経済財政諮問会議「民間議員」言いたい放題

25日、首相の諮問機関である経済財政諮問会議の会議が開かれ、「民間議員」の提出した資料にもとづき議論。

「全額税方式なら消費税は6%引き上げが必要」だという議論については、前にも触れましたが、昨日の会議では、それだけでなく、現在でも65歳にまで引き上げられた支給開始年齢をさらに引き上げるべきだと主張したそうな。その一方で、法人税は30%に引き下げるなど企業減税を要求。ほんとに言いたい放題です。

北海道新聞が社説で、「将来の消費税率は20%を超えることになる。あぜんとしてしまう数字だ」「消費税増税へと世論を誘導しようとしていると疑われても仕方ない」「税率の引き上げが財界人や学者などでつくる民間議員から出てくるのもおかしい」と批判しているのが注目されます。

経済財政諮問会議、年金制度改革「全額税」なら消費税6%↑(FujiSankei Business i.)
支給開始65歳から引き上げ 諮問会議が年金改革案(中国新聞)
社説:年金の財源 これも消費税増税とは(北海道新聞)

経済財政諮問会議、年金制度改革「全額税」なら消費税6%↑
経団連会長ら民間議員提示
[FujiSankei Business i. 2007/10/26]

 政府の経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)は25日、会合を開き、年金制度の給付と負担について議論した。御手洗冨士夫・日本経団連会長ら民間議員は、年金制度についての選択肢を提示。給付財源をすべて税で賄う全額税方式を導入した場合、最大で16.3兆円の財源が不足し、最大6%程度の税率引き上げが必要な計算となると試算した。年金未納の解消などメリットが多い半面、課題も多く今後、議論を呼びそうだ。

■最大16・3兆円

 全額税方式は、年金の未納・未加入問題を解消できるほか、財源が安定化するなどのメリットがあり、日本経団連などが提案している。
 民間議員の試算によると、給付額を現在の水準に抑えた場合、12.4兆円分の財源が不足。消費税率で5%弱の引き上げが必要となる。一方、65歳以上の高齢者すべてに6万6000円を定額給付すると、消費税率6%に相当する16.3兆円の財源が必要となる。
 ただ、年金制度の改革で、消費税が引き上げられたとしても、保険料負担の減少とほぼ相殺するため、内閣府は「計算上、新たな国民負担の増加は限定的」(内閣府)としている。
 全額税方式をめぐっては、民主党も消費税増税をしない形での切り替えを提言している。ただ、1200万円以上の高額所得の高齢者には支給しないといった前提があるほか、本当に増税せずに実現できるのかも不透明で、「国民皆年金制度が崩壊する」と政府・与党は批判している。

■自助努力働かず

 確かに、全額税方式にすれば、未納・未加入問題、事務手続きの簡素化など現行の年金制度が持つ課題の解消につながるが、「実質的に生活保護と同じで、自助努力が働かないなど制度上の問題点も少なくない」(内閣府)のも事実だ。
 経済界が全額税方式を主張する背景には、厚生年金の半分を支払っている企業負担が軽減されるからだとの見方もある。
 保険料方式から全額税方式に移行する場合、保険料を払い終わっている人にも実質的な追加負担が生じ、世代間に不公平感が残るだけに大田弘子経済財政担当相は「移行のプロセス自体きわめて難しい」との見方を示す。
 保険料の実質的な納付率が5割を切る水準となっているうえ、高齢化が急速に進むため、今後財源が不足し制度が破綻(はたん)するのは確実だ。諮問会議の試算は、増加する年金制度の見直しに一石を投じる形になったが、高齢化や未納問題による財源不足だけでなく、社会保険庁の相次ぐ不祥事などによる国民の不信感も背景にあるだけに、抜本的な改革を求める声は高まるばかりだ。

支給開始65歳から引き上げ 諮問会議が年金改革案
[中国新聞 2007/10/26]

 政府の経済財政諮問会議が25日開かれ、民間議員が原則65歳としている支給開始年齢の引き上げなどを柱とした年金制度改革案を提出した。民主党案のように基礎年金を全額税で賄った場合、消費税1%を2.7兆円とすると最大約6%分、約16.3兆円の財源が必要との試算も提示。持続可能な制度実現に向け、超党派による合意形成を呼び掛けた。
 民間議員は保険料未納者などの増加による基礎年金の空洞化に懸念を表明。加入最低期間の短縮も提言、加入者増を促した。ただ、消費増税や支給年齢引き上げに賛否が分かれるのは必至。給付と負担のバランスを含め抜本的な論議が必要だ。
 福田康夫首相は「ただちに消費税がいくらという話ではなく、社会保障と税体系の全体を国民の視点に立ち、議論してほしい」と指示した。
 支給開始年齢は国民年金が65歳、厚生年金も段階的に65歳への引き上げが決まっている。しかし、民間議員案は、ドイツなど他の先進国に一段と引き上げる動きがあるとし、高齢者の雇用促進と合わせ引き上げを進めるべきだとした。
 年金受給に必要な25年の加入最低期間も、米国の10年などと比べると長いとして、短縮を求めた。保険料と受給額の収支が世代間で格差がある問題の解消のために、高所得の受給者に課税し税収を年金財源とすることも盛り込んだ。
 財源では2つの試算を提示。基礎年金の国庫負担を2分の1に上げ保険料方式を維持した場合、追加負担は消費税1%分にほぼ見合う約2.5兆円。保険料を全額税に切り替えた場合、現行の基礎年金給付費を賄うには約12兆円、65歳以上に基礎年金(月額6万6000円)を一律給付するには約16.3兆円が必要とした。
 民間議員案は保険料方式では未納問題などが残ると指摘。税方式には消費増税による低所得者への負担増や、支払い済みの保険料との整合性などが問題となるとした。

