日本の非正社員の「過少保護」

OECD(経済協力開発機構)の資料によると、日本は、非正社員に対する雇用保護がEUと比べて低く、その結果、正社員と非正社員の待遇格差が大きくなっていることが明らかに。

日経新聞は「日本の正社員 過保護?」という見出しをつけているが、OECDのデータをきちんと見れば、そうでないことはすぐにわかる。日経らしい、誤解を誘う、意図的な見出しだ。

日本の正社員は過保護? OECDが労働市場分析(日経新聞)

日経新聞は、記事中の表に「日本は正社員と非正社員の格差が欧米より大きい」というコメントをつけている。しかし、これは子どもでもわかる間違いだ。アメリカは、正社員0.2非正社員0.3とどちらも非常に保護が小さく、しかも、そのなかでいえば非正社員の方が保護がわずかに大きいのだから、日本の格差が「米」より大きいのではないことは子どもだってわかること(こういう誤りが見逃されて、そのまま活字になってしまうのは、「日本の正社員は、欧米より保護されている」という思い込みが日経の記者やデスクにあるから)。

また、EU(欧)との比較で浮かび上がるのは、日本の正社員が過保護なのではなく、非正社員が保護されていなさすぎるという事実だ。正社員は日本2.4、EU 2.3でほとんど差がない。ところが非正社員は、EU 1.9に比べて日本は1.3とかなり低い。これが、日本の正社員と非正社員の待遇格差の原因だ。

EUの場合、非正社員の待遇は 1.8から1.9へ改善されているということも注目される。

だから、課題は、OECDが正しく勧告しているように、非正社員の待遇改善をはかることであって、日本の正社員の待遇を引き下げることではない。OECDの資料は、日常的に必要な労働力部分まで正社員から派遣労働者などに置き換えてきた日本企業にたいする厳しい忠告と受けとめる必要がある。

日本の正社員は過保護? OECDが労働市場分析
[NIKKEI NET 2008/03/05 07:01]

 経済協力開発機構(OECD)は4日、加盟先進国の労働市場に関する分析をまとめた。日本は正社員へ手厚い雇用保護をしている半面、パートなど非正社員の処遇改善が遅れていると指摘。正社員への過剰な保護を緩める政策的な取り組みが進んでいないと批判した上で、正社員・非正社員の待遇格差を縮めて、より効率的な労働市場を目指すべきだとした。
 今回の分析は加盟各国に構造改革を促す報告書「成長に向けて(2008年版)」に盛り込んだ。
 OECDは現行の雇用法制や過去の判例などを集めて、各国の労働者がどれだけ解雇されにくく守られているかを示す「雇用保護指数」を算出。指数は0から6までで、値が大きいほど保護の度合いが強い。

労働者保護の強さ(OECD推計)
2003年 2006年
正社員 日本 2.4 2.4
米国 0.2 0.2
EU 2.4 2.3
OECD平均 2.2 2.1
非正社員 日本 1.3 1.3
米国 0.3 0.3
EU 1.8 1.9
OECD平均 1.8 1.9

(注)値が大きいほど、保護の度合いが大きい。

 日本の正社員は03年、06年とも2.4で、同じ時期に2.2から2.1に下がったOECD平均との差を広げた。
 報告書が問題視するのは正社員保護が手厚い一方、非正社員の保護が手薄な点だ。日本の非正社員の保護指数は03年、06年とも1.3で正社員とは1.1ポイントの開きがあった。米国やOECD平均と比べても正社員の「過剰保護」が際立つ。
 OECDは、正社員と非正社員の待遇格差を放置すれば、企業は正社員の採用を手控え、コスト面から非正社員への依存を強め、正社員・非正社員の格差が大きい「二重労働市場」が根付いてしまうと警告した。(パリ=野見山祐史)

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