民主党の菅直人・代表代行が、沖縄戦「集団自決」をめぐる教科書検定問題で、安倍首相に論戦をいどむ――。
というのですが、菅氏は、首相に「これは史実がどうであったかという議論」と反論され、それ以上の追及ができなかったようです。TBSから、「選挙に向けた論戦ということで相手にダメージを与えることを優先したため議論は深まらず」「非難の応酬に終わりました」とコメントされる始末。民主党の側の「実(じつ)」のなさを証明しただけです。
教育改革3法案、衆院特別委で審議入り(TBS News-i)
歴史は、たんなる「見方」ではありません。安倍首相が、いくら「僕は、日本が侵略したなんていう歴史は認めたくない」と言ってみたところで、日本が中国を侵略した事実が消えてなくなる訳ではありません。それが、厳粛な「歴史の事実」というものです。
同様に、沖縄戦での「集団自決」についても、安倍首相や自民党、文部科学省が、いくら「証明されていない」と言ってみても、住民の間に広く手榴弾が配られて、それを使って住民が「集団自決」した事実が消えてなくなるわけではありません。もし、軍が命令しなかったのであれば、いったい誰が何のために手榴弾が配られたというのでしょうか。当時の沖縄は、日本軍が全面的に行政を掌握・支配していました。そんな状況下で、軍以外に手榴弾を配れる組織が存在したというのでしょうか? 軍が命令しなければ、「集団自決」という事態が起こりえなかったことは明白です。
「史実による裏づけ」というのは、こういうことを言うのであって、ただたんに「軍の命令書が存在しないから、命令した事実はなかった」などというものではありません。
だから、きちんと事実を突きつけて追及すれば、安倍首相は、絶対に窮地に陥ったはずなのです。ところが、菅氏は、たぶん大して勉強もせずに、この問題をとりあげて、ただたんに見得を切って見せただけだったので、見事、自爆してしまいました。むしろ、安倍首相・自民党・文部科学省の側に、「結局、集団自決を命じたことを証明できなかったではないか」と言う根拠を与えてしまった訳で、論戦というのはあまりにお粗末というしかありません。
歴史というのは、まことに厳粛なもので、「政治的な思惑」からあれこれいうのは、不遜のそしりをまぬかれません。
もちろんこのことは、安倍首相らの「侵略戦争」否定論、靖国史観派にあてはまることなのですが、菅直人氏も同じ過ちを犯したといわざるをえません。
教育改革3法案、衆院特別委で審議入り
[TBS News-i 2007年4月20日16:56]国会で、教育改革関連3法案の実質的な審議が始まり、民主党の菅代表代行は、第二次大戦中の沖縄の集団自決を巡る教科書検定などについて安倍総理を追及しましたが、非難の応酬に終始しました。
菅氏は、22日投票の沖縄の参議院補欠選挙を意識して「選挙に関わる地域の問題を国会で大いに取り上げるべきだ」として、教科書検定で、国が沖縄での集団自決を旧日本軍が強制したという記述の修正を求めたことについて質しました。
「総理自身は沖縄戦においてのこういう歴史的事実について、どのように考えているのか総理自身のお考えを聞いているんです」(民主党 菅直人・代表代行)
「これは史実がどうであったかという議論であって、総理大臣がいちいち言うべきことなんでしょうか。それは専門家が議論し、調査し、そのうえで意見を付せることではないですか」(安倍首相)
このほか菅氏は、安倍総理の歴史認識などについて論戦を仕掛けましたが、議論の入り口でことごとく対立しました。
「何でそんなにキレなきゃいけないんですか」(民主党 菅直人・代表代行)
「まず、キレたといういきなり決めつけは失礼ですよ。誰が考えたって、私は菅さんよりキレにくいと思いますけどね」(安倍首相)
「都合が悪いときになると『それは答えるべきことではない』。これは政治家としてですね、ひきょうな態度と言わざるを得ませんね」(民主党 菅直人・代表代行)
「ひきょうな態度というのは、それは失礼ですよ。あまりにも。もう少し国語力を鍛えていただきたい」(安倍首相)
「わたしの質問を十分理解するだけの国語力を持っておられて言ってるんだろうと思ってますが、残念ながら必ずしも私の質問に十分にはお答えいただいていない」(民主党 菅直人・代表代行)
選挙に向けた論戦ということで相手にダメージを与えることを優先したため議論は深まらず、注目の対決は、非難の応酬に終わりました。(以下略)