社説:年金の財源 これも消費税増税とは
[北海道新聞 2007年10月26日]

 今度は基礎年金の全額を消費税で賄う方策を検討するという。政府は消費税をどこまで引き上げるつもりなのだろうか。
 政府の経済財政諮問会議の民間議員が、基礎年金を全額税方式に移行した場合、消費税率を現行の5%から9?11%まで引き上げなければならないとの試算をまとめた。
 同会議では現在の医療・介護の給付水準を維持するためには消費税率を最大17%まで引き上げる必要があるとの試算が提示されたばかりだ。
 単純に積み上げると、将来の消費税率は20%を超えることになる。あぜんとしてしまう数字だ。
 こんな数字が次々と出てくるのでは、消費税増税へと世論を誘導しようとしていると疑われても仕方ない。
 税率の引き上げが財界人や学者などでつくる民間議員から出てくるのもおかしい。議論のたたき台にするなら、政府がきちんとした数字を示すべきであり、それが責任ある態度だ。
 国民が知りたいのは民間議員の試算ではなく、政府の本音の数字だ。
 財政再建や増え続ける社会保障費にどう対応するかを考えれば、財源問題についての議論は避けて通れない。消費税も検討しなければならない課題の一つではある。
 だが、何でもかんでも増税で賄おうとするかのような議論は納得できない。消費税は財源を生み出す打ち出の小づちではないのだ。
 歳出削減を徹底し、それでも足りなければ法人税、所得税、相続税などを含めた税体系全体を見直し、具体的にどの税でいくかを考えるのが本来の議論のあり方だ。
 試算が唐突に出てきたのは、民主党を意識してのことだろう。
 同党は基礎年金の国庫負担率引き上げも、現行の消費税率を維持したまま全額を基礎年金に充てる税方式の導入で解決できると主張している。
 政府・与党には全額税方式を俎上(そじょう)に載せることで、民主党を税制改革の協議の場に引き込みたいとの思惑もあるようだ。
 日本経団連も全額税方式を唱えているが、消費税率引き上げを前提にしており、税率の明示を除けば民間議員の提案とほぼ同じだ。
 経済界には保険料の企業負担分の軽減につなげたいとの狙いも見え隠れしており、同じ税方式でも議論はそう簡単にかみ合いそうもない。
 基礎年金の全額税方式への移行は、保険料を払ってきた人とそうでない人の公平性をどう保つか、など難しい問題を抱えている。
 まずは保険料方式でいくのか税方式でいくのか、年金制度の根幹にかかわる問題をしっかり議論すべきだ。
 消費税増税が一人歩きするようなことがあってはならない。

さらに、自民党税調が来年度の税制改革の議論を開始。

NIKKEI NET(日経ネット):特集 税制改革

自民税調、来年度税制改正へ始動・消費税の扱い焦点
[NIKKEI NET 更新:2007年10月25日 14:19]

 自民党税制調査会(津島雄二会長)は25日午前、正副会長・顧問・幹事会議を開き、2008年度税制改正の論議に入った。基礎年金の国庫負担比率が09年度に2分の1に上がることを踏まえ、社会保障財源確保に向け、現行5%の消費税率の引き上げも検討課題となる。公明党とも調整し、12月中旬に与党税制改正大綱をまとめる方針だ。
 冒頭、津島会長は「わが国の税制と社会保障制度は大きな曲がり角に来ている。やるべきでないことはしっかりと抑制する勇気を持ちながら頑張りたい」と強調した。
 焦点は大綱で消費税にどこまで言及するかだ。次期衆院選をにらみ、ストレートに増税色を出しにくいが、党内には「いつまでも具体論を避けるのは無責任」との声も出ている。将来の税率引き上げをどうにじませるかを巡り、財政再建派と成長重視派のせめぎ合いは必至だ。

他方で、額賀財務相は、「消費税は公平」だといって、消費税増税に前向きの発言。

財務相、社会保障財源で「消費税は公平」(NIKKEI NET)

財務相、社会保障財源で「消費税は公平」
[NIKKEI NET 2007/10/24 07:02]

 額賀福志郎財務相は24日、社会保障財源としての消費税増税について「法人税は景気に左右されやすい。所得税はこれから働く人口が減るなかで、今までのようにはいかない。比較的公平で安定しているのは消費税といえる」と語った。同日の自民党財政改革研究会の会合に出席後、自民党本部で記者団の質問に答えた。
 財務相はそのうえで、2009年度に基礎年金の国庫負担引き上げ、11年度に基礎的財政収支の黒字化を控えるなか、「3%台の成長を前提に実現するのは極めて苦しい。安定した財源を確保するにはどうしたらいいか。しっかりと議論しなければならない」と語った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください