ハケンの反撃始まる!!

東京新聞(および中日新聞)で、「ハケンの反撃」の連載が始まっています。すでに2回、次回は14日付に掲載されます。

記事にあるとおり、武器はユニオン(労働組合)。1人で文句を言ってもごまかされるだけ、しかし組合をつくって要求すれば、会社は回答しなければなりません。すでに個人加盟の労働組合は、全国に3,000以上あるとのこと。全国の派遣労働者、団結せよ!!

ハケンの反撃<1> 広がる連帯の輪 武器はユニオン(東京新聞)
ハケンの反撃<2> 『手口をあばく』 もう だまされない(東京新聞)

ハケンの反撃<1> 広がる連帯の輪 武器はユニオン
[東京新聞 2008年2月10日]

 二重派遣などの違法派遣や劣悪な労働条件が問題になっている派遣労働者。パートなどを含めた立場の弱い非正規雇用労働者は、全労働者の3割を超える。一方、経営側は安価で使い勝手のいい労働者を求める姿勢を変えていない。「逆風をはねのけるには団結が必要」。“ハケン”の反撃が始まった。 (服部利崇)

 「下着と靴下以外、着ている服は息子のものです」。東京・永田町で行われた格差是正のシンポジウムで、派遣労働者の石神与志治さん(55)は、国会議員や報道陣ら約百五十人を前に窮状を訴えた。石神さんは物流関連派遣会社マイワークの労組(ユニオン)委員長だ。
 静岡県内で経営していた書店を閉め、東京に出てきたのが七年前。「拘束がイヤ」で派遣を選んだ。新宿の生協で週五日、早朝六時から商品の積み降ろしをしているが、年収は200万円を切る。「ワーキングプアと言われる側に行っちゃった」
 派遣労働者は約321万人(2006年度厚生労働省調べ)。一昨年から昨年にかけて、日雇い派遣大手で、個人で加入できるユニオンが続々と誕生。半強制的に徴収されてきた不透明な給与天引きの返還要求を中心に、経営側への“反撃”が始まった。
 効果は出始めている。派遣大手のグッドウィルとフルキャストは天引きを相次いで廃止。マイワークも昨年7月、派遣1回あたり250円の「安全協力費」名目の天引きをやめた。
 石神さんは昨年9月、「ちょろまかしたものはすべて返してもらう」と、わずか3カ月でユニオンを結成した。組合員は12人。すべての派遣労働者へ創業時にさかのぼった天引き分全額返還を求め、5回重ねた団交は決裂。今後、労働基準監督署に申告して闘いを続ける。フルキャストユニオンは、全額返還を勝ち取っているからだ。
 「自分の子も非正規という友人が増えている」と石神さん。“階級”が固定される格差社会を肌身で感じ、10?20代が多い組合員への思いを語る。「収入が安定せず家庭を持てない若者が増え、孫が抱けない同世代も増えるだろう。組合を立ち上げたのも行動で何かが変わることを若者に見せたかったから」

      ◇

 繰り返される禁止業務への派遣や二重派遣…。惨状に、連合は昨年10月、労働相談などの拠点として「非正規労働センター」を発足させた。同センターの龍井葉二総合局長(58)は「正社員中心の壁を越えていこうという連合の自己改革宣言」と、反省を込めて話した。連合は2年前から「非正規の処遇改善」を掲げてきたものの「かけ声だけで不十分だった」と認める。
 今年の春闘で、連合は「日雇い派遣禁止」の法改正など大幅な規制強化を訴える予定。だが、米サブプライム住宅ローン問題などの景気の先行き不安を背景に、経営側が軟化する兆候はない。

