入減をもたらしていることが分かる。))、時給に換算すると最低賃金を下回る県もある ((たとえば、タクシー運転手の時給換算額は徳島県536円(611円)、大分県549円(606円)、宮崎県548円(605円)。()内は地域最低賃金。))、などなど。
次期首相最有力といわれる某官房長官は「再チャレンジ」をスローガンにかかげていますが、「せめて再チャレンジをさせて」という若年層悲惨世代の声 ((同誌36?37ページの座談会参照。))にぜひこたえてほしいものです。
ところで、「悲惨世代」という見出しがいささかショッキングだったみたいで、ブログを見ていると、「そこまで言わなくても…」とか「それほどではない」などの感想も見受けられます。しかし、派遣・請負で必死に働いているのに年収150万円などという人たちにしてみれば「悲惨」以外の何ものでもないでしょう ((総務省「就業構造基本調査」によると、年収300万円未満の男性労働者は、1997年の762万人から2002年の889万人へ、127万人も増えている。年収200万円未満の女性を含めると、2090万人にのぼる。))。
初めに書いたように、すでに次の号が出ているが、大きな書店では、まだ置いているところもあると思います。バックナンバーの注文も可能です。関心のある人には、ぜひ一読をお勧めしたいと思います。(発売元:ダイヤモンド社、定価:570円=税込み)