この間読んだ雑誌記事について。
『論座』9月号から。
- 東郷和彦「首相の参拝にモラトリアムを」
- マイク・モチヅキ「米国はどう見ているか」
- カート・キャンベル「インタビュー 『黙っているからといって、米国政府が支持しているわけではない』」
- 石破茂「『毅然とした外交』よりも大事なことがある」
- 添谷芳秀「政治主導外交の危うさ アメリカなしでは成立しない『強硬論』」
- フォーリン・アフェアーズ・ジャパン・ブリーフィング「ミサイル発射後の北東アジア戦略環境を検証する」
最初の論文は、東郷和彦氏が『ファー・イースタン・エコノミック・レビュー』6月号に寄稿した論文の本人による日本語抄訳版。先日、同氏が「朝日新聞」に寄稿した論文と同趣旨。東郷氏は、『現代』9月号にのったインタビューでも同趣旨のことを話している。ただし、「戦前の歴史に関する国立歴史博物館の設立」については、少し位置づけが違っているように読めるが。
モチヅキ論文とキャンベル・インタビューは、このブログでもずっと紹介してきた靖国神社・遊就館の戦争観をめぐるアメリカ国内の動きを紹介したもの。キャンベル氏は、「米国の専門家の大部分が、口に出しこそしませんが靖国神社をめぐる今の状況に強い懸念を持っています」「靖国問題について米国が沈黙を守っているからといって、米国が小泉首相の言動や日本の立場を認めているのだと受け取ることは間違いです」「今、米国人の間では、首相の靖国参拝がよいか悪いかという点では意見は割れていません。意見が割れているのは、米国がこの問題について日本にもの申すべきかどうかということなのです」など指摘していることに注目すべし。
添谷論文は、北朝鮮情勢に関連して、敵地攻撃論の非現実性や、そういう議論が登場する危うさを指摘する。昨今の議論を「未来の外交論や国家像を語らず戦後憲法の生い立ちと現状を批判するだけの後ろ向きの改憲論」「国際政治のなかに日本を相対化する視点を失った内向きの歴史解釈」と言っているのは同感。
『現代』9月号から。
- 東郷和彦「独占インタビュー 靖国参拝試案」
- 保坂正康「真靖国論――小泉史観の大いなる過ち」
- 吉田 司「『岸信介』を受け継ぐ安倍晋三の危うい知性」
- 原田武夫「安倍晋三『初外交』敗れたり」
東郷インタビューは上述の通り。
原田論文は、『論座』の添谷論文とともに、国連安保理の北朝鮮決議をめぐる外交をとりあつかったもの。どちらも、日本の毅然たる態度が「成功」したのではなく、日本を支持するふりをしながらアメリカが態度を豹変させて中国と妥協し、日本はそれを飲まざるをえなかったのだと指摘している。
フォーリン・アフェアーズ・ジャパン・ブリーフィングは、北朝鮮情勢をめぐるブリーフィング。アメリカが自体をどういうふうに見ているかよく分かる。「われわれが考えるほど、中国が北朝鮮に対して大きな影響力を持っているわけではないようだ』「北京にとっても、平壌は信頼できる同盟国ではない」「中国派、北朝鮮の安定化を図り、朝鮮半島での戦争を回避することを目的にしている」という見方は、それなりにリアルか。
その他に、以下のものも読了。上杉氏の記事は、もう少しきちんと検討しなければいけないが、論点としては面白いところを突いていると思う。ポイントは、靖国神社の合祀事業への協力をたんに打ち切ったのではなく、「これに関連する昭和31年4月19日から同45年8月4日までの間の靖国神社合祀事務協力に関する諸通知」を、遡って「廃止する」としていること。
- 上杉隆「封印公文書スクープ入手 靖国『A級戦犯合祀』最大の根拠『祭神名票』を厚生省が取り消していた!」(週刊文春9/7号)
- 「『年収150万円時代』のリアル悲鳴」(『週刊プレーボーイ』8/28号)