正社員も連帯を

 非正規の条件悪化に引きずられ「正社員もサービス残業や低賃金など労働条件が悪化している」と龍井さん。「自分たちを守るために正社員も派遣と連帯しなければならない」と訴える。
 連合系の全国ユニオンによると現在、個人加盟ユニオンは約3,300団体まで増えている。
 製造業ユニオンを支える「ガテン系連帯」共同代表の木下武男昭和女子大教授(労働社会学)は「個人加盟ユニオンは芽が出たばかりで、大きく育つには肥料や水がいる。連合が資金面や動員面で支えれば、職種別ユニオンに発展し、業界全体の問題にも切り込める」と話す。

ハケンの反撃<2> 『手口をあばく』 もう だまされない
[東京新聞 2008年2月11日]

 「過労死基準を超えて働かないと月額32万円は稼げない。完ぺきにだましてやがった」
 大手日雇い派遣「フルキャスト」が出資する自動車製造請負・派遣会社「フルキャストセントラル」の元派遣労働者・小谷誠さん(47)は憤る。
 「月収32万円以上」――。厚遇をうたう派遣会社の広告にひかれ、2006年1月、宮城県石巻市から上京。派遣先の東京都日野市の日野自動車で働き始めた。時給1,200円。昼勤だった最初の1カ月は、広告にあった残業がなく、額面20万円を切った。「子どもに不自由させたくなくて、東京に来たのに」と唇をかんだ。
 職場には「だまされた」地方出身者が大勢いた。「東北や九州などは仕事がない。仕事があっても時給は高くて800?900円。1,200円なら飛びつきますよ」と小谷さん。
 雇用情勢が厳しい地方から来て、好景気の大都市圏で働く派遣労働者が増加している。大都市と地方、正社員と派遣労働者。二重の格差に苦しむ地方出身者は多い。
 格差につけこむ手口は「厚遇広告」だけではない。派遣会社は最初の給料までお金がないことを見透かし、派遣先までの交通費を支給、前借りも世話してくれた。「派遣会社も最初はやさしい」と小谷さん。しかし給与は広告通り支払われず返済は難しい。結局会社に縛り付けられる。
 小谷さんは、その境遇を逆手にとり、ユニオンを立ち上げ委員長として募集広告問題などで経営側を責め立てた。「『(募集広告の)根拠はない』という発言も引き出し、労働条件を細かく提示することも認めさせた」
 職業安定法は虚偽広告の場合、6月以下の懲役、30万円以下の罰金を定めるが、誇大広告や紛らわしい広告の規制はない。この件も虚偽とまでいえない“グレーゾーン”だった。
 昨年8月、小谷さんは日野自動車から直接雇用され期間工になった。有期雇用で身分は不安定だが、年収が約150万円上がった。「闘えば勝てることが分かった。苦しむ派遣労働者を助けるために、これからも、派遣業界の矛盾を暴いていく」

    ◇

 「派遣労働者は低賃金なのに、正社員より課税範囲が広い。不公平だ」
 東京ユニオン執行委員長の渡辺秀雄さん(60)はみけんに鋭いしわを寄せて訴える。
 正社員は交通費が給与と別に支給され、月10万円まで非課税。一方、派遣労働者は交通費が支給されない場合が多い。支給されても「勤務地が転々として捕捉しにくい」などの理由で所得に含めて計上され課税される。年17万円の交通費がかかった派遣社員の場合、9,400円も余分に納税することになる。
 東京ユニオンは2000年から「取られすぎた税金を取り戻そう」と確定申告の時期に税還付キャンペーンを展開。今月1日、20人が参加し確定申告書の書き方を教わった。各自が地元の税務署に申告するという。
 しかし、国税庁は一般的な正社員が得る「通勤手当」以外は交通費非課税を認めない方針。それでも渡辺さんは「大勢で請求すれば国税庁を動かす力になる」と、運動を続ける考えだ。
 渡辺さんは「正社員を前提に法律が解釈され、派遣労働者は無視されている」と、法の機能不全を指摘。小谷さんも「派遣法改正だけでは救えない問題もある。職業安定法を改正し、誇大広告取り締まりを強化してほしい」と訴える。 (服部利崇)

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