唐突ですが、東京都西部に広がる武蔵野段丘は、実は、青梅あたりを基点とする多摩川の巨大な扇状地だった、ということをみなさんご存じですか?
『資本論』の精読でいささか疲労困憊状態になっているため、思い切った気分転換のために、こんな本を読んでいます。
左=貝塚爽平『東京の自然史<増補第2版>』(紀伊國屋書店)、右=貝塚爽平監修『<新版>東京都 地学のガイド』(コロナ社)
で、初めて分かったことがたくさんあります。
武蔵野段丘は、青梅から東端の御茶ノ水あたりまで、東西約50kmの巨大な台地で、青梅あたりは標高100m。そこから東に徐々に低くなってゆきます。武蔵野台地の東の端っこは、たとえば上野?田端間のJR山手線西側の崖にみることができます。ただし都心の高いところは武蔵野段丘の続きではなく、淀橋台と呼ばれる別地形なのだそうです。
それはともかく、そうやって徐々に低くなってきた標高50mぐらいのところに、石神井池、三宝寺池、善福寺池、それに井の頭公園の池が並んでいて、そこから石神井川、善福寺川、神田川が流れています。要するに、扇状地に潜り込んだ水が、ここで地方に現われている訳ですね。
南側には、現在の多摩川による河岸段丘があり、段丘の下には野川が流れています(僕が現在住んでいるのは、この立川段丘の上)。北側は荒川による低地(沖積平野)が広がっています。その途中に古い地形である狭山丘陵と所沢台が頭を出していますが、それをはさんでその北側にまで武蔵野段丘は広がっています。
こうやって考えると、本当にすごい広さで、こんな巨大な扇状地なんて、思い浮かべただけで楽しくなってしまいます。(^^;)
『東京の自然史』は、最初1964年に紀伊國屋新書の1冊として出版されたもので、増補第2版は1979年刊。僕が手に入れたのは、2001年12月刊の第16刷。『東京都 地学のガイド』の方は、地層や地形の特徴が観察できる場所を紹介しているガイドブックで、旧版が1980年刊、新版は1997年に出ています(買ってきたのは2006年3月の3刷)。東京の地形の成り立ちを示す図などは、『東京の自然史』と同じものが掲載されていますが、こちらの方が印刷が精密、鮮明で見やすいです。
で、高校時代は地学部だった僕は、ひさびさに地学に刺戟され、いまは同じ著者の『日本の地形―特質と由来』(岩波新書、青版996、1977年刊)を読み始めたところです。
【書誌情報】
- 著者:貝塚爽平/書名:東京の自然史<増補第2版>/出版社:紀伊國屋書店/発行:1979年/定価:本体1600円+税/ISBN4-314-00249-2
- 監修:貝塚爽平/編集:東京都地学のガイド編集委員会/書名:<新版>東京都 地学のガイド/出版社:コロナ社/1997年/定価:本体2600円+税/ISBN4-339-07541-8