大手銀行が自民党への政治献金を再開するとしていた問題。中川幹事長が積極的な姿勢を示したものの、午後になって、一転、自粛することに。
で、なんでこんな急転を迎えたかというと、それは、献金を再開しようとしていた大手銀行の自民党に対する融資残高が80億円を超えていることが明らかになったから。銀行の政治献金再開となれば、自民党からみれば、80億円の借金が政治献金と相殺されていくわけで、こんな都合のいい話はありません。
しかし、大手銀行は国民の税金である公的資金の投入を受け、その結果、利益を上げるようになったにもかかわらず、政府の特例措置によって法人税を1円も納めていないのです。にもかかわらず、自民党には献金するということになれば、要するに、自民党は、税金で銀行を優遇してやって、見返りに自分たちの借金を棒引きにしようということになる訳で、こんな身勝手が許されないのは当たり前のことです。
首相、大手銀行からの献金自粛を指示(産経新聞)
りそな、自民党への融資残高53億超…突出ぶり際立つ(読売新聞)
首相、大手銀行からの献金自粛を指示
[産経新聞 2006/12/19 21:44]安倍晋三首相は19日、首相官邸に中川秀直幹事長を呼び、大手銀行からの政治献金受け取りを引き続き自粛するよう指示した。大手銀行は、不良債権処理のため公的資金が導入された平成10年以降、献金を中止してきたが、一部で年内再開を検討していた。首相官邸がこうした動きの機先を制した形で、三菱東京UFJ銀行やみずほフィナンシャルグループは同日、年内の献金再開を取りやめる方針を固めた。
首相は同日夜の記者会見で、大手銀行について「不良債権を片づけ、現在は大変な企業収益をあげているが、繰越欠損金の関係で法人税を納付していないのも事実だ」と指摘。その上で「公的資金によって立ち直ったという事実があり、この段階で政治資金を受け取ることは国民の理解を得ることができないと判断した」と説明した。
中川幹事長は19日午前の記者会見で、「一般論としては企業にも政治活動の自由は認められている」と指摘。さらに「法人税の支払いの有無によって、寄付を制限する規定は関係法令にはない」と話すなど献金受け入れに積極的な姿勢を見せていたが、首相の指示を受け、方針を転換した。
自民党の17年の政治資金収支報告書によると、17年8月にりそな銀行から新たに30億円を借り入れ、各大手銀行からの融資残高は同年末で計80億円に上っている。受け取り自粛には「献金は事実上の負債免除につながる」との批判を回避する狙いもありそうだ。
全国銀行協会の畔柳信雄会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は19日の定例記者会見で、政治献金の再開について「議会制民主主義の維持のため、総合的バランスの中で考えていく」などと述べ、三菱東京UFJ銀行としては前向きな姿勢を示していた。しかし、自民党の方針決定を受け、年内の献金再開は取りやめることになった。
りそな、自民党への融資残高53億超…突出ぶり際立つ
[2006年12月19日22時0分 読売新聞]りそな銀行の自民党に対する2005年末の融資残高が53億7500万円と、03年末に比べて倍以上に増えたことが19日、わかった。
三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の大手3行の融資残高の総額26億2500万円と比べても2倍の水準で、りそなの突出ぶりが際立っている。
大手行は1993年の総選挙の際、当時の都銀8行が自民党に総額100億円の協調融資を実行した。その後は毎年返済を受けて、全体としては融資残高を減らしている。
政治資金収支報告書によると、大手行の05年末の融資残高は、三菱東京UFJ(旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行の合算)が11億2500万円、みずほと三井住友がそれぞれ7億5000万円。03年末と比べ、大手3行の総額は3億5000万円減少している。
これに対して、旧大和銀行時代から自民党のメーンバンクだったりそなは、国政選挙の際に融資を引き受け、融資残高が03年末の24億2500万円から大きく増えた。
りそなホールディングスでは「個別の融資先についてはコメントできないが、一般の融資と同じく経済合理性に基づいて総合的に判断しており、問題はない」と説明している。
自民党の中川幹事長は記者会見で、「りそな銀行は(旧大和銀行の時代から)衆参両院に支店を持っており、各政党も過去に融資を受けるなど、近年も取引がある。そういう中で、つなぎの資金も含め融資してもらったのではないかと思う。利子も含め正規の取引で、計画通り返済していると聞いている」と述べた。